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 久々に会った旧友と飲食店で時を過ごした際、その相手が店員に難癖を付けるなど、かつての友人ではない姿に変貌していた時は考えものだ。常に理不尽な怒りを周囲にまき散らす旧友にかつての友情など抱くことはできないが、かといって強くたしなめるとトラブルに発展しかねない。そんな状況時の対応について、「大人研究」のパイオニアとして知られるコラムニストの石原壮一郎氏が解説した。

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 【今回のピンチ】

 久しぶりに会った友だちと居酒屋に行った。そいつは店員さんに「遅えんだよ!」と毒づいたり難癖を付けたりなど、やたらと威張り散らす。いっしょにいて恥ずかしい……。

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 歳月は人を変えます。以前はそんなことしそうになかった友だちが、久しぶりに会ったら「居酒屋で店員さんに威張り散らす困ったヤツ」になっていました。生ビールに対しては「泡が多いなあ」とケチをつけ、枝豆が来たら「遅せんだよ!」と毒づいています。実際は生ビールの泡はけっして多くないし、枝豆もスムーズに出てきたのに。

 この先の付き合い方はさておき、とりあえず、今現在の極めて恥ずかしい状況をどうにかしたいところ。店員さんから「隣りのおっさんも、嫌な客と同類なんだろうな」と思われていたら最悪です。己の尊厳を保つ意味でも、居たたまれないという意味でも大ピンチ。どうやめさせればいいのか。

 本人は、いろんな理由や経緯があって、そういう態度を取る自分を「カッコいい」と思っているのでしょう。ストレートに「みっともないからやめろよ」と言ったら、ケンカになるのは必至。ま、ケンカになって「俺は帰る!」と席を立てば、辛い状況からは脱出できます。ただ、後味はよくありません。

 「このあいだネットに『飲食店でドン引きされる人ランキング』みたいな記事があって、1位は『店員に偉そうにする人』らしいよ」という話をして、遠回しに苦言を呈するやり方もあります。しかし、困ったタイプほど自分を強引に肯定しがち。「最近の若いヤツには、カツを入れてやらないとダメなんだよ」ぐらいの謎理論で自分を正当化しそうです。

 もともと、そういうタイプじゃないなら、大きな転機があってキャラが変わったのかもしれません。「お前、雰囲気変わったね。何かあったの?」と水を向けてみましょう。相手の口からドラマチックなエピソードが出てくれば、少しは同情する気になるかもしれません。何より格好の酒の肴になります。

 「なんだよ、なんか文句あるのかよ」と突っかかってくるようなら、それ以上の詮索は無意味。「ま、変わったのはお互い様かもね」と適当にまとめて、話を終わらせます。その上で、自分は店員さんにいつも以上に丁寧な口調と態度で接することで、暗に「この人と一緒にしないでね」と主張しましょう。

 友だちがこっちの態度に寄せてちょっとおとなしくなって、それなりに話が弾めば、しばらくは飲んでいられます。しかし、そうじゃない場合は、さっさと切り上げることを考えたいところ。緊急の連絡が入ったフリをしつつ、「悪い、会社に戻らなきゃ」などとウソをついて席を立つのもアリです。

 自分自身も〝店員さんに威張ることを良しとする側の人間〟なら別ですが、友だちの態度を恥ずかしいと感じている場合、もう付き合いを続けることはできません。切ない話ですが、それもまた人の縁です。

 せめて最後に「貴重な切なさを味わわせてくれてありがとう」と、心の中でお礼を言っておきましょう。それが一時期は友だちだった相手へのせめてものはなむけです。

(コラムニスト・石原 壮一郎)