「許せることが増えるんです」 侍J世界一に貢献の渡辺俊介、指導者になって分かった海外野球に触れる“意味”
WBCで大活躍、国際大会で勝ち進むための必須条件とは?
野球の国際大会「ラグザス presents 第3回 WBSC プレミア12」が日本時間10日に開幕する。世界ランキングの上位12カ国が出場する大会で、2019年に行われた前回大会を制した日本は現在堂々の1位だ。ロッテなどで活躍し、現在は社会人野球のかずさマジックを率いる渡辺俊介監督は現役時代、独特の下手投げを生かして国際大会で大活躍。世界での戦い方と、その経験がもつ“意味”を教えてくれた。(取材、文=THE ANSWER編集部、羽鳥慶太)
「驚かないことです」
国際大会で活躍する秘訣を、渡辺監督はこう簡潔に表現した。新日鉄君津でプレーしていた社会人時代に2000年シドニー五輪に出場し、プロアマ混成チームの一員としてプレーした。ロッテ入りしてからは2006年と2009年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に日本代表として出場。特にWBCでは、世界一低いと称された投球フォームが大きな武器となり、日本の優勝に大きく貢献した。剛速球があるわけではない。自分にしかない武器を活かした選手だった。
豊富な経験をもとに、国際大会での戦い方を振り返っていくと、敵はグラウンドの中だけではないのだという。「とにかく、違うことばっかりなんですよ。審判の判定とか、牽制のやりかたなどもそうですし、バスが何かのアクシデントで会場に遅く着くとかまで……」。自分の意図通り進まないことを挙げていけばキリがない。
かずさマジックは6日に、東京都府中市で合宿中の豪州代表と練習試合を行った。序盤に4点を先行したものの、中盤以降に3本塁打を浴び4-7で敗戦。イメージ通りのパワーに屈する形となった。ただその中で、指揮官の目は日本野球との“違い”に向いていた。「左のサイドスローとか、いろんな投手がいるのが豪州らしいなと思って見ていましたよ。1番を打っていた選手はメジャーのドラフト1位だと言いますし、彼が塁に出るとチームが盛り上がりますね」。違いに目を配り、新たな発見として楽しんでいた。
そして、現役時代にあらゆる国の野球に触れた意味を、指導者になってさらに感じている。「許せることが増えますよね」。どういうことなのだろうか。
日本なら怒られることでも「こんな見方もある」引き出しに
世界には様々な野球があると知っていると「日本だったら怒られるだろうな」と思うことでも「こんな見方もあるんだと思えるようになる」のだという。豪州との試合で、かずさマジックのベンチでは相手選手の動きが話題となった。「野球以外のスポーツをやっていると思うんですよね。そういう動きが見えるんです」。そこをただ見過ごさないことで、考える材料が増える。選手の成長のタネになるのだ。
「フォームの形や、プレーの考え方にしてもそうです。海外の野球は長所も短所も極端なんですよね。でもそれは相手が嫌だなと思うことにもつながるので」
9日、10日には、日本代表が強化試合「ラグザス 侍ジャパンシリーズ2024 日本vsチェコ」をバンテリンドームで戦う。これにも渡辺監督は「野球をアメリカとアジアだけでやっていても発展しない。今野球がない国も含めて、どんどん広げていかないと」と大きな期待を込めている。
日本代表は2021年の東京五輪、さらに昨春のWBCと主要な国際大会を無敗で駆け抜け、優勝し続けている。渡辺監督は現役当時の“世界向け”の調整を振り返り「マウンドとボールに合わせる調整はしていましたけど、今はそれも近づいている。国際球ならそんなに滑ることもないですし、台湾での試合なら日本人にはやりやすいでしょう」と侍の戦いを占う。
「日本らしく戦えば、おのずとチャンピオンになれるのではないかと思います。井端さんも大変だと思いますが、スキのない野球を見せてくれるのではないでしょうか」。世界の野球から様々なヒントを得て、さらに日本の野球が発展していくのを願っている。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)