手前がバルミューダの「BALMUDA The Plate Pro」、奥が「減煙焼き肉グリルXGRILL TRIPLE(YHP-TX130)」(筆者撮影)

焼肉やお好み焼き、ホットケーキなどを作るのに最適なホットプレート。最近は煙が出にくいものや煮込み料理にも対応できる深いプレートのタイプ、テーブルの上で映えるスタイリッシュなデザインのものも登場し、選択肢が増えている。価格も数千円から数万円まで、幅が広い。そこで、今回は市場価格4万4550円のバルミューダ「BALMUDA The Plate Pro」と市場価格8980円の山善の「減煙焼き肉グリルXGRILL TRIPLE(YHP-TX130)」の2モデルを比較することにした。バルミューダが山善の約5倍という価格差だ。はたしてそこまで違いを体感できるだろうか。

一番の違いは「プレートの素材」

バルミューダの特徴は、高い蓄熱性能を実現する6.6mmのクラッドプレートを採用していることだ。クラッドプレートとは異なる金属を貼り合わせた鋼板のことで、0.8mmのステンレス素材で5mmのアルミニウム素材を挟んで貼り合わせている。一般的なホットプレートは約3mmのアルミニウムの素材にフッ素塗装などを行っている場合が多いが、プレートが分厚い分、ずっしりと重い。深さはなく、平らなプレートなので、汁が出るような料理には向かない。


バルミューダのホットプレートは、一般的なプレートとは異なり、銀色。フッ素加工が施されていない(筆者撮影)

山善は、一般的なホットプレートだ。「減煙焼き肉グリル」というものの、吸煙するわけではない。油を下に落とすことで油の焦げ付きをおさえ、煙を抑える仕組みだ。付属品は豊富で、焼肉プレートのほかにたこ焼きプレート、平面プレート、フタもあるので幅広い調理ができる。

【画像】バルミューダと山善のホットプレートで「焼肉、ステーキ、ホットケーキ」を焼いて比較、使った後の比較、それぞれの付属品など

山善独自の機能は、焼肉プレートのプレート裏面を立体的な“X”の形状にした独自の“Xカット構造”だ。そこから余分な油を効率的に下へ落とし、焼き肉の際に出る煙や油ハネを抑えることができる。プレートは簡単に取り外しができ、軽いのでお手入れもしやすい。


山善のホットプレートは、よく見る一般的なタイプ(筆者撮影)

サイズはバルミューダが幅573mm×奥行334mm×高さ88mmで重さ約5.2kg(クラッドプレート含む)、山善が幅440mm×奥行270mm×高さ165mmで重さは約3.2kg(平面プレート フタあり)。テーブルに置いてみると、バルミューダはプレート部分が広いのでたっぷり食材が置けるが、5kg以上あるので持ち運びは重い。ただ、バルミューダは目を引くソリッドなデザインで、高級感がある。一方の山善はごく一般的な、よく見るホットプレートのデザインだ。

焼肉には向かないバルミューダ

2製品を使って、比較的脂が多い和牛で焼肉をしてみた。

バルミューダのクラッドプレートは高い蓄熱性を誇っており、食材を置いても160℃以下に温度が下がらず、均一に熱を食材に伝え、表面はパリッと焼けることが特徴だ。その代わり、プレートが加熱されるまで14分ほどかかる。

温度は220℃、200℃、180℃、160℃から選ぶことができる。焼肉のおすすめは220℃と取扱説明書にあったので、220℃に設定をした。肉を置いたとたんに大きなジュッという音が響く。あっという間に焦げ目がついた。肉が焼ける時間も早い。


上:バルミューダは肉を置いたとたん、裏側に焦げ目がついていく/下:山善は肉を置いたときに焦げる音がかすかに聞こえる。火力は強いものの、食材を置くと温度が下がるようだ(筆者撮影)

山善は、焼肉プレートを使用するときは、先に水トレイに水を200cc入れておく必要がある。

温度は230℃、180℃、140℃、WARM(保温)の目盛りがあり、途中の温度は無段階で設定できる。

ただ、プレートは一般的な軽い食材を入れると入れたとたんに一気に温度が下がってしまい、煮えたような焼き上がりになる場合がある。油が落ちてしまうので焦げ付きが少なく、煙も出にくい。バルミューダと比較すると煙の少なさは一目瞭然だった。

実際に焼いてみるとバルミューダは焦げ目がしっかりついて香ばしく、食感がよい。ただ、脂が多い肉を焼くとどんどん脂が出て広がってしまい、蓄熱性の高いプレートで熱し続けるため、脂が飛び、焦げていく。一度焼いたら表面の焦げつきをヘラで落とし、キッチンペーパーで拭いていかないと、プレートに肉がくっついてしまう。

焦げないように脂をふきとりつつ調理をしたが、それでもプレートが高温なので表面が焦げてしまった。脂もはねやすいので、新聞紙などを敷いておかないとテーブルが惨事に……。プレートのまわりには、汚れた脂が落ちる「油受けトレイ」があるものの、それが丸見えとなり、見た目もキレイとは言えない状態だった。家族は「途中からは山善のほうが美味しそうに見える」という感想だった。


上:バルミューダはプレートがシルバーということもあり、焦げが目立つ/下:家族からは「こっち(山善)のほうが見た目はキレイ」と好評(筆者撮影)

一方の山善は、網状のフッ素加工が施してあるプレートで、余分な脂を水トレイに落としていく。

肉を置くと静かにジュッという音がする。バルミューダのように蓄熱製が高いわけではないので、置いたとたんに温度が下がっている印象だ。

1枚の肉を焼くのに、バルミューダよりも時間がかかった。焦げ目はつくが、香ばしさについてはいまひとつといった印象だ。

ただ、脂がどんどん下に落ちるので、脂っぽさがなく、煙は気にならない。プレートもバルミューダほど汚れることがなく、最後まで気持ちよく食べることができた。

焼いた肉の味については、バルミューダのほうが理想に近かったが、プレートの汚れや溶けた脂が目立ち、こまめにお手入れをしながら食べないと焦げや脂っぽさが気になる結果となった。ただ、鉄板で焼いた野菜は一瞬で水分が蒸発し、その蒸気で蒸した状態になるため、どれもとても甘く、バルミューダは野菜の焼き加減にも感激した。

山善は一般的なホットプレートで焼いた味で、焦げ目はもう少しパリッとついてほしいところ。野菜もタマネギなどは時間がかかり、乾燥していくので、みずみずしさはバルミューダより劣る。どちらも一長一短だと感じた。

ステーキはバルミューダに軍配

ステーキはそれぞれの取扱説明書に書いてあるおすすめの温度で焼いた。バルミューダは200℃、山善は焼肉プレートを使用して230℃。

分厚いステーキ肉を焼いたが、プレートにおいても温度が下がらず、しっかり表面に焦げ目がつくのはバルミューダだ。均一な温度で加熱でき、加熱ムラや焼きムラを抑えられており、やわらかなミディアムレアに焼くことができた。


上:バルミューダはプレートの上でナイフを使って切ることもできる。アツアツが食べられて美味しい/下:山善は少し火力が弱いので、MAXにしても焼き目がつくのに少々時間がかかる(筆者撮影)

山善は、焼肉プレートで焼いているため、網目のような焼き目がついて見た目は美味しそうだ。ただ、焼肉と同様、肉を置くと温度が下がっているのは明らかで、バルミューダよりも焼くのに時間がかかり、表面の香ばしさはいまひとつ。また、焼きムラも少しあった。

フッ素加工の山善は金属製のナイフなどを使うことはできないが、バルミューダはプレートの上でそのまま切ってそのまま配膳できるので、アツアツの状態のまま食べることができ、鉄板焼き店のような雰囲気を味わうこともできた。ステーキに関しては、やはり山善のような一般的なホットプレートよりもバルミューダのほうがムラなく美味しく焼き上がる。

ホットケーキは、気になる焼きムラはなかったものの、山善はコントローラーに近いほうが少し濃く焼き上がった。コントローラーのまわりにヒーターが多いからかもしれない。


上:見事な焼き加減のバルミューダ。ふっくらと焼き上がる/下:山善はコントローラーに近いほうのホットケーキがこんがり(筆者撮影)

バルミューダは分厚いプレートが均一に温まっているため、どこで焼いても同じように焼ける。生地を置いても温度が下がらないせいか、膨らむのも早かった。バルミューダは生地が一気に盛り上がり、厚みのあるホットケーキができる。山善は、焼き色にムラはないものの、バルミューダと比較すると少しだけ薄いホットケーキになった。

蓄熱性の高いプレートはホットケーキには最適で、バルミューダのほうがふっくらとしたお店のようなホットケーキに仕上がった。

片付けは山善のほうが早く、面倒がない

山善のホットプレートはフッ素加工が施してあり、やわらかいスポンジでサッと落ちる。また、ヒーターユニット、水トレイ、本体、コントローラー(コードセット)は外せるので、隅々までキレイにできる。


山善はプレートを外すと水受けトレイがある。肉を焼いているときは見えないが、油などが落ちていることがわかる(筆者撮影)

バルミューダはフッ素加工がされていないので、金属タワシなどをゴシゴシ使えるが、焼肉をするとなかなか落ちない。プレートも重いので、お手入れは大変だった。キレイな状態を保つのであれば、クエン酸を使ったお手入れをこまめにする必要がありそうだ。

また、少々気になったのは、ナイフなどを使えるため、傷も目立ってくることだ。


バルミューダを金属タワシでゴシゴシ。クラッドプレートが重いので、疲れる(筆者撮影)

お手入れ面に関しては、軽くて汚れ落ちが早い山善のほうが、やはり使いやすかった。

焼き加減はバルミューダ、使い勝手のよさは山善

いろいろ試した結果、やはりバルミューダのほうが表面はこんがり、中はジューシーに焼き上げられることを実感した。ただ、薄い焼肉は焦げやすく、途中から見た目も気になってくるので、ステーキなどの塊肉、ホットケーキ、お好み焼きなどがおすすめだ。

また、「ライブキッチン」とバルミューダが表現している通り、見た目もよく、料理中も映えるので特別な日に使いたくなる楽しさがあった。


このような金属ヘラを使えるバルミューダ。鉄板焼き気分が味わえる(筆者撮影)

山善は焼肉の仕上がりがよく、余分な油が落ち、ヘルシーで使い勝手がよい。また、たこ焼きプレートや平面プレート、立てて置くことができるフタも付属しているので料理のレパートリーが広がる。バルミューダはたこ焼きプレート、フタ付き平面プレートは別売となっているので、オトク感が強い。お手入れも簡単で、日々の食事で使い勝手がよく、出番が多そうなのは山善だった。


平面プレート、たこ焼きプレート、立てて置けるフタまで付属しており、コスパがよい山善(筆者撮影)

分厚いクラッドプレートの特性を生かし、焼き上がりがよいバルミューダは、4万円以上の価格でも納得できる。山善は3枚のプレート、フタが付属しており、お手入れ面もよく考えられている。これで1万円を切る価格というのは、かなりお買い得と言えるだろう。鉄板焼きを美味しく食べたいのならバルミューダ、準備や手間などを考えていろいろな料理に挑戦できる、低価格なホットプレートを探しているなら山善をおすすめしたい。

(石井 和美 : 家電プロレビュアー)