by Oliver Hull

土星の周囲にはほとんどが氷でできている環(リング)があることは有名ですが、土星以外でも木星や天王星、海王星、一部の小惑星などに環があることがわかっています。新たな研究では、「約4億8830万年〜約4億4370万年前のオルドビス紀の地球にも環があった」という仮説が提唱されました。

Evidence suggesting that earth had a ring in the Ordovician - ScienceDirect

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0012821X24004230



Earth may have had a ring system 466 million years ago - Science

https://www.monash.edu/science/news-events/news/current/earth-may-have-had-a-ring-system-466-million-years-ago

Earth once wore a Saturn-like ring, study of ancient craters suggests | Live Science

https://www.livescience.com/space/earth-once-wore-a-saturn-like-ring-study-of-ancient-craters-suggests

Earth May Have Once Had a Ring That Slowly Fell From The Sky : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/earth-may-have-once-had-a-ring-that-slowly-fell-from-the-sky

オルドビス紀は地球上の生物の多様性が進んだ時代であり、オウムガイなどの軟体動物や三葉虫のような節足動物、顎を持つ魚類などが登場しました。その一方で、地球規模の寒冷化が起きた時代でもあり、オルドビス紀とそれに続くシルル紀との境目であるO-S境界には大量絶滅が発生しました。

オルドビス紀に起きた特徴的な出来事として、「隕石(いんせき)の衝突が急増した」ということが知られています。そこで、オーストラリアのモナシュ大学で惑星科学を研究しているアンドリュー・トムキンス教授らの研究チームは、オルドビス紀に地球へ衝突した21個のクレーターの痕跡を分析しました。

その結果、21個のクレーターはいずれも赤道から緯度30度以内の大陸に衝突していることが判明しました。当時の地球では、大陸のうち30%が赤道から緯度30度以内に位置していましたが、残る70%の大陸には隕石が衝突していませんでした。これは、隕石の衝突がランダムであるとすれば、「3面のサイコロを21回振って全部同じ目が出る」ほどの偏りです。



研究チームは「隕石衝突の急増と偏り」「地球の寒冷化」の両方を説明できる仮説として、「オルドビス紀の地球には小惑星の残骸からなる環があった」というものを提唱しました。環ができたのは約4億6600万年前頃だとみられており、大きな小惑星が地球に接近しすぎてロッシュ限界を超え、潮汐(ちょうせき)力によって引き裂かれてバラバラになったものが環になったと研究チームは考えています。

トムキンス氏は、「数百〜数千万年もの間、この環の一部が徐々に地球へ落下していき、地質学的記録で観察される隕石衝突の急増を生み出しました。また、この時代の堆積岩の層には、非常に多くの隕石の破片が含まれていることもわかっています」とコメントしました。

この環は単に地球へ隕石を落下させるだけでなく、太陽光を遮ることで地球表面に影を落として深刻な寒冷化をもたらした可能性もあります。また、環がもたらした急速な気候変動が、オルドビス紀の地球上に生息していた生物に進化の必要性をもたらし、結果として進化を加速させた可能性もあるとのこと。

トムキンス氏は、「地球の環が気温に影響を与えた可能性があるというアイデアは、地球外イベントが地球の気候をどのように形成してきたのかに関する私たちの理解に、新しい複雑なレイヤーを追加することになります」と述べました。



by Oliver Hull

さらに、地球の周囲に環ができたことで寒冷化が発生したというアイデアは、暑すぎる惑星をテラフォーミングするヒントになるかもしれません。トムキンス氏は、大きな小惑星を金星の軌道に近づけることで人工的に「金星の環」を作り、金星を冷却できるかもしれないと主張しました。