音楽パブリッシャーのEight Mile Styleが「エミネムの数百曲にのぼる楽曲が無許可で配信されている」としてSpotifyを著作権法違反で訴えていた裁判で、2024年8月15日、連邦裁判所は原告の主張を退け、「Spotifyが法的責任を負うことはない」という判決を下しました。

Spotify just won a long-running lawsuit over streaming of Eminem’s catalog - despite the court finding it didn’t have a license for the music. What does this mean for publishers? - Music Business Worldwide

https://www.musicbusinessworldwide.com/spotify-just-won-a-long-running-lawsuit-over-streaming-of-eminems-catalog-despite-the-court-finding-it-didnt-have-a-license-for-the-music-what-does-this-mean-for-publisher/



Eminem Publisher Legal Battle Over Music Licenses Ends in Spotify Win

https://www.rollingstone.com/music/music-news/eminem-spotify-copyright-infringement-case-ends-1235095709/

Eminem loses five-year legal battle with Spotify over music streaming rights | Euronews

https://www.euronews.com/culture/2024/09/05/eminem-loses-five-year-legal-battle-with-spotify-over-music-streaming-rights

2019年、エミネム氏はパブリッシャーのEight Mile Styleを通じて「正しくライセンスを取得していないにもかかわらずSpotifyで243曲もの楽曲が配信されている」と主張し、Spotifyに対する訴訟を提起しました。Eight Mile Styleは「エミネム氏の楽曲は何十億回もストリーミング再生されているにもかかわらず、SpotifyはEight Mile Styleに適切な料金を支払わず、何らかの基準によるランダムな金額を送金してきました」と述べ、故意の著作権侵害があったとしてSpotifyに対し4000万ドル(約57億円)の損害賠償を求めていました。

しかし2020年にSpotifyは「我々はEight Mile Styleの代理人であるKobalt Music Groupから、楽曲を複製及び配布するライセンスを取得していました」と主張。さらに「Spotifyは、権利を侵害されたと主張する第三者による請求があった場合、Spotifyを保証することに同意する『メカニカルライセンス契約』をKobalt Music Groupと直接締結しています」と述べています。

そしてSpotifyは「実際にはKobalt Music GroupはEight Mile Styleからエミネム氏の楽曲の権利を取得していませんでした」「Kobalt Music Groupは、エミネム氏の楽曲の権利を管理する会社として、Spotifyによる楽曲のストリーミングを認める権利を持っていると誤解させました」と述べ、Kobalt Music Groupの過失を訴えました。



その後、この裁判はEight Mile Style、Spotify、Kobalt Music Groupの3者で争われることになりました。

2024年8月15日に、テネシー州連邦裁判所のアレタ・トラウガー判事はSpotifyの主張を認め「Spotifyは実際にはエミネム氏の楽曲をストリーミングするライセンスを持っていませんでしたが、Spotifyは失われたロイヤリティの支払いに対してEight Mile Stylehへの責任を負いません」との判決を下しました。

また、トラウガー判事はEight Mile StyleがKobalt Music Groupに対しロイヤリティを徴収する権限を与えていた一方で、楽曲のライセンスを取得する権限は与えておらず、実際のライセンスはEight Mile Styleと提携関係にある「Bridgeport Music」という企業に移管されていたことを追及しており、Eight Mile Groupはこのことを意図的にSpotifyに知らせなかったことが指摘されています。トラウガー判事は「今回の訴訟において、Eight Mile Styleは単なる『不運な被害者』ではありません」と述べています。

さらにトラウガー判事は「Eight Mile Styleは複雑な著作権に関するネットワークを作り上げて楽曲のライセンス状況を混乱に陥らせた上で、損害賠償請求をでっち上げるための戦略としか考えられない方法を作り上げ、楽曲の権利が侵害されるのを許していました」と指摘しました。また「たとえSpotifyが適切なライセンスを持たずに楽曲のストリーミングを行ったとして賠償命令が下されたとしても、Kobalt Music Groupに対する罰則は確実に下されるでしょう」と述べました。