肝機能を測る指標「γ-GTP」とは何か医師に聞く どのような疾患がわかるのか
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど症状が出にくい部位で、病気を早期発見するためには、毎年の健康診断が重要です。健康診断の結果で肝臓の項目を見てみると「γ-GTP」とありますが、こちらは何を表している指標なのかご存知でしょうか。はとがや緑内科クリニックの藪先生に伺いました。
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藪 剛爾(はとがや緑内科クリニック)
愛知県名古屋市生まれ。1981年信州大学医学部卒業後、同大学院博士課程、信州大学病院、須坂病院、相沢病院、米国ピッツバーグ大学常勤研究員、福井医科大学病院(現・福井大学医学部附属病院)外来医長・病棟医長、亀田総合病院消化器内科部長を経て2007年、はとがや緑内科クリニックを開院。親身で丁寧な診療による、信頼と安心の医療を提供することをモットーとしている。
編集部
NASHはどのように診断されるのですか?
藪先生
NASHは「非飲酒者である」「組織所見が脂肪肝炎」「ほかの原因による肝疾患の除外」の3項目を満たすことで診断されます。原則的には、アルコール性を除外するため、アルコールを全く飲まない、もしくは男性であれば「日本酒換算で1.5合未満/日」「女性であれば1合未満/日」程度しか飲まないのにもかかわらず、脂肪肝を認めた状態となります。正式に診断するためには「肝生検」といって、肝臓の組織を実際に採取して病理診断で確認することが必要です。NASHの病理学的診断基準としては、「肝臓組織の脂肪浸潤が5%以上」「肝臓組織での炎症細胞の存在」「肝細胞のバルーニング・炎症・壊死などの肝細胞障害の存在」「線維化が存在すること」などがあります。
編集部
なるほど。NASHはそのように診断にいたるのですね。
藪先生
「NASHだけが危険な病気で、NAFLDはセーフ」と思われがちな傾向もありますが、決してそんなことはありません。NAFLDになる病態では、潜在的にインスリン抵抗性や脂肪合成過剰があり、内臓脂肪蓄積が進行しているということなのです。
編集部
NAFLDからNASHへはどのように変化するのですか?
藪先生
さまざまな複合的要因の結果、シームレスにNASHに至るという説が今は有力です。つまり、NAFLDと診断された状態ですでにNASHへのカウントダウンが始まっており、心血管病の合併リスクやmetabolic dysfunction(代謝障害)に関連する障害、インスリン抵抗性、脂質異常症や悪性疾患のリスクが高まっているということです。NASHになってからではなく、NAFLDの段階から治療や介入が必要なことは言うまでもありません。
編集部
NAFLD/NASH の肝機能検査で数値の目安がありましたら教えてください。
藪先生
検査の数値だけでNAFLDであるという質的診断はできません。このような検査では、ウイルス肝炎や自己免疫性肝炎など、ほかの要因で上昇している場合もあるため、それらの除外診断を行ったうえで、画像診断や肥満、耐糖能障害や脂質異常症の有無など臨床要件をみて判断しなくてはなりません。検査値は「あくまで進行度合いを判断するための参考値」と捉えたほうが良いと思います。
編集部
なるほど。参考値として見方を教えてください。
藪先生
ALTとASTの比率(AST/ALT比)をみて、「AST/ALT比が1以上になる場合は、NAFLDにおいてNASHの可能性が高い」やAST、ALT、γ-GTPのいずれかが高い場合は、「進行したNAFLDの可能性が高い」と考えられます。また、これらの数字を見る際は肝臓に炎症を伴っているか、肝線維化が生じているかなど、ほかの検査要因と合わせて総合的に判断することが重要です。
※この記事はMedical DOCにて【「非アルコール性脂肪肝炎」(NASH)の症状・原因を医師が解説 肝臓の治療法も説明】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。