柳俊太郎、次に演じたいのは“まともな人間”!? 『他人は地獄だ』でイカれた冷徹男を熱演
韓国発のWEBコミックが原作で、日本では2018年8月からLINE マンガにて連載をスタート、国内累計閲覧数7000万views(2024年8月時点)を超える人気作品を日本のサスペンスホラーとして映画化した『他人は地獄だ』が11月15日に公開された。本作は、不気味な入居者たちが暮らすシェアハウス「方舟」に、地方から上京してきたユウ(八村倫太郎)が入居したことをきっかけに不可解な出来事が発生していくサスペンスホラー映画で、「方舟」の住人たちのリーダー的存在であるキリシマ役を柳俊太郎が演じる。キリシマを演じるうえで、静けさのある狂気をどう演じるかが課題だったと話す柳に、具体的な役作りや表現方法を聞くと「普通の人が微妙にやらないような変な動きを意識した」と明かした。
【写真】クールな雰囲気が漂う、柳俊太郎の撮り下ろしカット(全10枚)
■不気味さが際立つ“静”と“動”の演技
――まずは、台本を読んだ感想を教えてください。
柳:出演のお話をいただく前から、韓国で実写化されたドラマをたまたま見ていて、スリリングでありつつ不気味な雰囲気が漂う、かなり攻めた作品だなという印象がありました。なので、ドラマに比べて尺が短い映画でどうやってまとめるんだろうと思ったんです。でも、読んでみたら、サスペンス要素がありながらも原作が持つ独特な気持ち悪さだったり、たくさん出てくる人間の魅力的なキャラクター性だったりがうまくまとめられていて、スリリングで面白い作品になっていると感じました。
あと、キリシマって結構インパクトがある役なので、短い尺の中でどうしたらキャラクターが際立つかなっていうことも考えましたね。
――具体的にどんな役作りや演技を意識しましたか?
柳:衣装合わせの時に、キリシマは“静けさのある狂気”と言われて、イカれているけれど淡々と喋る冷徹さや怖さもあるので、自分のやり方次第でどちらにも振れる振り幅が広い役だなと思いました。その中でキリシマの冷徹さや落ち着きが、マル(鈴木武)やゴロー(星耕介)といった個性が強いキャラクターをまとめるカリスマ性や説得力みたいなものになるなと考えたんです。
現場でも、あまり動きすぎないことを意識しました。人って感情が入るとどうしても普通に動きたくなっちゃうんですけれど、そこを抑えて動かずに我慢しながら演じた記憶がありますね。
――なるほど、もはや立っているだけで「怖い」と感じてしまうキリシマの存在感は、そういったパフォーマンスにあったのですね。一方で、キリシマの“動き”の部分が見られる不意の仕草やアクションシーンも印象的でした。
柳:そこは普段動かない分、動いた時のスピーディーさや普通の人が微妙にやらないような変な動きみたいなものを意識しました。ちょっと違和感が必要だなと思ったんです。後々キリシマの正体が判明した時に、結論を知った上で見るとその違和感の意味に気づくような…そういうアイデアを自分で準備して持っていきました。
――児玉和土監督からはどんな演出を受けましたか?
柳:やっぱり、まずは動かないということ。ちょっと動きすぎということも言われましたね。でも、逆に「ここは動いてほしい」ってところもあって。例えば、焼き肉を食べるシーン。僕の中でキリシマはずっと座っている想定だったのですが、監督からは、お皿を配ったり歩きながら喋ったりしてほしいと言われて「あ、そこは結構人間味を出していいんだ」という印象を受けました。意外でしたが、確かにここでちょっと人間らしさを出すことで後の怖さにもつながるんだろうなって思いましたね。
ホラーだから怖いしスリルもあるし、自分が小さい頃に見ていたらトラウマになるんじゃないかって思うような描写やストーリーがあったりするんですけれど、好奇心旺盛な方にはぜひ見てもらいたい。キリシマも夢に出てきたら、一生引きずるような不気味さがあるので、僕の新たな、イカれた姿をお見せすることもできるんじゃないかなと思っています。
■ケーキに「HAPPY TO HELL」って書いてありました
――本作はずっと緊張感が続くようなストーリーですが、撮影の裏側はどんな雰囲気だったのでしょう。
柳:和気あいあいとしていて、超ゆるかったです。作品自体はすごく緊張感がありますが、現場はいい意味でも緊張感ゼロでした。群馬に泊まり込みで撮影したんですけれど、合宿みたいというか。朝から夜まで撮影して終わったらご飯を食べに行って、部活のような感じです。
あ、それと誕生日を祝ってもらって、現場でケーキを出していただきました。マル(鈴木)もちょうど誕生日が近くて、結構グロテスクなシーンを撮っている最中だったんですけれど、そこでケーキが出てきて…ケーキに「HAPPY TO HELL」って書いてありました(笑)。
――W主演の八村さんの印象やエピソードも教えてください。
柳:すごく気を遣う人で、主役ということもあって、いろいろ盛り上げた方がいいんじゃないかとか、たぶん彼は考えていたと思います。演技に対しても本当にすごく真面目に向き合う人だから、(ユウは)精神的に参る役だし「あまり無理しないで」って思うぐらい気を遣ってくれていましたね。なので、言葉にして言わないですけれど、彼がリラックスできるように僕ら大人チームはフランクにして彼が楽しく自分の芝居を出せるようにサポートしようと思っていたんです。でも、そんなこと考えなくてもよかったかなと思うぐらい堂々とプランを立てて芝居を作ってきてくれたので、頼もしかったですね。
――柳さんは座長として作品に参加する中でどんなことを意識していますか。
柳:「座長やったことないです」って言いたいぐらい自分が座長をやったっていう意識がなくて。むしろ甘えて生きているなと思います。常に助けられているし、現場でもいいアドバイスを受けたりとか盛り上げてもらったりっていうのを本当に日々感じていますね。
――俳優デビューから12年が経ちますが、デビュー当時と今を振り返って、ご自身の変化や成長を感じる点はいかがでしょう。
柳:現場を経験していく中で、柔軟性というのは自然と身についているなと思いますね。自分が若い頃は理解できなかったものを割と理解できるようになったなというか、役者として大きな成長です。
――何か考えが変わるきっかけがあったり?
柳:これは本当に積み重ねですね。特にこれで大きく変わったというのはないですが、いろいろな失敗のくり返しで学んでいくことができた気がします。
――様々な役を演じてきた今、次にどんなキャラクターを演じてみたいですか?
柳:今回のキリシマもそうなんですけれど、最近は自分の想定外の役というか「こんな人間を演じるとは思っていなかった」っていう役が多いんですよ。とんでもない男だったり不倫する男だったり、まともな人間を演じた記憶がなくて…まともって何なんだろう(笑)。なので、好きになれる人間、友達になれるような人間っていうのをやりたいです。
※柳俊太郎の「柳」は木へんに夘が正式表記
(取材・文:杉崎絵奈 写真:上野留加)
映画『他人は地獄だ』は全国公開中。
■不気味さが際立つ“静”と“動”の演技
――まずは、台本を読んだ感想を教えてください。
柳:出演のお話をいただく前から、韓国で実写化されたドラマをたまたま見ていて、スリリングでありつつ不気味な雰囲気が漂う、かなり攻めた作品だなという印象がありました。なので、ドラマに比べて尺が短い映画でどうやってまとめるんだろうと思ったんです。でも、読んでみたら、サスペンス要素がありながらも原作が持つ独特な気持ち悪さだったり、たくさん出てくる人間の魅力的なキャラクター性だったりがうまくまとめられていて、スリリングで面白い作品になっていると感じました。
あと、キリシマって結構インパクトがある役なので、短い尺の中でどうしたらキャラクターが際立つかなっていうことも考えましたね。
――具体的にどんな役作りや演技を意識しましたか?
柳:衣装合わせの時に、キリシマは“静けさのある狂気”と言われて、イカれているけれど淡々と喋る冷徹さや怖さもあるので、自分のやり方次第でどちらにも振れる振り幅が広い役だなと思いました。その中でキリシマの冷徹さや落ち着きが、マル(鈴木武)やゴロー(星耕介)といった個性が強いキャラクターをまとめるカリスマ性や説得力みたいなものになるなと考えたんです。
現場でも、あまり動きすぎないことを意識しました。人って感情が入るとどうしても普通に動きたくなっちゃうんですけれど、そこを抑えて動かずに我慢しながら演じた記憶がありますね。
――なるほど、もはや立っているだけで「怖い」と感じてしまうキリシマの存在感は、そういったパフォーマンスにあったのですね。一方で、キリシマの“動き”の部分が見られる不意の仕草やアクションシーンも印象的でした。
柳:そこは普段動かない分、動いた時のスピーディーさや普通の人が微妙にやらないような変な動きみたいなものを意識しました。ちょっと違和感が必要だなと思ったんです。後々キリシマの正体が判明した時に、結論を知った上で見るとその違和感の意味に気づくような…そういうアイデアを自分で準備して持っていきました。
――児玉和土監督からはどんな演出を受けましたか?
柳:やっぱり、まずは動かないということ。ちょっと動きすぎということも言われましたね。でも、逆に「ここは動いてほしい」ってところもあって。例えば、焼き肉を食べるシーン。僕の中でキリシマはずっと座っている想定だったのですが、監督からは、お皿を配ったり歩きながら喋ったりしてほしいと言われて「あ、そこは結構人間味を出していいんだ」という印象を受けました。意外でしたが、確かにここでちょっと人間らしさを出すことで後の怖さにもつながるんだろうなって思いましたね。
ホラーだから怖いしスリルもあるし、自分が小さい頃に見ていたらトラウマになるんじゃないかって思うような描写やストーリーがあったりするんですけれど、好奇心旺盛な方にはぜひ見てもらいたい。キリシマも夢に出てきたら、一生引きずるような不気味さがあるので、僕の新たな、イカれた姿をお見せすることもできるんじゃないかなと思っています。
■ケーキに「HAPPY TO HELL」って書いてありました
――本作はずっと緊張感が続くようなストーリーですが、撮影の裏側はどんな雰囲気だったのでしょう。
柳:和気あいあいとしていて、超ゆるかったです。作品自体はすごく緊張感がありますが、現場はいい意味でも緊張感ゼロでした。群馬に泊まり込みで撮影したんですけれど、合宿みたいというか。朝から夜まで撮影して終わったらご飯を食べに行って、部活のような感じです。
あ、それと誕生日を祝ってもらって、現場でケーキを出していただきました。マル(鈴木)もちょうど誕生日が近くて、結構グロテスクなシーンを撮っている最中だったんですけれど、そこでケーキが出てきて…ケーキに「HAPPY TO HELL」って書いてありました(笑)。
――W主演の八村さんの印象やエピソードも教えてください。
柳:すごく気を遣う人で、主役ということもあって、いろいろ盛り上げた方がいいんじゃないかとか、たぶん彼は考えていたと思います。演技に対しても本当にすごく真面目に向き合う人だから、(ユウは)精神的に参る役だし「あまり無理しないで」って思うぐらい気を遣ってくれていましたね。なので、言葉にして言わないですけれど、彼がリラックスできるように僕ら大人チームはフランクにして彼が楽しく自分の芝居を出せるようにサポートしようと思っていたんです。でも、そんなこと考えなくてもよかったかなと思うぐらい堂々とプランを立てて芝居を作ってきてくれたので、頼もしかったですね。
――柳さんは座長として作品に参加する中でどんなことを意識していますか。
柳:「座長やったことないです」って言いたいぐらい自分が座長をやったっていう意識がなくて。むしろ甘えて生きているなと思います。常に助けられているし、現場でもいいアドバイスを受けたりとか盛り上げてもらったりっていうのを本当に日々感じていますね。
――俳優デビューから12年が経ちますが、デビュー当時と今を振り返って、ご自身の変化や成長を感じる点はいかがでしょう。
柳:現場を経験していく中で、柔軟性というのは自然と身についているなと思いますね。自分が若い頃は理解できなかったものを割と理解できるようになったなというか、役者として大きな成長です。
――何か考えが変わるきっかけがあったり?
柳:これは本当に積み重ねですね。特にこれで大きく変わったというのはないですが、いろいろな失敗のくり返しで学んでいくことができた気がします。
――様々な役を演じてきた今、次にどんなキャラクターを演じてみたいですか?
柳:今回のキリシマもそうなんですけれど、最近は自分の想定外の役というか「こんな人間を演じるとは思っていなかった」っていう役が多いんですよ。とんでもない男だったり不倫する男だったり、まともな人間を演じた記憶がなくて…まともって何なんだろう(笑)。なので、好きになれる人間、友達になれるような人間っていうのをやりたいです。
※柳俊太郎の「柳」は木へんに夘が正式表記
(取材・文:杉崎絵奈 写真:上野留加)
映画『他人は地獄だ』は全国公開中。