勉強や仕事などで解決策が見つからずに行き詰まった際に「一晩寝たら解決策が思い浮かんだ」という経験をしたことがある人は多いはず。一晩眠るとアイデアが思いつく現象には睡眠中の脳の記憶整理機能が関係しているとされているのですが、新たにイェール大学の研究チームによって記憶整理機能のメカニズムの一端が解明されました。

Nested compressed co-representations of multiple sequential experiences during sleep | Nature Neuroscience

https://www.nature.com/articles/s41593-024-01703-6

Sleep on it: How the brain processes many experiences - even when ‘offline’ | YaleNews

https://news.yale.edu/2024/08/14/sleep-it-how-brain-processes-many-experiences-even-when-offline



How Does the Sleeping Brain Supports a Day’s Worth of Memories? | Technology Networks

https://www.technologynetworks.com/neuroscience/articles/how-does-the-sleeping-brain-supports-a-days-worth-of-memories-389786

これまでの研究で、脳は睡眠中に「経験したことを描写しなおし、記憶に統合する」という処理を実行していることが明らかになっています。しかし、これまでの研究では「少数の経験」の記憶への統合メカニズムのみが分析されており、多数の経験を並列処理するメカニズムについては詳しいことは分かっていませんでした。

そこで、イェール大学のジョージ・ドラゴイ氏が率いる研究チームはラットの海馬ニューロンの働きを19時間半にわたって記録し、マウスの記憶整理メカニズムを分析しました。

分析の結果、脳は1日の経験を1秒未満の再生エピソードに圧縮して処理していることが判明。さらに、2つ以上の異なる経験を並列化することで効率的な並列処理を可能にしていることも明らかになりました。ドラゴイ氏は睡眠中の経験圧縮処理について「夢をみているときのように、1日を通した複数の経験から一部を抜粋して超高速で連続再生しているようなもの」と説明しています。

また、今回の研究では睡眠中の脳では「一連の経験のうち最初と最後の経験」が最も強く表出することが観察されました。これは人間で観察される「一連の出来事の最初と最後の部分だけ思い出しやすい」という現象と関連している可能性があるそうです。

なお、ドラゴイ氏は論文の全文を読めるリンクを以下のポストで共有しています。