大河原克行のNewsInsight 第325回 日本の「働く」を変える? リコーが開発した未来の会議室「PRISM」、秋葉原で実証実験
NTT都市開発は、シェアスペース事業「LIFORK(リフォーク)」を展開している。このほど、東京・秋葉原のLIFORK秋葉原において、「集まることの価値」をさらに高めるオフィス空間を新たに提供するために新たなシェあオフィスを開設。さらにリコーが開発した次世代会議空間「RICOH PRISM(リコー プリズム)」を同施設内に導入し、新たな利用提案を進めている。RICOH PRISM が日常的に利用できる形で一般ユーザーにサービスを提供するのは今回が初めてのことになる。すでに予約受付を開始しており、2024年10月1日から利用できる。LIFORK秋葉原を訪れ、新たなオフィス空間の狙いと、RICOH PRISMの具体的な活用方法を体験してきた。
秋葉原UDXにあるLIFORK秋葉原
○新しい時代の「出社」の動きに対応
NTT都市開発の「LIFORK」は、「はたらくって、たのしい」をコンセプトに、自分らしいワークスタイル&ライフスタイルの実現をサポートするシェアスペース事業と位置づけている。
LIFORKは、「Work for a better Life」をもとに、LIFEとWORKを組み合わせた造語だ。東京・秋葉原に2拠点のほか、大手町、原宿、南青山に加えて、名古屋にも展開。それぞれのシェアスペースに、「サブカルチャーの街」、「歴史のある建物」、「グリーンのなか」、「公園を眺めながら」といったコンセプトを持たせているのも特徴だ。サービスは、シェアオフィスと、コワーキングスペース、レンタルラウンジ/レンタルルームで構成しており、用途や目的に応じて選択することができる。シェアオフィスは月額契約であり、コワーキングスペースはNTTコミュニケーションズが提供するコワーキング検索/予約サービスのdroppinに登録することで利用できる。レンタルラウンジ/レンタルルームはスペース会員の登録を行うことで誰でも利用できる仕組みとなっている。イベントや懇親会のほか、撮影や実証実験の場としてLIFORKを活用するケースも増えているという。
今回、取材に訪れたのは、秋葉原UDXの4階にあるLIFORK秋葉原だ。2018年4月に開設。1〜8人用の半個室タイプのシェアオフィスを43室、8人まで利用できるレンタルルームのほか、コワーキングスペースを設置している。
秋葉原UDXは、NTT都市開発が所有している建物で、これまでは企業型保育園として利用していたスペースをLIFORK秋葉原として拡張。10人用および12人用の完全個室、窓ありのシェアオフィスを3部屋新設した。
新たなシェアオフィスは完全個室となっている。ここは10人用の部屋で月額70万円
こちらは12人用の部屋。月額は同じく70万円
電車が見える解放感がある広い窓を採用している
椅子にもこだわっており、フットレストも装備。疲れにくい
調色ができる照明。午前中は青白い明るい光にし、夕方は暖色系に変わる。外の色温度にあわせているため、屋内でも体内リズムが整うという
パネルで調光や調色を自由に変更できる
天窓のような照明。これも時間によって色が変化する
オンライン会議用の個室ブースを3つ設置
ブース名は、「MANGA」、「ANIME」、「GAME」と秋葉原を意識しているものにしている
ブースごとに椅子を変えている。自分にあったものを選べる
共有スペースにはコミュニケーションボードを設置。簡単な会議が可能だ
シェアオフィスの社員が利用できるパントリー。秋葉原UDXの1階に入居する福島屋のドリップコーヒーも楽しめる。ドリップの時間を使って社員同士の会話を生む狙いもある
レコード、カセット、CD、ラジオが利用できるマルチプレーヤーを設置。BGMを流す目的よりも、社員が好きな音楽を持ってきて楽しめるようにしている
ゲームや電車をコンセプトにした玩具を設置して遊び心を演出
NTT都市開発 ビル・商業事業本部商業事業部オペレーショナルアセット担当の小川由夏氏は、「これまでのLIFORK秋葉原のシェアオフィスは、半個室空間の構造となっていたが、10人程度のシェアオフィスへの問い合わせが増加していることから、それにあわせた部屋サイズにした。秋葉原ではスタートアップ企業の利用が多いため、より小規模の部屋が中心だったが、出社が戻り、席が足りなくなった大手企業や、プロジェクト単位でシェアオフィスを利用したいという用途で、10人程度の部屋に人気が高まっている」とし、「開業18年を迎える秋葉原UDXが都内の競合ビルと負けないために、オフィスワーカーの満足度向上を目指すとともに、育成用途を目的としている秋葉原UDX4階において、より企業の発展につながる場に進化させることを目指した。さらに、出社回帰の動きに伴い、円滑なコミュニケーションを図れる場を実現するという出社の目的意義を実現する場を目指す狙いもある」と語る。
NTT都市開発 ビル・商業事業本部商業事業部オペレーショナルアセット担当の小川由夏氏
○あまり嬉しくなかった会議空間を、喜べる場にできるか
一方、LIFORK秋葉原に新たに設置するRICOH PRISMは、チームの創造力を高めるための次世代会議空間と位置づけており、チームビルディングや研修プログラムとして活用したり、アイデアを創出するための会議に活用できたりする。
プロジェクターを使用して、デバイスの画面を4つの壁面に360度自由に投影することができ、複数の画面を同時に共有して、生産性を高めながら、会議を進行。オートファシリテーション機能に加えて、映像や光、音、触感といった五感に働きかける様々な空間演出を通じて、高い没入感を実現した、効果的な会議運営を支援する。また、防音性の高い個室となっているため、内容が外部に漏れることがなく、入室は一か所からの単独導線としているため、セキュリティ面でも安心できるという。
リコー 未来デザインセンター はたらく歓び価値創造室価値創造グループ コンテンツディレクターの花谷愼也氏は、「リコーでは、『“はたらく”に歓びを』ビジョンに掲げており、それを具現化する取り組みのひとつがRICOH PRISMである。創造性を発揮するのは人であり、創造性を生む場所が会議である。RICOH PRISMでは、アイデア出しのように、会議の利用シーンを限定して適切な会議を実施する場面限定誘導会議や、未来を予測していまを修正するためのフィードフォワード会議に最適な場を目指している」とする。
リコー 未来デザインセンター はたらく歓び価値創造室価値創造グループ コンテンツディレクターの花谷愼也氏
用途に応じて、リコーが開発した空間アプリケーションを切り替えることで、会議の内容にあわせた進行や、会議の効果を最大化できるようにしているのも、RICOH PRISMの特徴だ。
先に触れたアイデア発想やチームビルディングのほか、マインドフルネス、アート体験などにも利用でき、「LIFORK秋葉原が目指す『チーム力や創造力を高めるコミュニケーションが活発化する場所』、『集まることの価値』をさらに高めるオフィス空間を提供していくことができる」としている。
新たなシェアオフィスに隣接する形でRICOH PRISMが設置されている
RICOH PRISMの様子。天井部にはプロジェクターやスピーカー、カメラなどが設置されている
4面にプロジェクターで資料などの映像が投影される
○「RICOH PRISM」の5つのアプリ、注目は「AI壁打ち」
RICOH PRISMは、2020年11月に、リコーが東京都大田区の本社近くに設置した次世代ワークプレイス「3L(サンエル)」に導入。東京・紀尾井町の紀尾井カンファレンスや東京・品川の共創活動拠点「RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE TOKYO」、大阪・本町の「RICOH 本町橋 Work Base」においても導入した経緯がある。これまでに、社内外のプランナーやクリエイターなどのチームにより、1000回以上の活用実績があり、高い没入感によって、チームビルディングやアイデア発想を促進するといった点での効果に評価が集まっている。また、これらの利用者からのフィードバックをもとに、アプリケーションのユーザビリティ向上や新規開発を行ってきた。
これまではリコーの施設内にあったため、試験的な活用やデモストレーション用途での活用に留まっていたが、LIFORK秋葉原への設置は、実証実験と位置づけながらも、一般企業などが日常的に利用できる仕組みとして初めて提供するものになる。まずは1年間を予定。アップデートしながら、長期間使用できるように検討していくという。
LIFORK秋葉原の「RICOH PRISM」では、5種のアプリケーションを提供する。
複数の画面を同時に共有して、チームの生産性を高める「HOME(SHIRO)」、生成AIによる3Dキャラクターとの対話を通じてアイデアを掘り下げて、整理、ブラッシュアップする「KABEUCHI」、完全自動ファシリテーションに従って、音声で空間に直接アイデアを入力する新感覚のブレインストーミング体験ができる「BRAIN WALL」、没入空間を活用したアイスブレイクを通じて、チームのコミュニケーション能力を診断できる「PERSONA」、一期一会の花々と言葉が織りなす幻想的な瞑想体験(マインドフルネス)ができる「REFLECT」である。
テーブルに設置されたタブレット端末から簡単に設定やアプリの操作ができ、スマホを利用した音声での入力や対話も可能だ。だが、4台の大型プロジェクターを使用しているため、会議室としては、ファンの騒音が少し気になる。
注目されるアプリのひとつが、「KABEUCHI」である。
AIを活用し、AIエージェントと対話をしながら、アイデアを深堀りできる。1人でのアイデア出しも、複数人が参加した検討会議でも利用できる。スマホを使いながら、音声でテキストを入力し、AIエージェントと対話。まずは、アイデアを入力し、いつかの質問に答えながら、アイデアの方向性を絞り込む。たとえば、アイデアを通じてどんな体験や価値をユーザーに提供したいのか、アイデアを使ってくれるのは誰か、独自の価値はなにか、開発や実装に必要な技術や資金、人材はなにか、どんなリスクを想定しているか、アイデアをどう拡大するかなどの質問に答える。わからないところはわからないと答えればいい。
これらのアイデアの基本情報をもとに、自由な対話を通じて、アイデアの深堀りを行う。議論に入ると、エミリーとルーカスの2人のAIエージェントが登場。それぞれにキャラクターとしての性格が設定されており、エミリーは優しくサポートするのに対して、ルーカスは厳しい意見をいいながら、アイデアをまとめていく。たとえば、ルーカスは、「独自性が見えない」などと厳しく指摘しながら、自らもアイデアを出す。やりとりの内容は、LINEのように画面に表示され、確認しながら対話を進めることができる。さらに、アイデアや意見に行き詰ったら、その部分をAIエージェントに考えてもらうことも可能だ。どらちのAIエージェントに意見を多く求めているかといった傾向や、沈黙の時間がどれぐらいあったかなど、会議の状況も把握できる。
現在、GPT-4oを利用しており、今後、AIエージェントのキャラクターの設定を増やしていくことを検討しているほか、有名経営者の言動やノウハウを反映したAIエージェントの設定も可能になると考えている。
KABEUCHIではAIエージェントと会話しながらアイデアをまとめることができる
AIエージェントがサポートして効率的にアイデアを醸成し、表示してくれる
まずはアイデアの入力から開始する
アイデアの基本情報を入力した様子
エミリーは優しい言葉をかけながらアイデアの醸成を手伝ってくれる
一方で、ルーカスは、アイデアに対して厳しい指摘をしながらサポートしてくれる
過去のアイデアを実践した際の成功率の情報なども表示。これもヒントにできる
やりとりした内容はLINEのように表示される
壁打ちを行った結果、アイデアはかなり詳細なものにブラッシュアップできた
約25分間の会議で、アイデアは3回書き換えて、ブラッシュアップした
ルーカスは、会議が終わると拍手をしながら、上から目線で送り出してくれる。ただ利用者からはルーカスによるサポートの方が、評価が高いという
タッチ操作により簡単にアプリケーションを切り替えることができる
スマホを利用してAIと対話することが可能だ
RICOH PRISMは、LIFORKのスペース会員であれば、1時間5500円で利用できる。またシェアオフィスの入居者は割引価格で利用できる。
NTT都市開発 ビル・商業事業本部商業事業部オペレーショナルアセット担当の小川由夏氏は、「LIFORK秋葉原が目指す空間づくりに、RICOH PRISMが合致すると判断した。これまでにないコンセプトの会議室を利用してもらえる機会を創出することで、秋葉原UDX全体の価値向上、ワーカーの満足度を高めるという点での効果を期待している。秋葉原UDXに入居する企業にとっての付加価値のひとつにも位置づけたい」としている。
RICOH PRISMは、利用ノウハウを蓄積し、それをもとにアプリケーションの強化、拡大を図るフェーズにあるのは明らかだ。多くの企業や人が利用するLIFORK秋葉原への設置は、RICOH PRISMの進化にも大きく貢献しそうだ。
○新しい時代の「出社」の動きに対応
NTT都市開発の「LIFORK」は、「はたらくって、たのしい」をコンセプトに、自分らしいワークスタイル&ライフスタイルの実現をサポートするシェアスペース事業と位置づけている。
LIFORKは、「Work for a better Life」をもとに、LIFEとWORKを組み合わせた造語だ。東京・秋葉原に2拠点のほか、大手町、原宿、南青山に加えて、名古屋にも展開。それぞれのシェアスペースに、「サブカルチャーの街」、「歴史のある建物」、「グリーンのなか」、「公園を眺めながら」といったコンセプトを持たせているのも特徴だ。サービスは、シェアオフィスと、コワーキングスペース、レンタルラウンジ/レンタルルームで構成しており、用途や目的に応じて選択することができる。シェアオフィスは月額契約であり、コワーキングスペースはNTTコミュニケーションズが提供するコワーキング検索/予約サービスのdroppinに登録することで利用できる。レンタルラウンジ/レンタルルームはスペース会員の登録を行うことで誰でも利用できる仕組みとなっている。イベントや懇親会のほか、撮影や実証実験の場としてLIFORKを活用するケースも増えているという。
今回、取材に訪れたのは、秋葉原UDXの4階にあるLIFORK秋葉原だ。2018年4月に開設。1〜8人用の半個室タイプのシェアオフィスを43室、8人まで利用できるレンタルルームのほか、コワーキングスペースを設置している。
秋葉原UDXは、NTT都市開発が所有している建物で、これまでは企業型保育園として利用していたスペースをLIFORK秋葉原として拡張。10人用および12人用の完全個室、窓ありのシェアオフィスを3部屋新設した。
新たなシェアオフィスは完全個室となっている。ここは10人用の部屋で月額70万円
こちらは12人用の部屋。月額は同じく70万円
電車が見える解放感がある広い窓を採用している
椅子にもこだわっており、フットレストも装備。疲れにくい
調色ができる照明。午前中は青白い明るい光にし、夕方は暖色系に変わる。外の色温度にあわせているため、屋内でも体内リズムが整うという
パネルで調光や調色を自由に変更できる
天窓のような照明。これも時間によって色が変化する
オンライン会議用の個室ブースを3つ設置
ブース名は、「MANGA」、「ANIME」、「GAME」と秋葉原を意識しているものにしている
ブースごとに椅子を変えている。自分にあったものを選べる
共有スペースにはコミュニケーションボードを設置。簡単な会議が可能だ
シェアオフィスの社員が利用できるパントリー。秋葉原UDXの1階に入居する福島屋のドリップコーヒーも楽しめる。ドリップの時間を使って社員同士の会話を生む狙いもある
レコード、カセット、CD、ラジオが利用できるマルチプレーヤーを設置。BGMを流す目的よりも、社員が好きな音楽を持ってきて楽しめるようにしている
ゲームや電車をコンセプトにした玩具を設置して遊び心を演出
NTT都市開発 ビル・商業事業本部商業事業部オペレーショナルアセット担当の小川由夏氏は、「これまでのLIFORK秋葉原のシェアオフィスは、半個室空間の構造となっていたが、10人程度のシェアオフィスへの問い合わせが増加していることから、それにあわせた部屋サイズにした。秋葉原ではスタートアップ企業の利用が多いため、より小規模の部屋が中心だったが、出社が戻り、席が足りなくなった大手企業や、プロジェクト単位でシェアオフィスを利用したいという用途で、10人程度の部屋に人気が高まっている」とし、「開業18年を迎える秋葉原UDXが都内の競合ビルと負けないために、オフィスワーカーの満足度向上を目指すとともに、育成用途を目的としている秋葉原UDX4階において、より企業の発展につながる場に進化させることを目指した。さらに、出社回帰の動きに伴い、円滑なコミュニケーションを図れる場を実現するという出社の目的意義を実現する場を目指す狙いもある」と語る。
NTT都市開発 ビル・商業事業本部商業事業部オペレーショナルアセット担当の小川由夏氏
○あまり嬉しくなかった会議空間を、喜べる場にできるか
一方、LIFORK秋葉原に新たに設置するRICOH PRISMは、チームの創造力を高めるための次世代会議空間と位置づけており、チームビルディングや研修プログラムとして活用したり、アイデアを創出するための会議に活用できたりする。
プロジェクターを使用して、デバイスの画面を4つの壁面に360度自由に投影することができ、複数の画面を同時に共有して、生産性を高めながら、会議を進行。オートファシリテーション機能に加えて、映像や光、音、触感といった五感に働きかける様々な空間演出を通じて、高い没入感を実現した、効果的な会議運営を支援する。また、防音性の高い個室となっているため、内容が外部に漏れることがなく、入室は一か所からの単独導線としているため、セキュリティ面でも安心できるという。
リコー 未来デザインセンター はたらく歓び価値創造室価値創造グループ コンテンツディレクターの花谷愼也氏は、「リコーでは、『“はたらく”に歓びを』ビジョンに掲げており、それを具現化する取り組みのひとつがRICOH PRISMである。創造性を発揮するのは人であり、創造性を生む場所が会議である。RICOH PRISMでは、アイデア出しのように、会議の利用シーンを限定して適切な会議を実施する場面限定誘導会議や、未来を予測していまを修正するためのフィードフォワード会議に最適な場を目指している」とする。
リコー 未来デザインセンター はたらく歓び価値創造室価値創造グループ コンテンツディレクターの花谷愼也氏
用途に応じて、リコーが開発した空間アプリケーションを切り替えることで、会議の内容にあわせた進行や、会議の効果を最大化できるようにしているのも、RICOH PRISMの特徴だ。
先に触れたアイデア発想やチームビルディングのほか、マインドフルネス、アート体験などにも利用でき、「LIFORK秋葉原が目指す『チーム力や創造力を高めるコミュニケーションが活発化する場所』、『集まることの価値』をさらに高めるオフィス空間を提供していくことができる」としている。
新たなシェアオフィスに隣接する形でRICOH PRISMが設置されている
RICOH PRISMの様子。天井部にはプロジェクターやスピーカー、カメラなどが設置されている
4面にプロジェクターで資料などの映像が投影される
○「RICOH PRISM」の5つのアプリ、注目は「AI壁打ち」
RICOH PRISMは、2020年11月に、リコーが東京都大田区の本社近くに設置した次世代ワークプレイス「3L(サンエル)」に導入。東京・紀尾井町の紀尾井カンファレンスや東京・品川の共創活動拠点「RICOH BUSINESS INNOVATION LOUNGE TOKYO」、大阪・本町の「RICOH 本町橋 Work Base」においても導入した経緯がある。これまでに、社内外のプランナーやクリエイターなどのチームにより、1000回以上の活用実績があり、高い没入感によって、チームビルディングやアイデア発想を促進するといった点での効果に評価が集まっている。また、これらの利用者からのフィードバックをもとに、アプリケーションのユーザビリティ向上や新規開発を行ってきた。
これまではリコーの施設内にあったため、試験的な活用やデモストレーション用途での活用に留まっていたが、LIFORK秋葉原への設置は、実証実験と位置づけながらも、一般企業などが日常的に利用できる仕組みとして初めて提供するものになる。まずは1年間を予定。アップデートしながら、長期間使用できるように検討していくという。
LIFORK秋葉原の「RICOH PRISM」では、5種のアプリケーションを提供する。
複数の画面を同時に共有して、チームの生産性を高める「HOME(SHIRO)」、生成AIによる3Dキャラクターとの対話を通じてアイデアを掘り下げて、整理、ブラッシュアップする「KABEUCHI」、完全自動ファシリテーションに従って、音声で空間に直接アイデアを入力する新感覚のブレインストーミング体験ができる「BRAIN WALL」、没入空間を活用したアイスブレイクを通じて、チームのコミュニケーション能力を診断できる「PERSONA」、一期一会の花々と言葉が織りなす幻想的な瞑想体験(マインドフルネス)ができる「REFLECT」である。
テーブルに設置されたタブレット端末から簡単に設定やアプリの操作ができ、スマホを利用した音声での入力や対話も可能だ。だが、4台の大型プロジェクターを使用しているため、会議室としては、ファンの騒音が少し気になる。
注目されるアプリのひとつが、「KABEUCHI」である。
AIを活用し、AIエージェントと対話をしながら、アイデアを深堀りできる。1人でのアイデア出しも、複数人が参加した検討会議でも利用できる。スマホを使いながら、音声でテキストを入力し、AIエージェントと対話。まずは、アイデアを入力し、いつかの質問に答えながら、アイデアの方向性を絞り込む。たとえば、アイデアを通じてどんな体験や価値をユーザーに提供したいのか、アイデアを使ってくれるのは誰か、独自の価値はなにか、開発や実装に必要な技術や資金、人材はなにか、どんなリスクを想定しているか、アイデアをどう拡大するかなどの質問に答える。わからないところはわからないと答えればいい。
これらのアイデアの基本情報をもとに、自由な対話を通じて、アイデアの深堀りを行う。議論に入ると、エミリーとルーカスの2人のAIエージェントが登場。それぞれにキャラクターとしての性格が設定されており、エミリーは優しくサポートするのに対して、ルーカスは厳しい意見をいいながら、アイデアをまとめていく。たとえば、ルーカスは、「独自性が見えない」などと厳しく指摘しながら、自らもアイデアを出す。やりとりの内容は、LINEのように画面に表示され、確認しながら対話を進めることができる。さらに、アイデアや意見に行き詰ったら、その部分をAIエージェントに考えてもらうことも可能だ。どらちのAIエージェントに意見を多く求めているかといった傾向や、沈黙の時間がどれぐらいあったかなど、会議の状況も把握できる。
現在、GPT-4oを利用しており、今後、AIエージェントのキャラクターの設定を増やしていくことを検討しているほか、有名経営者の言動やノウハウを反映したAIエージェントの設定も可能になると考えている。
KABEUCHIではAIエージェントと会話しながらアイデアをまとめることができる
AIエージェントがサポートして効率的にアイデアを醸成し、表示してくれる
まずはアイデアの入力から開始する
アイデアの基本情報を入力した様子
エミリーは優しい言葉をかけながらアイデアの醸成を手伝ってくれる
一方で、ルーカスは、アイデアに対して厳しい指摘をしながらサポートしてくれる
過去のアイデアを実践した際の成功率の情報なども表示。これもヒントにできる
やりとりした内容はLINEのように表示される
壁打ちを行った結果、アイデアはかなり詳細なものにブラッシュアップできた
約25分間の会議で、アイデアは3回書き換えて、ブラッシュアップした
ルーカスは、会議が終わると拍手をしながら、上から目線で送り出してくれる。ただ利用者からはルーカスによるサポートの方が、評価が高いという
タッチ操作により簡単にアプリケーションを切り替えることができる
スマホを利用してAIと対話することが可能だ
RICOH PRISMは、LIFORKのスペース会員であれば、1時間5500円で利用できる。またシェアオフィスの入居者は割引価格で利用できる。
NTT都市開発 ビル・商業事業本部商業事業部オペレーショナルアセット担当の小川由夏氏は、「LIFORK秋葉原が目指す空間づくりに、RICOH PRISMが合致すると判断した。これまでにないコンセプトの会議室を利用してもらえる機会を創出することで、秋葉原UDX全体の価値向上、ワーカーの満足度を高めるという点での効果を期待している。秋葉原UDXに入居する企業にとっての付加価値のひとつにも位置づけたい」としている。
RICOH PRISMは、利用ノウハウを蓄積し、それをもとにアプリケーションの強化、拡大を図るフェーズにあるのは明らかだ。多くの企業や人が利用するLIFORK秋葉原への設置は、RICOH PRISMの進化にも大きく貢献しそうだ。