SLAC-スタンフォードバッテリーセンターの研究チームが、リチウムイオン電池の初回充電についての研究結果を発表しました。

Data-driven analysis of battery formation reveals the role of electrode utilization in extending cycle life: Joule

https://www.cell.com/joule/abstract/S2542-4351(24)00353-2

Researchers discover a surprising way to jump-start battery performance

https://www6.slac.stanford.edu/news/2024-08-29-researchers-discover-surprising-way-jump-start-battery-performance



リチウムイオン電池には製造後の初回充電の方法によって電池の性能や寿命が左右されるという特性があります。研究チームは電解質溶液に正極と負極を加えたポーチ型のセルを構築し、さまざまな条件で初回充電を行ってどのように電池が変化するのかを観察。機械学習を使用することで、多数の変数から充電時の「温度」と「電流」が大きく影響している事を特定しました。

新しい電池の正極にはリチウムがいっぱいに詰まっているものの、充放電を繰り返すことでリチウムの一部が不活性化され、電池の容量が減少してしまいます。最初の充電において、不活性化されたリチウムは負極の表面に「SEI」と呼ばれる被膜を生成し、負極を保護するため、SEIを適切に形成することが非常に大切とのこと。

過去の研究により、低電流で時間をかけて初回充電を行うことでリチウムの不活性化率を9%まで抑えられることが判明しており、メーカーはバッテリーの初回充電時にこの手法を用いて約10時間かけてバッテリーを充電しています。今回、研究チームは大電流で高速充電することでリチウムの不活性化率は約30%まで上昇するものの、充放電のサイクルを経ても劣化が抑えられることを発見しました。さらに、この初回充電ならサイクル寿命が50%増加し、メーカーの初回充電にかかる時間を20分まで短縮できると述べられています。

研究チームは、電池を水が入ったバケツに例え、「最初にリチウムイオンを不活性化させてヘッドスペースを解放するのはバケツの縁の高さを確保するようなもので、バケツの運搬中に飛び散る水の量が減るように、リチウムイオン電池では充放電サイクルの効率性が向上する」と述べました。



「力ずくで最良のやり方を特定するのではなく、何がどのように作用して機能しているのかを理解することがバッテリーの性能と製造効率の最適なバランスを見つけるのに不可欠だ」とチームは研究の意義を語っています。

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