Googleは2020年に「検索エンジン市場における独占禁止法違反」の疑いで訴訟を提起されており、この裁判の判決が2024年8月5日に下されました。裁判を担当したコロンビア特別区連邦地方裁判所のアミット・P・メータ判事は、「Googleは独占禁止法に違反している」という判決を下しています。このGoogleによる独占状態について、検索エンジン「Kagi」の公式ブログが「Googleの独占によってユーザーが被る不利益」や「Googleの独占状態を是正する方法」について解説しています。

Dawn of a new era in Search: Balancing innovation, competition, and public good | Kagi Blog

https://blog.kagi.com/dawn-new-era-search

◆Google検索の強み

Kagiは、Google検索が「検索インデックス」「ユーザーインデックス」「広告主インデックス」という3つの主要機能により成り立っていると指摘。それぞれの機能には以下のような特徴があります。

・検索インデックス

Googleは無数に存在するウェブページの情報を自動収集してインデックス化しています。この検索インデックスの機能を向上するために、Googleは「ウェブページをランク付けする」「Googleのクローラーがページの情報を正しく取得できるように、ウェブサイトの管理者にコードを挿入させる」「ウェブサイトの検証性を確実なものとするために、ウェブサイトの管理者に対してGoogle Search Consoleを用いた情報最適化を求める」といった施策を実施しています。

ウェブサイトの管理者にとってはコードの挿入やGoogle Search Consoleの管理はコストのかかる操作です。しかし、検索インデックスに正しく登録されることはビジネス上の利益につながるため、ウェブサイトの管理者はこれらの操作をGoogleから金銭を受け取ることなく実行します。

・ユーザーインデックス

Googleはユーザーの検索履歴をもとに「ユーザーが閲覧しそうなウェブページ」を予測し、検索結果に反映しています。また、検索結果には「ユーザーが興味を持ちそうな広告」も表示されます。Kagiは、Googleがユーザーの行動履歴をもとに作成している個人最適化情報を「ユーザーインデックス」と呼称しています。

このようなユーザーごとの最適化を確実なものとするために、Googleは複数の企業に対して「製品のデフォルト検索エンジンにGoogleを採用すること」を要求しています。例えば、Appleは自社製ブラウザ「Safari」のデフォルト検索エンジンにGoogleを採用する代わりに、Googleから毎年3兆円規模の代金を受け取っています。

Appleは「Google検索を採用する代金」としてGoogleから年間3兆円を受け取っている - GIGAZINE



・広告主インデックス

Googleの検索結果ページには、検索アルゴリズムにもとづいた検索結果のほかに、Googleに金銭を支払うことで表示させられる検索広告も表示されます。Googleは検索結果に表示される広告から年間1500億ドル(約21兆円)の収益を生み出しています。



◆なぜGoogleに勝つのは難しいのか?

Googleは検索機能を無料で提供しています。Amazonなどの巨大販売プラットフォームに勝負を挑む際は「Amazonよりも安い値段で製品を販売する」という戦略を採用できますが、Googleの場合は検索機能を無料で提供しているため、必然的にGoogleより安い価格でサービスを提供することは不可能です。このため、新興検索エンジンがGoogleからシェアを奪うことは非常に困難となっています。



◆Googleの独占によってユーザーが被る不利益は?

上述の通り、Google検索は無料で利用可能ですが、ユーザーには「検索広告によって生じる『検索結果と目的の情報の不一致』」という負担が生じています。例えば、ユーザーが「最高のヘッドホン」というワードで検索した場合、検索結果の最上部に表示されるのは「最高のヘッドホンを紹介するページ」ではなく「最高額を支払った広告主のページ」です。さらに、Kagiはユーザーが被っている不利益として以下の点を挙げています。

・目にする検索結果がGoogleのアルゴリズムに従ったものだけに制限される

・目的の検索結果にたどり着くまでに多くの広告を閲覧する必要がある

・Googleに検索履歴などの個人情報を収集される

・ニーズに一致していない検索結果を見せられる

◆Googleの独占状態を是正する方法

Googleの独占状態を是正するために、アメリカ司法省はGoogleに対して「モバイルOS事業(Android)を売却させる」「Chromeの事業を売却させる」「広告事業(Google広告)を売却させる」といった命令を下すことを検討していることが報じられています。しかし、Kagiは「これらの売却命令は、真のイノベーションや、多様な競争、消費者にとってのより良い結果などにつながらない」と指摘しています。

「Googleの分割」をアメリカ司法省が検討中 - GIGAZINE



Kagiはイノベーションを促進して競争を多様化するための解決策として、Googleに対して「検索インデックスへの公平なアクセスの許可」を求めています。Kagiによると、検索インデックスの構築には膨大な資金と長い時間がかかるとのこと。仮にGoogleが検索エンジンへの公平なアクセスを提供すれば、「検索エンジン市場の競争激化」「プライバシー保護機能の改善」「検索品質の向上」といったメリットを得られるとKagiは主張しています。