42歳会社員、貯金はなく、かつかつの生活で楽しみもなく、老後の生活も不安です
家計を見直しするところが自分では見当たりません
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、体調を壊し療養後に仕事を再開したという42歳の一人暮らしの女性です。毎月の収支に余裕がなく、老後も不安だといいます。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
▼相談者ふゆさん(仮名)
女性/会社員/42歳
東京都/借家
▼家族構成一人暮らし
▼相談内容30代で手に職をつけるために、勤めていた会社を退職。それまでの貯金と親からの学費を使って生活。卒業して間もなく体調不良になり、検査のため会社を退職。無職で療養。失業手当と貯金で生活し、貯金がゼロになりました。
毎月、かつかつの生活で楽しみもなく、老後の生活も不安で、見通しがたちません。現在、独身で結婚の予定はありません。家計簿は細かくつけていて、コンタクト代や家電製品が壊れたときの貯金など、細かく分けています。もう、家計を見直しするところが自分では見当たりません。また、借金(奨学金)があり、毎月返済しているが、終わりが見えずの状況です。
クレジットカードは今まで持ったことがありません。今後に備えて、今のうちに一枚作った方がいいのか、悩んでいます。クレジットカードは携帯電話の格安スマホの引き落としに利用しようかと思っています。今後、ボーナスが出たら優先するのは「年金の学生免除、全額免除などの支払い」、それとも「貯金」でしょうか。
長くなりましたが、アドバイスよろしくお願いいたします。
▼家計収支データふゆさんの家計収支データは図表のとおりです。
▼家計収支データ補足(1)車両費について
車両は今の軽自動車がそろそろ車検ですが、もう車検には老朽化で通らないと車屋さんから言われています。親の病院の送迎に使うため、買い換えすることになりそうです。
(2)食費について
会社には水筒持参。家ではご飯を冷凍してなるべく外食しない。
(3)加入保険について
・養老保険=毎月1万920円。60歳までで満期で100万円か200万円と思われる。
・共済=毎月3000円
(4)奨学金について
奨学金は400万円です。親から借りたので、利子はないですが、できれば返済したいと思い、銀行口座に毎月5000円返しています。
(5)ボーナスの主な使い道について
ボーナスは寸志数万円と聞いています。ボーナス年2回×2カ月分=76万円の見込みです。
(6)交際費
主に仕事関係で使うお金。社内の人事異動が多くお花代金や月に2回、仕事帰りにお茶をする。節約のため、毎回は出席しない。現在、プライベートの交際費はなく、何の楽しみもない。習い事を再開したいが、月謝の6000円を捻出できないか。どこを削ればよいでしょうか。
(7)通信費について
現在、同じスマホを5年以上使っている。以前はパソコンを使っており、Wi-Fiを契約していたが、電波状態が悪く解約。格安スマホと新しいWi-Fiの契約だと合算すると、現在とほぼ同じ額になるのでこのままにしている。実家との連絡用として通話は必要。
(8)医療費について
月によってばらつきがあるので、年間で貯めている。
(9)年金について
全額免除と国民年金のみの時期があり、昨年、ねんきんネットで確認したところ、65歳からもらえる年金が4万5000円弱ほどでした。
▼FP深野康彦の3つのアドバイスアドバイス1:ボーナスが出るまで現状をキープ。体調維持が一番
アドバイス2:親に頼れるところは頼っていい。今は貯蓄が優先
アドバイス3:保険や年金は、確認して。クレジットカードは不要
アドバイス1:ボーナスが出るまで現状をキープ。体調維持が一番
病気療養を乗り越えて、正社員での復職。頑張りましたね。貯蓄がなくなってしまったことはやむを得ません。今は、体調維持を一番に考えて、今の生活をキープすることを最優先してください。現状の収支では、これ以上、節約するところはありません。ボーナスが出れば、状況は変わります。それまで、現状キープで十分です。
ボーナスが出たら、60万円を貯蓄、16万円は自由に使えばいいでしょう。ぜひ、習い事も再開してください。年間60万円貯蓄できれば、60歳までの17年間で1020万円貯めることができます。65歳まで再雇用で働くとすれば、その間はボーナスからの貯蓄ができないとしても、1020万円を取り崩さずに生活することも可能でしょう。
年金の追納については、貯蓄を優先して余裕が出てきたら、その時点でできる範囲で追納すればいいでしょう。今、正社員でお勤めですから、厚生年金加入で年金受給額は今後増えていきます。
アドバイス2:親に頼れるところは頼っていい。今は貯蓄が優先
車については、親御さんが援助してくれるのなら、甘えていいと思います。諸費用も含めて60万円以内で収まるように現金一括で購入するようにしてください。絶対ローンを組んではダメです。親御さんのために病院の送迎をしているのですから、遠慮なく購入費用を負担してもらいましょう。また、奨学金、といっても親御さんからの資金援助ですから、ボーナスが出るまでの間は、返済を待ってもらってもいいのではないでしょうか。気になるようであれば、現状のままでもいいと思いますが、ご実家に同居できないことを考慮しても、返せる範囲で返していけばいいと思います。親御さんに率直に話をされてみてはいかがですか?
まずは、100万円の貯蓄。そこからはボーナスのたびに貯蓄が増えていきますから、ある程度貯まったところで、返してもいいのではないでしょうか。
アドバイス3:保険や年金は、確認して。クレジットカードは不要
現段階で気になるのは、養老保険の満期金が不明確であること。一度中身を確認してください。貯蓄代わりだと思いますが、払込総額よりも満期金が下回るようであれば、継続するかどうかの判断も必要になります。医療系の保険は共済に加入されていますので、基本的にはそれだけで十分です。これまでクレジットカードを保有していなくても、困らなかったのであれば、あえて持たなくてもいいのではないでしょうか。浪費グセはないと思いますが、カードローンやリボ払いを使うことのないよう、クレジットカードは持たない方が賢明だと思います。
住宅購入も、現段階では慎重に考えてほしいと思います。住宅ローンの返済によって生活は苦しくなってしまいます。現在の家賃並みでローンを組んでも、それ以外に、固定資産税や住居の維持費が発生します。ボーナスも住宅ローンの返済に回してしまうと、老後資金が不足する事態になりかねません。
ボーナスは会社の企業業績で変動するものです。計画どおりに貯蓄できるとは限りませんから、確実に貯蓄できるときに貯蓄する。これに尽きます。
できるだけ長く働けるよう、どうぞ体調維持を一番に考えて過ごしてください。
相談者「ふゆ」さんから寄せられた感想
率直にやはり厳しいなと思いました。老後のために日々、節約して生活しなければならないということが客観的に示されたことで、一度ルートを外れると底辺まで落ちてしまい、こうなるんだと実感しました。人生設計の見直しと、今よりも年収の高い職場への転職を考えていきたいと思いました。ありがとうございました。教えてくれたのは……深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。
取材・文:伊藤加奈子
(文:あるじゃん 編集部)