ベンチ前で足を止めて泣いていた健大高崎・鶴岡太一朗の左腕をそっと取り、輪に引き入れる下重賢慎(右)【写真:中戸川知世】

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THE ANSWER編集部・カメラマンフォトコラム

 第77回秋季関東地区高校野球大会は4日、横浜市のサーティーフォー保土ヶ谷で決勝を行い、健大高崎(群馬)は横浜(神奈川)に延長10回タイブレークの末、3-4で逆転負けを喫した。試合終了後、カメラのファインダーに飛び込んできたのが、ベンチ前で足を止めて泣いていた1人の選手。仲間がそっと支え、輪に引き入れる光景がまぶしく映った。(写真・文=THE ANSWER編集部・中戸川 知世)

 たった1人、ベンチの前で足を止めて泣いていた。

 サヨナラ負けを喫した直後の整列。健大高崎ナインはそれぞれ顔に悔しさを浮かべながらスタンドへ挨拶し、ミーティングのためベンチへ下がっていく。最後に戻ってきたのは、最後の瞬間に左翼を守っていた鶴岡太一朗(2年)だった。ただチームメートの輪に近寄ったものの、数歩手前で体が動かない。見ると、顔にユニホームを押し当て涙していた。

 タイブレークに突入した延長10回。まず代走で出場した鶴岡は、その裏左翼の守備に就いた。1死二、三塁から、横浜の奥村凌大内野手(2年)の打球は右翼線にふらふら上がり、必死で追う右翼手と二塁手の間へ落ちた。左翼からは何もできない。どう消化していいのかわからないほどの悔しさが、あふれたあまりの行動に見えた。

 そこにチームメートが現れ、鶴岡の左腕をそっと取り、輪に引き入れた。7回途中から登板し、2回1/3を無失点に抑えた下重賢慎投手(2年)だった。夢中でシャッターを切った私は、ともに戦ったものにしかわからない思いを知りたくなり、試合後の選手を探した。

 下重は「自分も悔しかったですけど、ここで下を向いているようではいけない。まだ最後じゃないし、この先もある。最後までやることはやってから悔やむようにしよう」と、鶴岡の手を引いた場面を振り返ってくれた。悔しさはみんな同じ。そこから先に向かうための“儀式”だった。

 健大高崎は優勝こそ逃したものの、来春の選抜甲子園出場は当確としている。敗戦から得た教訓を胸に、成長できる時間はたっぷりある。次のステップへ、仲間とともに歩みは止めない。

(THE ANSWER編集部・中戸川 知世 / Chise Nakatogawa)