クルーズ船の航路を確保するために水草を刈る作業員(9月20日、富山市の富岩運河で)

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 富山駅から徒歩約10分の水辺空間「富岩運河環水公園」(富山市)で今夏、水草が大量繁殖した。

 生育を後押しする猛暑と運河に水を取り込む設備の故障が原因とみられる。悪臭の苦情が寄せられたり、クルーズ船の運航に影響が出たりしており、関係者は今後の対応に頭を悩ませている。(深井陽香)

異常な状況

 「いつもはダンプカーの荷台が満杯になるのに3〜4時間はかかるが、今年はたった20分だった」。水草の刈り取りをしている作業員は、今夏の異常な状況をそう説明する。

 運河内の水草が少ない年は計10日間でダンプカー5、6台分を除去する。一方、今年は1日で10台分に上る日もあり、これまで約100台分を刈り取ったという。

 長年、運河脇を散歩している富山市の男性(75)も「今年は目に見えて多い。富山県内有数の観光地としてきれいに保ってほしい」と話す。

 水草の大量繁殖はクルーズ船の運航にも影響を与えた。富山県と富山市が共同運航するクルーズ船「富岩水上ライン」はスクリューに水草が絡まるのを避けるため、運河内をいつもより小回りせざるを得なくなった。

完全な駆除困難

 この水草の多くは、侵略的外来種として知られる南米原産の「オオカナダモ」だ。県中央植物園の川住清貴・技能主任によると、養分を多く含んだ温かい水を好み、全国の湖沼や運河で大量繁殖している。底に沈んでヘドロ化し、水を汚すこともある。

 また、オオカナダモは一度繁殖すると完全に駆除することは困難とされる。繁殖力がすさまじく、底で根を張り続ける限り、何度でも成長するからだ。県富山港事務所の水野豊彦・工務課長は「刈り取り機は水深1・5メートルより深い根は刈りきれない。来年度以降は予算や刈り取り作業の回数を増やすことも必要かもしれない」と話す。

堰の故障も要因

 運河に川の水を取り込む堰(せき)の故障も水草の繁殖を加速させた。

 運河は環水公園が終点で、水が滞留する。そのため隣を流れる「いたち川」にゴム製の堰を設け、いったん流れをせき止めて川の水位を上げ、運河に新鮮な水を流し込んでいる。

 富山土木センターによると、昨年7月、この堰に損傷が判明。水を取り込みにくくなり、運河内の養分濃度が高まった。同センターは今年1月から復旧工事を始めたものの、4月の大雨で仮で設けていた止水設備も損壊した。中断していた工事は、始まったばかりで来春の終了を見込む。

 今後について、川住技能主任は「今年繁殖した子孫が生き残っていると考えられ、しばらくは大量繁殖が続くだろう」と指摘。「水草を成長させる栄養を減らすため、生活排水が流れ込まないような環境作りも進めなければならない」と話していた。