「アミロイドーシス」になりやすい人の特徴はご存知ですか? 原因・症状を併せて医師が解説
監修医師:
大坂 貴史(医師)
京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。
アミロイドーシスの概要
アミロイドーシスではアミロイドとよばれる異常なたんぱく質が臓器に沈着し、臓器機能障害を起こす病気で、アミロイドが複数の臓器に沈着する全身性アミロイドーシスと、特定の臓器に沈着する限局性アミロイドーシスに大まかに分類されます (参考文献 1) 。
アミロイドーシスには様々な種類があり、血液疾患が背景にあるALアミロイドーシス、感染症や慢性炎症が背景にあるAAアミロイドーシス、老化によるアミロイドーシス、長期間の透析に関連するアミロイドーシス、遺伝性アミロイドーシスなどがあります (参考文献 2) 。
アミロイドーシスのタイプや影響を受ける臓器によって症状は異なりますが、一般的な症状としては皮膚が分厚くなる、舌や肩が腫れる、心臓、腎臓、神経の症状があります (参考文献 2) 。
診断には影響を受けている臓器を採取して顕微鏡でアミロイドの存在を証明する検査や、画像検査の結果が重要になり、これらの検査で分かったアミロイドーシスの種類に応じて治療法が選択されます (参考文献 2) 。
アミロイドーシスの原因
アミロイドが臓器に沈着することがアミロイドーシスの原因ですが、沈着するアミロイドには様々な種類があります。
ALアミロイドーシスは免疫グロブリンの一部分が蓄積することが原因になるもので、多発性骨髄腫やリンパ腫といった血液疾患に関連して起こることが知られています (参考文献 2) 。
AAアミロイドーシスは慢性的な炎症が続いた結果、炎症反応として出てくるアミロイドが全身に沈着していくものです (参考文献 2) 。
ATTRアミロイドーシスには老化に関連する「野生型」と「遺伝性」のものがあり、遺伝型には家族性アミロイドポリニューロパチー (FAP) や家族性アミロイド心筋症に関連します (参考文献 2)。
その他にも透析に関連するアミロイドーシスが知られているほか、十分に原因が分かっていないものもあり、アミロイドーシスのタイプによっては医療費の補助が受けられます (参考文献 1) 。
アミロイドーシスの前兆や初期症状について
症状はアミロイドーシスのタイプや沈着する臓器によって異なりますが、一般的な症状には次のようなものがあります (参考文献 2) 。
皮膚症状:皮膚が分厚くなる、痣 (あざ) ができやすくなる、皮下に結節ができる、目の周りに痣ができる
舌が大きくなる
肩関節の前側が腫れる
心臓の症状:動悸、不整脈、失神、狭心症や心筋梗塞
腎臓の症状:尿中にタンパク質が出てしまうことによるネフローゼ症候群の症状として、浮腫 (むくみ) がでてきます
神経症状:末梢神経障害の症状として、しびれ、感覚障害、痛みがあるほか、中枢神経症状としては頭蓋内出血や認知症があります
これらの症状の他に倦怠感、味覚障害、口の渇き、体重減少といった症状が組み合わさったときにアミロイドーシスが疑われます (参考文献 2) 。
これらの症状があったときに「アミロイドーシスかもしれない…」とご自身で疑うことは難しいと思いますし、後述するようにアミロイドーシスの精査には専門性の高い検査が必要になります。まずは医療機関で医師の診断を受けていただくことが大事ですので、上記のような症状があればお近くの病院やクリニックを受診してください。
アミロイドーシスの検査・診断
先述した通りアミロイドーシスには様々な種類があり、1人の患者さんの身体の中で複数のアミロイドーシスが共存する場合もあります (参考文献 2) 。アミロイドーシスの診断には「生検」という検査が必要で、アミロイドによる影響を受けているであろう臓器の一部を採取して顕微鏡でアミロイドの存在を証明することで診断に至ります (参考文献 2) 。
その他にもALアミロイドーシスが疑われるような血液疾患が背景にある患者では、血液を作る骨髄という場所の生検をして血液疾患の状態を確かめたり、心臓のアミロイドーシスが疑われる場合にはエコーやCT・MRIなどの画像検査が重要になります (参考文献 2) 。
アミロイドーシスの治療
アミロイドーシスのタイプによって治療戦略が異なります。
ALアミロイドーシスでは背景にある血液疾患の治療がアミロイドーシス自体のコントロールにとっても重要で、血液疾患の種類にもよりますが、化学療法や造血幹細胞移植が選択肢になることが多いです (参考文献 2, 3) 。
AAアミロイドーシスは背景にある炎症のもとなる感染症や各種疾患のコントロールが軸になり、炎症を引き起こす体内の伝達物質を抑制する生物学的製剤が使われることがあります (参考文献 2) 。
遺伝性アミロイドーシスでは、肝臓のアミロイドーシスに対してアミロイドのもとになる物質の産生を阻害する薬剤を使用したり、心臓や肝臓の移植治療が選択される場合があります (参考文献 2) 。
アミロイドーシスになりやすい人・予防の方法
アミロイドーシスの原因を考えれば、ALアミロイドーシスは特定の血液疾患への罹患が、AAアミロイドーシスは感染症や慢性の炎症性疾患への罹患がリスク因子といえるでしょう。
遺伝性アミロイドーシスはアミロイドーシスの家族歴のほか、神経障害・心不全・腎不全・肝不全の家族歴がある場合は、それらの家族歴がアミロイドーシスによる場合であった可能性があるため、このような家族背景のある方はアミロイドーシスの発症リスクは高いと言えるかもしれません (参考文献 2) 。また、遺伝性アミロイドーシスは地域によって発症リスクに差があることが知られており、日本国内だと熊本県、長野県、石川県で多いことが知られています (参考文献 4) 。
腎不全の患者さんでは透析治療を受けることがありますが、長期間透析を受けているとβ2ミクログロブリンという物質が体内に蓄積してアミロイドーシスを発症することがあります (参考文献 2) 。
参考文献
1.難病情報センター. 全身性アミロイドーシス. 病気の解説
2.UpToDate. Overview of amyloidosis
3.UpToDate. Treatment and prognosis of immunoglobulin light chain (AL) amyloidosis.
4.Araki S et al. Transthyretin-related familial amyloidotic polyneuropathy-Progress in Kumamoto, Japan (1967-2010)-. Proc Jpn Acad Ser B Phys Biol Sci. 2010;86(7):694-706.