レアルとバルサの比較にならない差 「強大な個」と「画期的な戦術」の行方【コラム】
調整中のレアルと進化中のバルサ、興味深い今季最初の対戦
週末のエル・クラシコ(現地時間10月26日21時/日本時間27日4時)を前に、週中のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)第3節でレアル・マドリード、FCバルセロナがそれぞれ快勝した。
レアルはボルシア・ドルトムントに2点を先行されながら、後半に5点を奪っての逆転勝利。ヴィニシウスがハットトリックの活躍で、カルロ・アンチェロッティ監督は「バロンドールを受賞するだろう」と称賛していた。
一方、バルセロナはバイエルン・ミュンヘンとの大一番。過去2勝2分11敗という大の苦手だったが4-1と圧勝。こちらはラフィーニャがハットトリック。もしかするとバロンドールはこちらが受賞するかもしれない。
レアルはキリアン・ムバッペ、ヴィニシウス、ロドリゴをどう共存させるかの解がまだ得られていない。特にムバッペとヴィニシウスはどちらも得意なのが左サイドという問題がある。今のところセンターフォワード(CF)がムバッペ、左にヴィニシウスだが、ドルトムント戦の活躍を見ても当面ヴィニシウスの左は動かせないだろう。そうなるとベストのムバッペは見られない可能性がある。
クリスティアーノ・ロナウドが左ウイングとして点を取りまくっていた時期のCFはカリム・ベンゼマ。CFでありながらロナウドの補佐的な役割だった。これまでの流れからすると、ムバッペはベンゼマ化するかもしれない。ベンゼマはロナウドが去ってからは主役としてバロンドールを受賞しているが、ムバッペとヴィニシウスの関係はどうなるのだろうか。
ドルトムント戦の3点目の起点となったロドリゴが直後に負傷。オーレリアン・チュアメニと交代した。これでヴィニシウス、ムバッペの2トップとなり、MFはフェデ・バルベルデ、チュアメニ、エドゥアルド・カマヴィンガ、ジュード・ベリンガムが並んだ。バランスの点ではこの組み合わせが良さそうだった。MFの4人は攻守に能力の高いアスリート揃い。この4人で奪って2トップにつなぐカウンターが期待できる。
実際、後半41分にはベリンガムがタックルで奪ったボールをヴィニシウスにつなぎ、ヴィニシウスが80メートルものドリブルから4点目を決めている。レアルならではのカウンターだった。ロドリゴはムバッペ、ヴィニシウスとは異なるタイプで、その点でも貴重なアタッカーなのだが、MFに猛者を4人並べて2トップの有無を言わさぬスピード勝負のほうが現状ではベストな組み合わせかもしれない。戦術的な完成度ではバルセロナが比較にならないくらい進んでいた。
バイエルン戦では超コンパクト守備が目を引いた。縦横に圧縮した陣形は、これをやり始めた初期のACミラン以来のコンパクトさだった。
アリゴ・サッキ監督が導入したゾーナル・プレッシングは現代サッカーの基本になっているが、やり始めた当初は無謀に見えるくらいディフェンスラインが高く、それまでとはサッカーが大きく変化したことを実感させたものだ。ただ、初期の冒険的なプレッシングが次第に穏健になっていったのには理由がある。
90分間続けるのは無理というほかに、コンパクトネスによって生じる裏とサイドのスペース管理が難しいのだ。バイエルン戦でも何度かそこを突かれていた。それでもこれを敢行するのはメリットのほうが大きいと踏んでいるからだろうし、バイエルンに4点取れたので結果も出ている。オフサイド判定の精度がテクノロジーによって信頼できるようになったことも関係しているのかもしれない。
強大な個を調整中のレアル、画期的な戦術の進化を見せるバルセロナ。今季最初の対戦がどうなるのか興味深い。(FOOTBALL ZONE編集部)