物理学者がゴッホの有名な絵画に驚くほど正確に物理現象が描かれていることを発見
フィンセント・ファン・ゴッホの代表作の1つ「星月夜」を流体力学の観点から調べた研究により、空に描かれた渦が物理法則に正しく従っていることが明らかになりました。
Hidden turbulence in van Gogh's The Starry Night | Physics of Fluids | AIP Publishing
https://pubs.aip.org/aip/pof/article-abstract/36/9/095140/3312767/Hidden-turbulence-in-van-Gogh-s-The-Starry-Night
This Famous Van Gogh Painting Features Astonishingly Accurate Physics : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/this-famous-van-gogh-painting-features-astonishingly-accurate-physics
Beneath the brushstrokes, van Gogh’s sky is a | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/1057862
厦門(あもい)大学の海洋環境科学者であるインシャン・マー氏らは、「星月夜」に描かれた14の主要な渦を調べ、ゴッホの筆跡が「エネルギーカスケード」と呼ばれる現象に合致しているかどうかを確かめました。エネルギーカスケードは大規模な乱流から小規模な乱流へエネルギーが遷移する現象のことで、大気中でも見られるものです。
マー氏らが高解像度のデジタル画像で筆跡を分析し、さらに絵の具の色を相対的な明るさとして捉えるなどした結果、ゴッホが描いた渦はエネルギーカスケードを説明する「コルモゴロフ則」という理論の要件を満たしていることが判明しました。
渦がコルモゴロフ則の要件を満たしていることは過去の研究でも明らかになっていましたが、今回は細かな筆跡を調べることで、オーストラリアの数学者のジョージ・バチェラーが1959年に定義したスカラーのパワースペクトルとも一致することがわかりました。バチェラーは、乱流のスケール成分であるスカラー、つまり異なる大きさの渦は、その大きさに対応したパワースペクトルを示すはずであると論じていました。
マー氏らは「我々の分析結果は、ゴッホが大気の動きを非常に注意深く観察していたことを示唆しており、渦や渦巻きの大きさだけでなく、それらの相対的な距離や強さも、乱流を支配する物理法則に従っていることがわかりました。ゴッホが乱気流を正確に表現したのは雲や大気の動きを研究した結果かもしれませんし、生得的な感覚からかもしれません。いずれにせよ、ゴッホの自然物理学に対する理解は、我々が思っている以上に深かった可能性があります」と述べました。