練習を終え、引き揚げる岡田監督(撮影・中田匡峻)

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 早大野球部元監督の石山建一氏(82)が8日、今季限りで退任する岡田彰布監督(66)へエールを送った。かねて「阪神の監督をできるのは岡田しかいない」と監督復帰を熱望し、昨季はリーグ優勝と日本一に導いた。今季も類いまれな洞察力を発揮し、最終盤で巨人と優勝争いを繰り広げた手腕を高く評価。早大時代に指導した教え子へ、全知全能をかけて、日本一に輝くことを願った。

 突然の監督退任の知らせに、石山氏はさみしさを募らせていた。「球団は当然、続投を要請するものだと思っていたからね」。昨年リーグ優勝と日本一に導いただけにショックは大きい。「来年からフロントに入るということだけど球団には岡田を大事にしてほしい」と親心をにじませる。

 今季前半は打線の状態が上がらず、苦しい戦いを強いられた。「若い選手がもっと伸びると思っていたんだけどね。クリーンアップの3人が2軍にいくなんて考えられないよ」。それでも岡田監督はチームを立て直し、シーズン最終盤まで巨人とV争いを繰り広げた。「いいものはいい、悪いものは悪いと厳しくできるのも岡田だから」。9月を勝負と位置づけ、調子を取り戻させた手腕に賛辞を惜しまない。

 「阪神はファンが熱烈だし、マスコミの注目度も高い。そのプレッシャーに耐えられる、度胸があるのは岡田しかいないとずっと言っていたんだよ」。虎将に復帰した昨季から阪神戦はテレビなどで全試合観戦。電話やメールで連絡を取るだけでなく球場に駆けつけ、戦いぶりをチェックしてきた。9月23日、大一番となった巨人戦に0−1で敗れた後も激励した。

 「今年はあれで終わったと思ったからね。でもまだCSがあるから頑張れと言いましたよ。大逆転してくれよってね」

 かつて巨人で編成本部長を歴任。年俸査定も担当したとあって「このままだとアップは才木、桐敷ぐらいでしょう。日本一になって年俸を補填(ほてん)してほしいね。選手は自分のことだけを考えて、死にものぐるいになってやってほしい」とフロント目線でも選手の背中を押す。

 「巨人は試合から離れているからゲーム感を取り戻すのが難しい。岡田には全知全能をかけて、日本一になってほしい」

 CSは阪神有利との見方だ。早大1年の頃にリーダーの素質を見抜き、東京六大学のスターに育て上げた。66歳の教え子がもう一度、頂点に立つことを願ってやまない。

 ◆石山建一(いしやま・けんいち)1942年9月6日生まれ、82歳。静岡県出身。静岡高、早大を経て、日本石油(現ENEOS)でプレー。早大と社会人野球のプリンスホテルで監督を務め、数多くの選手をプロへ送り出した。現在も全国各地を飛び回り、“野球伝道師”として中高生を中心に指導を続けている。