笑顔でタッチする桃田賢斗

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 元世界ランキング1位で、4月に代表引退を発表した桃田賢斗(30)=NTT東日本=が、今季限りで競技者としても区切りを付けることが分かった。2日に関係者が明かした。全日本総合選手権には出場せずにS/Jリーグに集中する意向で、勝ち進めば最終戦は25年2月22日。今後の活動について本人は未定としたが、チームとしてはコーチを含めたオファーを検討しているという。

 バドミントン界をけん引したスターが、代表だけでなく国内のコートからも退く。既にチームには引退の意向を伝えたという。さいたま市内で取材に応じた桃田は、進退の明言は避けたが「選手としてS/Jリーグに出るのは最後。チームに貢献して優勝したい」と強い覚悟を示し、川前直樹監督も「花道を飾りたい気持ちはある」と応えた。

 桃田はかつて世界ランク1位に約3年間も在位し、2度の世界王者に輝いたエース。ただ、20年に海外で不慮の交通事故に巻き込まれ、全身と目に大けがを負った。シャトルが二重に見えるなどの後遺症と戦いながら完全復活を目指したが、東京五輪は1次リーグで敗退し、パリ五輪は代表落選。「世界一を目指すまでいけない」と、5月のトマス杯を最後に“代表引退”を決断した。

 その後はNTT東日本で練習しながら、後輩も精力的に指導。その中で高校卒業後から所属する思い出深いチームで戦うリーグ戦を集大成とすることを決めた。

 来季以降の活動に、チームはコーチを含めたオファーを出す方針。川前監督は「明確なポストは伝えられないが、コーチとして残ってほしい思いがある」と胸の内を語った。桃田も「バドミントンの楽しさ、素晴らしさを子供たちに伝えていきたい」と、今夏に行ったバドミントン教室などの競技普及活動の継続に意欲を示した。

 この日はS/Jリーグ開幕戦のシングルスでコートに立ち、ストレート勝ちを収め実力の健在ぶりを見せつけた。「いい流れで試合を次に渡せてよかった」。残りのプレーをかみしめるように、滴る汗を拭った。

 ◆桃田賢斗(ももた・けんと)1994年9月1日、香川県三豊市出身。7歳でバドミントンを始め、福島・富岡高に進学。2015年シンガポールオープンで優勝し、男子シングルスで日本勢初のスーパーシリーズ(SS)制覇。同年には男子シングルス日本勢初の表彰台となる世界選手権3位に立った。16年4月に違法賭博問題が発覚し、出場停止処分。18年に代表に復帰し、同年の世界選手権を日本男子として初制覇。19年にマークした国際大会11勝は「男子シングルス年間最多勝利数」のギネス世界記録。175センチ。