(※写真はイメージです/PIXTA)

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現代を生きる日本人は、約2割が自立した状態で「100歳」を迎えます。それは裏を返せば残り8割は、誰かの助けを必要とする状態で100歳を迎えることを意味します。しかも、これから100歳を超えて生きる人の割合は増えると予想されています。では、この「超寿命化」の日本で健康に生きるためには、どのような生活を心がけるべきなのでしょうか。本記事では老年心理学者の権藤恭之氏による著書『100歳は世界をどう見ているのか』(ポプラ社)から一部抜粋して、健康長寿の秘訣についてご紹介します。

ピンピンコロリにこだわらない

100歳の人がどのような生活をして、どのような心理状態になるかを調査した結果、8割は自立していない状態ですが、必ずしも不幸だとは感じていないことがわかりました。

では私たちは「人生100年時代」あるいは「人生110年時代」をどのように生きればよいでしょうか。現代の日本は超寿命を達成することが可能な社会で、今後さらに超寿命化は進みます。

自立した状態で100歳を迎える人は今は2割ですが、今後環境が変わることで4割ぐらいにまで拡大できるかもしれないと思います。でもそうなっても残りの6割は他者の助けが必要な状態で100歳を迎えることになります。

このような状況を踏まえて私たちにできることは何でしょうか。私はピンピンコロリ一辺倒の一本足打法ではない、二本足打法を心がけるのがよいのではないかと思っています。個人の努力でピンピンを目指す戦略と、それがうまくいかなかった場合のことを想定した別の生き方の準備です。

ピンピンコロリを目指すためにはすでに多くの研究があり、それらの文献にあたってもらいたいのですが、百寿者研究の結果から少し紹介しましょう。

「飲酒・喫煙」は長生きにどう影響する?

お酒に関しては、よい効果があるとする研究と悪い効果があるとする研究に分かれるなど諸説ありますが、東京百寿者研究(2000〜2003年調査)の結果は興味深いものでした。

細かい年齢までは確かめられませんが、この研究では参加者に「過去の飲酒」「喫煙習慣の有無」を尋ねています。

比較対象として、1976年に東京都老人総合研究所が小金井市で同世代を対象に実施した調査の飲酒喫煙率と比べたところ、飲酒に関しては、男女とも小金井市の結果とほぼ同じ割合でしたが、喫煙に関しては割合に違いが見られました。

1976年には男性約8割、女性の約3割に喫煙経験がありましたが、百寿者は男性約4割、女性約1割といずれも喫煙者の割合が半分以下だったのです。

さらに、百寿者の過去の飲酒と喫煙経験と自立の関係を分析すると、喫煙経験がある人はない人に比べて自立度が低かったのです。つまり、たばこを吸っていても長生きはできるかもしれませんが、健康に長生きできない可能性が高くなるのです。

この結果を見て、お酒はいいのかと思い、私はお酒肯定派になりました。ただ、少量のお酒肯定派でいればよかったのですが、大肯定派になってしまい反省しています。この原稿を書いている今、私は必死で減酒とダイエットに取り組んでいます。

10年前に1年断酒したことがありますが、その時の体調はすこぶるよかったです。今となると、自分自身で分析したこの結果を少しばかり恨んでいます。自己修練は難しいものです。

百寿者は「誠実性」が高い

なかなか難しいものですが、私たちの研究では自己修練のできやすい人が長寿であるという結果が出ています。人の性格傾向の調べ方はいろいろありますが、最近は「ビッグ5」という、人間の性格を開放性、誠実性、外向性、協調性、神経症的傾向(情緒安定性)の5つの側面からとらえる方法が最もよく使われます。

その中で、自己修練と関連するのは「誠実性」と呼ばれる側面です。百寿者の人たちの性格を調べたら、この誠実性が高いことがわかりました。誠実性の高さは、責任感の高さや勤勉さを意味します。簡単にいえば、責任を持って物事をきっちり計画的にこなせるかどうか、まさに自己修練ができるかどうかを測る側面です。

そのような性格傾向が長生きと関連するという結果は、私たちが行った別の研究でも示されていますし、世界的にも多くの研究で支持されています。誠実性の高い人は、健康にとって害になるようなことをしませんし、健康的な行動を自然と維持できます。自然とそのようにできる人は、結果として長寿になるのです。

老年心理学者
権藤 恭之