【東京ゲームショウ2024】
開催期間:9月26日~29日
会場:幕張メッセ

TGS2024会場のイケアブースは「リビングなど家庭内でゲームを楽しむ」事を意識したコンセプト展示が中心だ

 イケア・ジャパンは東京ゲームショウ2024において、9月に発売した同社独自の新たなゲーミング家具「BRÄNNBOLL/ブレンボール ゲーミングコレクション」を実際に試せるブースを展開。リビングルームなど、生活空間の中にゲーミング家具を手軽でカジュアルに取り入れる展示を行なった。イケアがTGSに出展するのは2021年以来3年振りとなる。

 「BRÄNNBOLL/ブレンボール ゲーミングコレクション」として新たに発売した19製品以外にも、出展ブースでは同社がこれまで発売しきた多くのゲーミング家具などと絡めた展示を行なっており、家庭内の色々な場所でイケアの家具を使った空間構築を紹介していた。

 今回の取材ではIKEA of Swedenにて商品デザイン開発を担当するPhilip Dilé氏に商品の説明やコンセプト、イケアがゲーミング家具を取り扱った経緯などについても話を伺いつつ、筆者が実際に展示ブースにて、見て触れてユニークに感じた商品について紹介していこうと思う。

「BRÄNNBOLL/ブレンボール ゲーミングコレクション」以外の製品を使ったコンセプト展示も各所で見られた。この写真の中だと、ゲーミングマウスパッドだけが「BRÄNNBOLL/ブレンボール ゲーミングコレクション」だ

ソファの上など色んなところに置かれている不思議な宇宙人のぬいぐるみは「AFTONSPARV(アフトンスパルヴ)」という商品名なのだが、キャラクターとしての名前はないのだという。名前は購入した子供たちが好きにつけてかわいがってほしいそうだ

 筆者は2003年頃に本場スウェーデンのIKEAで買い物をした事がある。当時の筆者個人としては大型倉庫のような場所で商品を直接購入できるシステムや、個性的ながら暖かみのある商品デザインがとても斬新に感じたものだ。日本への進出は2006年からで、以降も各地で店舗を拡大していき、現在ではイケアを知らない人はいないくらいに日本での知名度がかなり向上している印象だ。

 そんな筆者にとって最大の違和感は「なぜイケアがゲーミング商品を取り扱うのか?」であった。同社の商品はゲーミングを冠する比較的ターゲットの狭い商品というよりは、もっとターゲットレンジの広い家庭向けの家具などのアイテムを扱っている印象が非常に強かったからだ。

 こうした疑問に対してDilé氏は明確に、2021年にASUSのゲーミングブランド、ROG(Republic of Gamers)との協業がきっかけだと回答。この時に学んだゲーミング製品の知識と経験を元に、同社でもゲーミング家具などの商品展開を開始することにしたのだと経緯を語ってくれた。

まるでコントローラを掴んでいるむかのようにコントローラを飾りつつ収納できるユニークな手の形をしたスタンド。このスタンド自体は以前に発売した製品だが、スタンドを収納しているケースが今回発売した「BRÄNNBOLL/ブレンボール ゲーミングコレクション」の「壁取り付け式コレクションケース」だ

会場では、IKEA ofSwedenにて商品デザイン開発を担当するPhilip Dilé氏がコンセプトや開発の経緯などを語ってくれた

2021年にASUSのゲーミングブランド、ROGと協業して開発した、電動昇降機能付きゲーミングデスク「UPPSPEL/ウップスペル」や、ゲーミングチェア「GRUPPSPEL/グルッスペル」なども展示されていた

 同社のゲーミング商品をチェックしてみると、チェアやベッド、デスクなどこれまで発売した商品の多くはヘビーなゲーマーに向けられた製品が多かった印象だが、今回の「BRÄNNBOLL/ブレンボール ゲーミングコレクション」については、より家庭向けとなっており、かなり毛色の違う製品が増えた印象だ。これについてDilé氏は「今回は新たなチャレンジを試みた製品が多いが、IKEA社内のゲーマーや、ゲーマーと一緒に暮らす家族などにも話を聞くことでニーズを掘り起こしていった」と経緯を説明。そんな話の中から見えてきたニーズの1つが「床」だったという。

 つまり手軽にゲームを遊んだり、子供たちがゲームを遊ぶ時などは、床の上で直接転がるなど、床の上でゲームをすることが多い。そのため、床に座りながら身体を支えられるアイテムがほしいと考えて、このクッションを開発したとし、「膨らまし式ゲーミングラウンジチェア」を紹介した。

 空気で膨らますタイプのクッションとなっており、実際に座ってみると見た目以上に柔らかく、かなりリラックスできた。クッションの固さについてはエアの加減で固くも柔らかくもでき、この特性を活かした使い道として、たとえば洋服用のハンガースタンドに掛けて片づける、という普通のクッションでは考えも及ばない方法を披露してくれた。

 また、中央部の丸い穴には小さなスツールがはめ込まれており、これを着脱して単体でも使う事ができる。クッション単体で見るとゲーミング要素はないが、ゲームを遊ぶ子供という視点で作られているのがわかる。また、こういった着脱ギミックはゲーマーたちも好きな仕掛けなので、これ1つで大人も子供も喜ぶクッションとなっていた。

ドーナツのように中央に穴が開いている「膨らまし式ゲーミングラウンジチェア」

空気で膨らませて使うクッションなので、本体が非常に軽いのが特徴の1つで、洋服などを掛けられるハンガースタンドに収納できると実演

中央の穴にピッタリとハマる小型のスツールがセットになっている。スツールを埋め込んだ状態と外した状態とでも座り心地が異なり、スツールがない状態だと体が沈み込むくらいずっぽりと座り込めて、スツールがある状態だと背中を預けて寄っかかるような感覚で使える

 個人的にそのアイディアに驚かされたのは「ゲーミングイージーチェア」だ。一見するとリラックスして座れるパイプ式のチェアなのだが、フレームと座面を繋ぐのは頑強なパイプではなく、ポリエステル製のストラップなのだ。そのため、このチェアに座ると前後左右にかなりの揺れを感じることができる。

 Dilé氏は「リサーチしていると、ゲームを遊ぶ人の多くが操作の時に体を揺らしながら遊んでいる事がわかりました」と語る。「そこで、ゲーム時の体の動きをフィードバックする仕組みをチェアに取り入れてみました。ポイントは、このように見ただけで仕組みがわかるローテク部分です。あえてローテクを利用する事で、人間の身体も一緒に動くように作られているので、健康にもいい作りになっています」。

 椅子をストラップで支える技術はイケアが特許を取っており、椅子全体は軽く、動かしやすい仕組みが取り入れられているという。またDilé氏は「ゲーマーの人たちの要望を反映して改良もしているので、かなり扱いやすくなっています」とした。

 本製品の価格は14,990円。このような体感のチェアをメカニカルに再現しようとすると、かなり高額な商品になるだろうが、Dilé氏がローテクと呼ぶこの簡素な仕組みなら妥当な価格設定と言える。リビングなどでレースゲームを遊ぶ場合、特に「マリオカート」のようなみんなでワイワイ遊ぶタイプのゲームで使えばかなり盛り上がりそうなアイテムだ。

パイプと座椅子で構成されているような形状の「ゲーミングイージーチェア」

パイプと椅子とがストラップで繋がっており、前後左右に身体を振る事で揺らす事ができる

ゲームをしない時でもゆったり座って体を揺らしながらリラックスすることも可能

 イケアらしい見た目の暖かさと実用性の高さも感じられるのが収納家具の「バスケット」だ。黄色の取っ手が付属しており、手軽に持ち運べる。製品はフェルト製で、バスケット天面には簡単に着脱できる蓋がついている。側面には切り欠けがあり、充電中の機器などのケーブル類が出せるような配慮もある。

 そして本製品の取っ手は、ロックを外して逆向きに付け直すことで、簡単にスタンドに変形する。バスケットを、高さのある状態で設置できるようになるというわけだ。こういう1つの部品が複数の用途をこなすギミックは、かなりイケア製品らしいアイデアであり、ゲーマーも好きそうなギミックと感じてしまった。

黄色い取っ手のついた「バスケット」。ゲーム機やタブレットを収納してもフェルト素材のため、収納したゲーム機などが傷つかない

取っ手はロックを外して、組み直すことができる

逆向きに組み直すとスタンドになるというステキなギミックを備える。これはかわいすぎる

 最後に紹介してもらったのが、ロッカーのような形状の「ゲーミングステーション」だ。簡単に言ってしまえば、扉のついたゲーム環境の収納棚のような物で、筆者の知人宅でも同じような仕掛けを建築時に組み込んでいるのを見た事があるが、それをどこのご家庭でも後付けで比較的簡単に導入できるようにした製品となる。

 ゲームを遊ぶ時には扉を開き、椅子を引き出して、折り畳んだテーブルを展開して利用する。スペースに限りがあるので椅子の種類などは限られるものの、ゲーミング環境をまるごと収納するという大胆な製品である。秘密基地感もあり、まさに自分だけの空間が彩れる。

 内部の構造はシンプルなPC用デスクが組み込まれおり、ディスプレイを置くスペースに加え、小物などを置く棚も用意されている。足元にはコンソール機やPC本体を設置できる突き出しが取り付けられており、床に直接置かずに利用できるのがとても印象的だ。またステーションの背板部分はメッシュ素材で、通気性にも優れるという。

 この浮いた場所に置ける設計については、床から離したことで、掃除がしやすくなるため衛生面にも配慮しているのだという。リビングに置くことを意識したからこその発想は、イケアらしさが伝わってくる。

 本製品は、「ゲームをしない時は全部しまっておきたいが、ゲームをやる時はしまっていた物を全て開放することで、ゲームを遊ぶ意識を高めたい」というニースに応えたものになる。スマートな解決策をイケアが提供したいと考えたと、コンセプトについて説明してくれた。

ロッカーのような見た目の「ゲーミングステーション」

観音開きで扉を開くと、中からゲーミングパソコン環境が出現する。デスクトップPCが置かれてる棚は左右どちらにも取り付けが可能だという

ドアはポリエステル製で内部の棚にはオブジェクトを飾ったり、LEDで装飾も可能

 今回の「BRÄNNBOLL/ブレンボール ゲーミングコレクション」で大事にしたことについて、Dilé氏は、「まずはその見た目が美しいこと、それが生活の中に溶け込むこと。ゲームをやっていてもやっていなくても、生活の中に溶け込みやすいというところをデザインとして大事にしています」と説明してくれた。

 イケアブースでは、ほかの「BRÄNNBOLL/ブレンボール ゲーミングコレクション」も見ることができる。どれも、各単体で見てもリビングに最適な家具として存在感があるが、全てがゲームをプレイすることを意識しており、一緒に使うとさらにその魅力や便利さが感じられる、イケアのテイストが満載のコレクションになっていると感じられた。イケアブースに来た際には是非これらコンセプトを堪能してみてほしい。

「シェルフユニットキャスター付き」は側面に自由に配置できるユニットを複数装備。ゴム製なのでゲーム機などを固定できるキャスターになる。キャスター内部にXboxやPS5など据え置き型のゲーム機を入れてキャスターで運ぶといった使い方も可能で、ユニット上部にはお菓子や飲み物など、ゲームに必要な物を載せておくこともできる

人の顔型のVRヘッドセット置き。内部のLEDが点灯するので、インテリアとしてもオシャレな上に、価格も3,499円と個人的にはかなりほしい一品だ

このチェアも「BRÄNNBOLL/ブレンボール ゲーミングコレクション」の1つで「ゲーミングラウンジチェア」という椅子だ。一見するとゲーミング感はないのだが……

足が疲れた時などに足を伸ばせるように形状が変化して足置き付きの椅子にチェンジするのだ!

前面にのみキャスターを備えており、移動したい時は後ろを浮かせば簡単に部屋中を動かせるというユニークなアイディアが盛り込まれている

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