2026年W杯アジア3次予選のインドネシア戦(11月15日)と中国戦(11月19日)に臨む日本代表メンバー27人が、以下のように発表された。

GK
大迫敬介(サンフレッチェ広島)、谷晃生(FC町田ゼルビア)、鈴木彩艶(パルマ)

DF
長友佑都(FC東京)、谷口彰悟(シント・トロイデン)、板倉滉(ボルシアMG)、町田浩樹(ロイヤル・ユニオン・サンジロワーズ)、橋岡大樹(ルートン・タウン)、瀬古歩夢(グラスホッパー)、菅原由勢(サウサンプトン)、高井幸大(川崎フロンターレ)

MF/FW
遠藤航(リバプール)、伊東純也(スタッド・ランス)、南野拓実(モナコ)、古橋亨梧(セルティック)、守田英正(スポルティング)、大橋祐紀(ブラックバーン)、鎌田大地(クリスタル・パレス)、三笘薫(ブライトン)、小川航基(NEC)、前田大然(セルティック)、旗手怜央(セルティック)、堂安律(フライブルク)、田中碧(リーズ)、中村敬斗(スタッド・ランス)、久保建英(レアル・ソシエダ)、藤田譲瑠チマ(シント・トロイデン)

 前回(オーストラリア戦、サウジアラビア戦)のメンバーから、望月ヘンリー海輝(FC町田ゼルビア)、関根大輝(柏レイソル)、上田綺世(フェイエノールト)が外れ、高井幸大、橋岡大樹、古橋亨梧が復帰した。

 前回、関根はケガで離脱した高井に代わる追加招集だったので、入れ替えは実質ふたり。今回、招集外となった上田も理由は故障で、もうひとりの橋岡にしても前回、招集外となった理由は同様に故障だ。加えて初招集はゼロである。いつもにも増して小幅な入れ替えとなった。


日本代表に1年ぶりに招集された古橋亨梧(セルティック)photo by Reuters/AFLO

 生真面目で心配性。保守的で弱気。残念ながらそう言いたくなるメンバー発表だった。

 現在、日本が置かれているのは、客観的に見て世界で最も楽な状況だ。メディアは日本が戦うことになったグループCを「死の組」と言って不安を煽ったが、実力と枠の関係を考えれば、突破確率は9割以上だろう。世界で最も楽な立場にあることは当初からわかりきっていた。

【古橋は「4番目」なのか】

 全10試合中4試合を消化した現在、それはいっそう鮮明になっている。突破確率は限りなく100%に近づこうとしている。それでも森保一監督は心配している。「代表級の選手は他にも数多くいる」と言いながら、試そうとしない。従来の選手に故障が発生しない限り、入れ替えはない。これでは日本代表は硬直化する。敗戦を恐れるあまり、可能性を広げる努力を森保監督は怠っている。このツケは必ずや訪れるだろう。

 上田が故障しなければ古橋は選ばれていなかった。これは間違いないだろう。セルティックの古橋とフェイエノールトの上田。スコットランドリーグがUEFAランキング11位であるのに対してオランダリーグは6位。リーグのレベルはオランダのほうが高い。だが、セルティックがそこで常勝チームとして君臨するのに対し、フェイエノールトはオランダリーグではアヤックス、PSVに次ぐ3番手だ。

 今季ともに出場しているチャンピオンズリーグでは、リーグフェーズの4節を終了した段でセルティックは15位。フェイエノールトは21位だ。そして古橋がエースストライカーであるのに対し、上田はサンティアゴ・ヒメネス(メキシコ代表)に次ぐ2番手ストライカーだ。スタメン出場できているのは、そのヒメネスがケガで戦列を離れたため。ヒメネスが健在なら、出場時間は短い時間に限られていたと思われる。

 立場的、格的に優位に立つのは古橋だろう。百歩譲っても互角だ。だが古橋はこの約1年の間、代表に招集されなかった。森保監督には、小川(NECは現在オランダリーグ10位)、大橋(ブラックバーンは現在イングランド2部リーグ10位)以下との評価を受けてきた。

 森保監督は今回のメンバー発表の席上で1トップ、CFに求められる動きとして、ディフェンスラインの裏に抜ける動きを強調した。ボールを奪ったらまず直線的にゴールを目指したい。その手段として1トップにその動きを求めているようだった。このイメージに最もマッチしている選手が上田で、小川、大橋も古橋に勝ると考えているようだ。

【「背後に抜け出すスペース」はない】

 しかし、これはカウンター攻撃に求められる1トップの動きだ。森保監督はやはりそうしたサッカーがしたいのだろう。ここにきて5バック(3−4−2−1)に傾倒する理由でもある。守備的サッカーをベースにしたカウンター攻撃と5バックの相性はいい。

 だが、守備的なカウンターサッカーは強力なCFの存在がなければ成立しない。少ない人数で攻めきることができる能力の高いアタッカーの存在なしに、番狂わせは起こせない。フェイエノールトの2番手ストライカーに甘んじる上田の、アタッカーとしてのレベルが問われることになる。

 4−3−3あるいは4−2−3−1で普通に戦った場合、現在の日本なら、スペイン、イングランド、フランス、オランダ、ブラジル、アルゼンチンなど一部の強豪国を除けば、ボール支配率で大きく劣ることはない。今回のアジア3次予選などは特にそれが言える。相手は引いて守ってくる。サウジアラビア、オーストラリアでさえそうだった。引いた相手をどう崩すかが最大のテーマになる。

 必然的にサッカーは遅攻になる。1トップに背後に抜け出す動きを求めても、背後にスペースはほとんどない。森保監督が1トップに求める動きは試合展開とマッチしていないのだ。遅攻に求められるのはサイドを有効に活用しながら、丹念に崩すウイングプレーだ。しかし、そのウイングをウイングバックとして使えば、立ち位置が低くなる分、サイド攻撃の威力は落ちる。攻撃は中央に偏りがちだ。

 だが、1トップには裏に抜け出すことが得意な選手が配備されている。ボール回しが安定しなくなるのは当然の帰結だ。ボールを失う位置も、サイドではなく真ん中周辺が増える。となると、反転速攻を浴びやすい。5バックの守備的サッカーなのに遅攻。このアンバランス、矛盾こそが現在の森保ジャパンの一番の問題だと、筆者は見る。深刻な問題として表面化しないのは相手が弱すぎるからである。

 上田、小川、大橋、それに古橋を加えたところで、森保監督の目指す攻撃の理想形は見えてこない。選手の力量を問う前に、監督の描く攻撃のイメージに注文をつけたい。5バックサッカーと遅攻の関係をどう是正するか。インドネシア戦、中国戦にはそうした視点を傾けながら観戦に臨みたい。