[10.19 J1第34節 湘南 2-1 広島 レモンS]

 想定以上のスーパーゴールで喫した失点に悔いを残した湘南ベルマーレGK上福元直人だったが、それを差し引いても余りあるほどの度重なるスーパーセーブでチームを救い、J1残留に大きく近づく勝ち点3をもたらした。試合後、今夏加入の守護神は失点シーンに「責任を感じていた」と振り返りつつも、勝利という結果を前向きに受け止めた。

 上福元は広島戦の前半19分、MF川辺駿の鋭いミドルシュートを見事な横っ飛びで阻み、一方的な劣勢の中で幸先の良いスタートを切ったように思われたが、同28分に悔しい失点を喫した。向かって左を攻め込んできたDF中野就斗の侵入に対し、味方の寄せが遅れると、右足で放たれたボレーシュートがニアポスト脇へ。上福元も素早く反応したものの、かき出すことはできなかった。

「角度がない中、ニアを抜かれてしまったので悔しさが残るし、どうにかできたのではないかという反省がある」。相手は首位の広島とあり、できる限り無失点の時間帯を続けようというプランの中での痛恨の失点。「相手の強度で苦しめられる時間が長い中、本当はそういう状況でもゼロで抑えながら、後半局面をひっくり返していくかという戦いにしたかった」とショックはあった。

 それでも今年11月で35歳を迎えるベテランは引きずらなかった。「次に切り替えてよりポジティブにプレーできるかを意識していた」。チーム全体の好守もあってその後は決定機を作らせずにいると、後半20分にも再び川辺のミドルシュートが枠内に飛んできたが、上福元は1本目以上の鋭い反応で阻止。続く波状攻撃でも広島の強みであるクロスをことごとくセーブし、気迫あふれるパフォーマンスで追加失点を許さなかった。

 また後半のプレーで際立っていたのは、相手の攻撃をキャッチで阻んだ後、カウンター攻撃の起点となる働き。持ち前のキックやスローのスキルもさることながら、広島が空けたスペースにスピードある選手を飛び込ませるなど、連係や判断の面でも相手を苦しめていた。上福元によると、自身を起点としたカウンターは前半から狙いを持って準備していたのだという。

「前半は相手の圧をうまく乗り越えることができないシーンも多々あった中、ただそのまま一辺倒に進めていくだけじゃ相手も楽だと思うので、相手が嫌がるプレーも意識していた。それは味方との協力もあってだけど、こういうところに走り出して欲しいとか、こういうところを狙ってほしいという声掛けはしていた。それが相手コートでサッカーをするという部分につながるところもあったと思う」

 直接この働きがゴールに繋がったわけではなくても、上福元を起点に試み続けたカウンターが広島の疲弊を誘い、湘南の攻勢に希望を与えていたのは紛れもない事実。「満点ではないなか、必要に応じて相手を苦しめる、相手が嫌がるような配球を意識していたつもり」(上福元)。劣勢の中でも攻め筋を冷静に見極め、攻守に奮闘した守護神の働きが勝ち点3を手繰り寄せる大きな原動力となった。

(取材・文 竹内達也)