(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

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厚生労働省が実施した「令和4年 介護サービス施設・事業所調査」によると、介護に従事する職員数は年々増加しており、令和4年度は215.4万人だったそうです。そのようななか「女優の仕事と介護の仕事は似ている」と話すのは、芸能活動のかたわら、介護福祉士や准看護師として現場で活躍する北原佐和子さん。今回は、北原さんの著書『ケアマネ女優の実践ノート』から、北原さんが介護の現場で経験したエピソードを一部ご紹介します。

【写真】施設利用者に、アイドル時代のクイズを出題する北原さん

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見ている方は「しっかり見ている」流れ作業にならないコミュニケーション

すべての利用者さんではないのですが、見ている方は見ているのですね。私たちスタッフの姿、行動や表情をしっかりと。

朝、出勤したら、「この方、朝ごはんを食べてくれません……」と愚痴をこぼすスタッフがいました。

「え? どうして朝ごはんを食べないの?」
「わからないですけれど、食べないのですよ」

利用者さんにも、スタッフに対する好き嫌いはあります。自分に合うか合わないかですよね。

それから、ちょっと上から目線の態度だったり、流れ作業的な感じで心なく接したりしていると、利用者さんはすぐに感じ取ります。

朝ごはんを食べないこと。

それは利用者さんなりの抵抗の表れなのでしょう。

自分と合わせ鏡

スタッフの立場に立てば、いつも誠心誠意というのは、正直なかなか難しいとは思います。

たとえば夜勤をしていると、朝起きたら歯磨きと洗顔をして、着替えて、朝ごはんを食べてもらって、それを何時から何時までの間にやり終えないといけないわけです。


『ケアマネ女優の実践ノート』(著:北原佐和子/主婦と生活社)

そういう慌ただしい流れの中で、ちょっと言葉が荒くなったり、雑になったりすることもあるでしょう。

でも、利用者さんは、それら全部を敏感に察します。

逆に考えれば、スタッフの態度が変われば、きっと朝ごはんを食べてくれるはず。自分と合わせ鏡なのですよね。

お年寄りの「心は磨かれている」自分にウソをつかないコミュニケーション

私に足りない点がたくさんあっても、今の高齢の方々は、合わせてくださいます。また、「しょうがないなぁ」と諦めてもくださいます。

許してくれるのですね。

加えて、余計なことはあまり言いません。

そして、認知症が進むと、ところどころわからない部分も出てくると思うのですが、高い協調性をもち合わせてもいるのです。戦争を体験されて、ともに助け合って生きてきた経験の多さからかもしれません。

長い時間、たくさんの経験を積んで生きてこられたので、心がピカピカに磨かれている方が多い気がします。

なんでも見通せる神通力を備えた仙人がそこにおわします、みたいな厳かな雰囲気を感じるときもあります。

取り繕っても、すべて見透かされている感じ。

よく思われようとうわべだけ整えても、通用しません。

さて、どうしましょう。

ひとつの基準

私は、自分がされてうれしいかどうかを、ひとつの基準にしています。

大切にされていると感じる。

きちんと考えてもらっていると思える。

私基準なので、相手の感性にそぐわないこともあるでしょうが、その方を大切に思い、尊敬している気持ちにウソはありません。

そうした自分自身にウソをつかないコミュニケーションなら、たとえ相手にはねのけられても、落ち込むことなく前に進めます。

※本稿は、『ケアマネ女優の実践ノート』(主婦と生活社)の一部を再編集したものです。