中国戦で課題だったセットプレイから遠藤が先制点を奪う。この1点が大きかった Photo/Getty Images

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各選手が役割をまっとう ポスト大迫は上田で決まり!?

W杯アジア最終予選がはじまり、中国に7-0、バーレーンに5-0で圧勝しました。2試合を見た印象はひと言、日本は強いなです。なにひとつネガティブなところはなく、ポジティブな面が随所に出た2試合でした。

森保一監督は最終予選を迎えて、超攻撃的な3バックを採用しました。5バック気味になることなく、堂安律、三笘薫が攻撃的にプレイすることで相手を押し込めていました。共通理解のもとで各選手がそれぞれの特長を出し、チーム全体から自信が満ち溢れていました。とくに、アタッキングサードのところが格段に成長しているなと感じました。

守備に関しても、ボールをロストしたときの切り替え、囲い込み、集結という意識が高く、すぐに圧力をかけて相手の縦パスに勝負にいけていました。パスを遅らせて前後で挟み込み、奪うことができていました。超攻撃的な3バックは、守備でも攻撃的でした。

中国戦は早い時間にセットプレイから得点できたのが良かったですね。これまでなかなか結果につなが らず、セットプレイは課題となっていました。今後を考えても、セットプレイで得点できたのは大きかったと思います。さらに、前半アディショナ ルタイムに三笘薫が追加点を奪い ました。良い時間の2点目で、試合を左右した得点になりました。後半途中に伊東純也が投入されたとき、サポーターが良い雰囲気で迎えてくれました。チームメイト、ベンチも同じでした。とても印象的 で、みんなが「おかえり」という雰囲気でほっこりしました。

伊東純也が迫力ある縦への突破を見せれば、前田大然は持ち前の鬼プレスを見せました。高井幸大もデビュー戦でしっかりと自分のプレイをしていました。先発した選手も交代で入った選手も、それぞれ役割を果たした中国戦でした。

バーレーン戦の前半はメリハリの あるプレスの前に少し苦労しましたが、三笘薫のクロスから堂安律が決定機を迎えるなど、チャンスは作れていました。この日の堂安律は少し良さを出せていませんでしたが、原因は相手との組み合わせやバランスのところであり、そこは森保一 監督がどうパズルを組み立てていくかです。そういった意味で、交代出場した伊東純也がからんで後半の早い時間に追加点を奪ったのはすごいなと思いました。流れのなかから上田綺世にゴールが生まれたのも大きかったですね。さらに、バーレーン 戦では小川航基も得点しています。ここ数年、前線に関しては大迫勇也に代わる選手を探している状態でしたが、個人的に答えが出たと思っています。

抜群の存在感だった守田 冨安に伊藤……選手層が厚い!

W杯最終予選では、これまで本当に苦労してきました。中国は嫌だなと思っていたら、この結果です。そして、バーレーンも寄せ付けませんでした。相手は0-2になった時点で戦う意欲をほぼ失っていたと思います。もっと得点できた可能性がありました。

なんと言っても、守田英正のパフォーマンスがすごかったです。試合を重ねるごとに、ピッチ上の監督のようになっています。バーレーン戦では自ら2得点です。攻守両面ですごく存在感がありました。

2試合を通じて細谷真大、旗手怜央などがベンチを外れ、冨安健洋、伊藤洋輝がケガで離脱している―。こうした事実に、選手層の分厚さを感じます。森保一監督は毎回難しい判断を迫られているな と思います。中国戦、バーレーン戦は3バックだったため、菅原由勢、中山雄太、望月ヘンリー海輝も出場がありませんでした。

10月のサウジアラビア戦(A)、オーストラリア戦(H)で3バック、4バックのどちらを採用するかわかりませんが、4バックであれば今度は彼らの出番となるでしょう。とくに、望月ヘンリー海輝は代表で一度見たいですね。大型SBが主流のなか、身長があってスケールが大きく、スピードもある。果てしない可能性を感じる選手です。

私は三菱養和SCでプレイしていたころの望月ヘンリー海輝を見たことがあるのですが、ボランチでプレイしていて対人が強かった記憶があります。一歩一歩、階段を上っている感があります。さらに成長し、SB に競争をもたらしてほしいです。

長谷部誠さんのコーチ就任も大きかったと考えます。この決断により、みんな整ったと思います。長く欧州の第一線で活躍してきた長谷部誠コーチの言葉は重く、やはり説得力があります。各方面から信頼されていて、スタッフと選手の潤 滑油にもなれます。代表にとって、これほど頼もしいコーチはいないでしょう。

アジア最終予選全体をみれば、出場枠が増えたことで中堅国のレベルアップが見て取れます。国外 から良い監督を招聘し、良いチーム 作りをすることで確実に力をつけています。オーストラリア、韓国、サウジアラビアなど強豪国が苦戦を強いられています。拮抗した最終予選になることが予想できます。

日本は10月にそのサウジアラビア、オーストラリアと戦います。カギを握る2試合で、連勝したらだいぶW杯が見えてきます。ただ、相手は日本対策をこれまで以上に練ってくると思います。緊迫した痺れる展開になるかもしれません。それも望むところですが、今回のようにスカッと勝利するのもいいですね。むしろ、またスカッと勝ってほしいです。

構成/飯塚健司

※ザ・ワールド2024年10月号、9月15日配信の記事より転載