Image: Melinda Nagy / Shutterstock

できることはなんでもやった方がいいと思うの。

2年連続でとんでもない暑さになった世界の夏。日本でも熱中症で命が失われ、多くの人が救急搬送されました。特に世界中の都市部は、ヒートアイランド現象によって周辺地域よりも気温が高い傾向にあるため、暑さに弱い人たちに被害が偏ってしまいます。

今回新たな研究結果で、ロンドンが記録的な暑さに見舞われた期間に、もしも都市全域で反射率が高い屋根と太陽光パネルを導入していれば、多くの命を救えた可能性があることがわかりました。

白く塗れ

2024年10月に科学誌Nature Citiesに発表された研究によると、2018年にロンドンが記録的猛暑に襲われた期間中に、都市全体で太陽エネルギーの反射率を高める屋根を導入していれば、最大で死者を249人減らせた可能性があるそうです。

University College Londonの研究チームは、3Dモデルを用いて、2018年の6月から8月にかけてのロンドンの平均気温を算出し、それを市内のすべての屋根に高反射塗装を施した場合、すべての屋根に太陽光パネルを設置した場合、そしてまったく都市化されていないヒートアイランド現象なしの仮想ロンドンと比較して、気温に与える冷却効果を分析しました。

その結果、同期間におけるロンドン地域の平均気温は19.2度で、平年よりも約1.6度高かったといいます。そして、もしもロンドン市内の屋根が反射率の高い明るい屋根で埋め尽くされていれば、平均気温は0.8度低くなり、786人に登った暑さ関連死のうち、約3分の1にあたる249人の命が失われるのを防げたと推定しています。

太陽光パネルを載せろ

また、市内全域の屋根に太陽光パネルが設置されていれば、平均気温は約0.3度低くなり、全体の約12%にあたる96人の暑さ関連死を防げた可能性があったそうです。

つまり、すべての屋根を白く高反射塗装して、太陽光パネルを設置していれば、ロンドンの気温を1.1度低く抑えて、暑さ関連死の44%にあたる345人の命を救えたかもしれません。

さらに、太陽光パネルの大規模設置による3カ月間の電力生産は20テラワットと、2018年のロンドンにおける年間エネルギー使用量の半分以上になったと推定しています。

経済負担も軽減

研究では両方のシナリオにおける経済への影響も試算しています。高反射の屋根を採用して249人の暑さ関連死を防げていた場合、ロンドンの経済的負担は6億1500万ポンド(2018年の平均為替レートで904億円)減少、太陽光パネルを設置して96人の命が救われていた場合の経済的負担の減少額は、2億3700万ポンド(同348億円)だったといいます。

反射率の高い塗装と太陽光パネルの設置で、暑さ関連死を約44%も防げて、電力需要を一定程度満たせて、経済的負担も減るのなら、規模の大小はともかく、やらない理由はない気がしますね。

イギリスでは、人口の83%が都市部に住んでいるといいます。世界全体では55%、日本は都市に人口の90%以上が集中しています

都市部における反射率の高い屋根や太陽光パネルの導入に加えて、緑化の促進や水辺の増加、非舗装化などを組み合わせれば、温暖化とヒートアイランド現象でビニールハウスのようになっていく都市環境から、人々の命と健康を守れるようになるのではないでしょうか。

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Source: Simpson et al. 2024 / Nature Cities, University College London

Reference: The Times, Statista