2024年10月から、最低賃金が「1004円→1055円」に!? 年収を「130万円」に抑えるなら、働き控えする必要はあるの?“賃上げの影響”を解説

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2024年10月から全国の地域別最低賃金が改定され、47都道府県で一律50円引き上げられる見込みです。多くの人が賃金上昇を歓迎する一方で、パートで収入を得ながら配偶者の社会保険の扶養に入っている人などは、「働く時間を調整しないといけない……」と考えるかもしれません。本記事では賃上げの影響や今後の動向について紹介します。

最低賃金が一律50円上昇、最高は東京で1163円、最低は秋田で951円

2023年の最低賃金の全国加重平均額は1004円でしたが、2024年は一律で50円引き上げられることとなります。厚生労働省が取りまとめた都道府県労働局設置の地方最低賃金審議会の答申によると、徳島県の84円増など一律50円の目安額を上回る改定を予定している地域もあり、全国加重平均額は51円増の1055円となります。
この金額は全国平均ですので、地域によって最低賃金に差があります。2023年度で最も高いのは東京の1113円で、最も低いのは岩手の893円でした。全体的に東側に位置する都道府県のほうが高い傾向にあります。例えば福岡は九州の中では最も高い941円となっていますが、関東・東海圏にはこれを超える都道府県も多いです。
 

年収条件が130万円以下なら働き控えを考える必要はほとんどない

現在、社会保険の扶養に入っている人で、働く時間を抑えないといけないのかと気になる人もいるかもしれませんが、結論からいえばそれほど気にする必要はありません。
社会保険の扶養に入る年収の条件を130万円と仮定します。賃金が1000円だとすると、年間130万円を得るには週換算(1ヶ月を4.5週で計算)で約24時間の労働時間です。賃金が1050円にアップしたとしても、週換算の労働時間は約23時間ですので、ほとんど気にする必要はなさそうです。
【働く時間の一例】 社会保険料控除の年収条件を130万円以下とする
 

(1)賃金が1000円の場合

130万円÷1000円/時間=1300時間/年(1年間で働く時間)
1300時間÷12ヶ月≒108時間/月(1ヶ月で働く時間)
108÷4.5=24/週(1週間で働く時間)

(2)賃金が1050円の場合

130万円÷1050円/時間≒1238時間/年
1300時間÷12ヶ月≒103時間/月
103÷4.5≒23/週

今まで130万円の壁だった人が106万円の壁に変わることも

先ほどは、扶養の条件を130万円以下で考えましたが、2024年10月から短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用が図表1の通り拡大されます。これはいわゆる「106万円の壁」と言われるものです。
仮に106円が年収の基準となる場合、週換算の時間は約19時間となりますので、賃金が50円増えるよりも影響は大きくなります。もし、勤めている会社が50~100人程度の規模であれば念のため確認したほうが良いかもしれません。
図表1


日本年金機構 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内から筆者作成
以下の条件を満たした場合、非正規雇用労働者でも社会保険の加入義務が生じます。

・週の所定労働時間が20時間以上
・所定内賃金が月額8万8000円(年収換算で約106万円)以上
・2ヶ月を超える雇用の見込みがある
・学生ではない

社会保険に加入した場合、将来厚生年金分が上乗せされることになりますが、現在の手取りが減る可能性があります。ただし、手取り収入を減らさない取り組みをしている企業に対して国の助成金が出る場合もありますので、実際の手取りが変わるのかは勤務先に確認してください。
最低賃金や社会保険のルールは変わることがありますので、最新の情報をチェックしておくのが良いかもしれません。
 

出典

厚生労働省 令和6年度地域別最低賃金額改定の目安について
厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧
厚生労働省 全ての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました
執筆者:御手洗康之
CFP、行政書士