BYDは自動車買い換え補助金の追い風を受け、9月の販売台数が過去最高を更新した。写真は同社のコンパクトEV「海鴎」(BYDのウェブサイトより)

中国の自動車産業において、国内事業と海外事業の温度差が拡大している。

中国汽車工業協会が10月12日に発表したデータによれば、中国メーカー(訳注:外資系の合弁会社を含む)が2024年1月から9月までに国内市場で販売した自動車は累計1725万9000台と前年同期比2.4%減少した。それに対し、同じ期間に海外市場で販売した自動車は431万2000台と同27.3%増加し、国内市場と明暗が分かれた。

国内市場では複数の要因が需要の重しになっている。例えば、中国景気の全体的な減速や、自動車メーカー間の価格競争の激化が(さらなる値下げを期待する)消費者の様子見を促したことなどだ。

補助金で買い換え促進

そんな中、中国政府は景気対策の一環として、自動車の買い換えに補助金を支給する制度を2024年4月末に導入した。消費者が定められた条件の下で保有する旧型車を廃棄し、新車に買い換えた場合、低燃費のエンジン車への買い換えなら7000元(約15万円)、EV(電気自動車)またはPHV(プラグインハイブリッド車)への買い換えなら1万元(約21万円)を支給するというものだ。

さらに3カ月後の7月末には、政策効果の拡大を狙って補助金の支給額がエンジン車は1万5000元(約32万円)、EVとPHVは2万元(約42万円)にそれぞれ引き上げられた。

こうした対策が下支えになり、国内市場の自動車販売台数は8月と9月の2カ月連続で前月より増加した。とはいえ、前年同月との比較ではまだマイナスを脱していない。中国汽車工業協会のデータによれば、9月の国内販売台数は227万台にとどまり、前年同月を6%下回った。

自動車の買い換え補助金では、エンジン車よりもEV・PHVのほうが優遇されている。そのため、消費者はより高い補助金を求めてEV・PHVへの買い換えを選ぶ傾向が強まっている。


中国メーカーは西側企業が撤退したロシア市場で存在感を高めている。写真はロシアのマラソン大会に協賛した中国の奇瑞汽車の先導車両(同社ウェブサイトより)

中国汽車工業協会のデータによれば、1月から9月までに国内市場で販売されたEV・PHVは累計739万2000台に達し、前年同期比35.6%増加。自動車販売の業界団体である全国乗用車市場信息聯席会によれば、一部の地域では(エンジン車を含む)乗用車の総販売台数に占めるEV・PHVの比率が6割を超えたという。

数あるEV・PHVの中でも、売れ行きの好調が目立つのは比亜迪(BYD)のコンパクトEV「海鴎(シーガル)」に代表されるエントリークラスの低価格車だ。BYDの9月の国内販売台数は41万9426台に上り、月間の販売記録を更新した。

輸出の主力はエンジン車

国内市場とは対照的に、中国メーカーの海外事業は依然としてエンジン車が主力だ。中国汽車工業協会のデータによれば、1月から9月までのエンジン車の輸出台数は338万4000台と前年同期比32%増加。輸出先の上位3カ国はロシア、メキシコ、アラブ首長国連邦となっている。


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一方、同じ期間のEV・PHVの輸出台数は92万8000台、前年同期比の伸び率は12.5%にとどまった。これはヨーロッパ市場などでEVの需要が縮小に転じた影響が大きい。

EVとPHVを分けて見ると、1月から9月までのEVの輸出台数は73万1000台と前年同期比3.8%減少した。これに対し、PHVの輸出台数は19万8000台と絶対数ではEVの3割未満だが、前年同期比では約3倍に急増した。

(財新記者:余聡)
※原文の配信は10月12日

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