「使わなかったクオカードのお金はどうなる?」…日本全国に眠る《放置QUOカード》の驚きの「総額」と「退蔵益ビジネス」

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知名度の高いQUOカードだが…

QUOカードは1987年に誕生したプリペイドカードだ。公式HPによれば、全国のコンビニやドラッグストアなど利用できる加盟店は約6万店で、これまでの発行数は約10億枚。イベントや企業キャンペーンの景品、人生の節目を祝うギフトとして、一度は受け取った経験がある人も多いだろう。

だが、このQUOカード、全額をきれいに使い切ったことがある人は果たしてどれほどいるだろうか。

少額を残したままいつの間にか使うのをやめてしまったり、なかにはもらったこと自体をすっかり忘れてしまったりするケースもあるはずだ。

実は、この放置されたQUOカードは、発行元であるクオカード(企業を指す場合はカタカナ表記)および、同社の親会社であるティーガイア(携帯電話の販売代理店最大手、ベインキャピタルが9月末に同社の買収を発表)に大きな利益をもたらしている。

決算分析に詳しい株式会社ファインディールズ代表取締役の村上茂久氏が解説する。

「発行から一定期間が経ったQUOカードは、今後も使用される可能性が限りなく低いと判断され、発行元企業の営業外収益に計上される仕組みになっています。このように商品券などを手にした顧客が、それを使わないことによって生じた利益を『退蔵益』と呼びます。この額は企業の有価証券報告書に記載されているケースが多い」

では、実際にQUOカードがもたらす退蔵益はどれほどなのか。

未使用分がこんなに…!

ティーガイアの2024年3月期の有価証券報告書を見ると、損益計算書に「カード退蔵益」の項目を確認できる。その額、なんと41億8600万円。

QUOカードに有効期限は設けられていないので、ざっくり言えば、23年度はこれだけの額の放置カードが新たに積み上がったことになる。ティーガイアの123億9000万円の経常利益の33.7%を占めており、同社にとって重要な収益源であるのは間違いない。

ちなみに、過去5年のカード退蔵益は以下の通りだ。

・2023年3月期 41億4000万円

・2022年3月期 47億6400万円

・2021年3月期 59億2600万円

・2020年3月期 53億6800万円

・2019年3月期 50億8700万円

前述の2024年3月期分も合わせると、総額は294億7100万円にものぼる。

村上氏によれば「これこそがQUOカードのビジネスモデル」なのだという。

「この事業を担うクオカードの決算公告を見れば一目瞭然です。今年7月に発表された最新の決算公告では、営業利益は10億8800万円の赤字である一方、経常利益は31億1000万円になっています。

この差額を埋めているのが、営業外損益に計上されている約42億円。名前こそ違いますが、このうちの大半が退蔵益です。以前からこのP /Lのスタイルは変わっておらず、利益を稼ぐ手段として確立していることがわかります」

QUOカードは現金との併用ができるので、全額を使い切ることは可能だ。しかし「誰かにもらう」ことが大半で、自らが稼いだお金に比べるとやはり執着は薄くなる。多少使い切れなくても気にする人はそう多くないのだろう。使い手の心理を突いた巧いビジネスと言えよう。

しかし、企業のなかには、この退蔵益でさらに莫大な利益を稼ぐ猛者も存在する。

つづく記事〈スターバックスが「プリペイドカードビジネス」で300億円を荒稼ぎしていた…!利用者の多くがスルーしている「巧妙なカラクリ」〉で、詳しく解説する。

スターバックスが「プリペイドカードビジネス」で300億円を荒稼ぎしていた…!利用者の多くがスルーしている「巧妙なカラクリ」