深夜に目が覚めてしまう原因は?

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 深夜に突然、目が覚めてしまうことはありませんか。「部屋が暑い」「トイレに行きたくなった」などの理由で、たまに目が覚める程度であれば問題ないとは思いますが、深夜に目覚める日が続くと、不安になる人は多いのではないでしょうか。深夜に目が覚める原因のほか、就寝中に目が覚めないための対処法について、睡眠に関する支援サービスを提供する、アスリートスリープコーチの矢野達人(やの・たつと)さんに聞きました。

カフェインや酒の摂取時間に要注意

Q.そもそも、深夜に目が覚めてしまうのはなぜなのでしょうか。考えられる原因について、教えてください。

矢野さん「夜中に目が覚めてしまう症状のことを『中途覚醒』といいます。中途覚醒は何かしらの原因で眠りが浅いために起きるものだと考えてください。代表的なものとしては、『ストレス・不安』『睡眠環境の問題』『体内時計の乱れ』『身体的な原因』の4点です。順番に説明します」

(1)ストレス・不安
ストレスや不安が強い場合やストレスや不安を継続的に感じている場合、脳がリラックスの仕方を忘れてしまいます。深い睡眠に入るためには、いかにリラックスして睡眠を取るかがポイントになるため、ストレス・不安が強い人は夜中に目が覚めやすくなります。特に、寝る直前まで布団の中で考え事をしていると、脳が「布団=眠れない場所」と記憶してしまうので要注意です。

(2)睡眠環境の問題
寝室の温度や湿度、騒音、光の加減が適切でないと、睡眠中でも不快に感じて眠りが浅くなり、途中で目が覚めることがあります。特に、寝室が暑かったり寒かったりする場合はエアコンなどを活用すれば解決できますが、意外と意識されていないのが『湿度』です。湿度が高かったり、湿度が低くて部屋が乾燥したりしていると眠りを浅くするため、季節にかかわらず、『50%程度の湿度』を維持できるよう、工夫しましょう。

(3)体内時計の乱れ
体内時計が乱れているとうまく寝付けなかったり、朝スッと起きられなかったりするなど、睡眠の質が低下する原因にもなります。特に、体内時計が大きくズレ込んでいると、夜中に起きるリズムが形成されることもあります。昼寝のし過ぎや、夕方以降のカフェインの摂取なども体内時計を乱す原因となります。

(4)身体的な原因
腰痛や睡眠時無呼吸症候群など、健康状態に関連した問題も夜中に目が覚める原因になります。これらの症状がある場合、無意識に目が覚めてしまうことがあるため、根本原因を改善する必要があります。

Q.では、深夜に目が覚めるのを防ぐためには、どうしたらよいのでしょうか。就寝前にできる対策について、教えてください。

矢野さん「就寝前にできる対策として、次の3点を試してみてください」

(1)自分用の快眠ルーティンをつくる
就寝の1時間半前は、快眠を得るための準備時間だと考えてください。筋トレをしたり、激しい音楽を聞いたりすることなどは避け、なるべく心身のリラックスにつながることだけをするように心掛けましょう。例えば、入浴やストレッチ、アロマ、腹式呼吸などがお勧めです。これらを毎晩続けて脳に「夜=ルーティン=寝る」と覚えさせることが大切です。

(2)夕食以降は、カフェイン、アルコール、ニコチンの摂取を控えめにする
カフェインは眠気覚ましとして有名ですが、その効果は4時間以上持続するといわれています。夕食以降は、カフェインの摂取を控えましょう。

アルコールは一時的に眠気を感じさせるため、毎晩、お酒を飲む人も多いですが、実はアルコールによって睡眠中の呼吸量が低下したり、利尿作用によって中途覚醒したりする原因になります。就寝の3時間前からはアルコールの摂取を控えるのが良いでしょう。

夕食時にお酒を飲むときは少量を心掛け、「泥酔しないこと」がポイントです。そうすることで、睡眠への影響をある程度減らすことができます。

職場の飲み会などでお酒をたくさん飲むときも、最後の一杯については水やお茶など、アルコールが含まれていない飲み物を選ぶようにしましょう。

喫煙時はリラックスできますが、喫煙してから20〜30分以降は、ニコチンによって覚醒作用が働きます。喫煙の習慣がある人は、就寝前の「最後の一本」をどれだけ前倒しできるかが快眠のカギになります。

(3)寝室の環境を整える
先述の通り、寝室の温度や湿度、明るさ、音の環境を整えることが大切です。室温ですが、夏は26度、冬は18度程度になるようにエアコンの温度を設定しましょう。

このほか、『湿度は通年50%を保てるようにする』『寝室内に光源が入らないよう、間接照明を使用する』など工夫しましょう。また、寝具やパジャマも快適なものを選び、寝室をリラックスできる場所にしましょう。

他にも大切なことはたくさんありますが、まずはこの3つから取り組んでみてください。

Q.もし、深夜に目が覚めることが続く場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。

矢野さん「先述の通り、中途覚醒の原因はさまざまですが、それが続いてしまうと、脳がそのリズムを記憶してしまうため、原因となる行動を取っていなくても、夜中に目が覚めてしまうことがあります。基本的に、医師が『中途覚醒(不眠障害)』と診断する要件は、『夜中に目が覚めてしまい、その後、再入眠するのに15分以上かかる状態が週に3回以上ある』という状態です。

つまり、夜中に目が覚めても再入眠がスムーズであれば、そこまで重く捉えないで良いといえます。一方、再入眠はスムーズでもまた目が覚めてしまうなど、一晩に複数回、目が覚める場合は中途覚醒と診断されるケースがあります。

原因にかかわらず、十分な睡眠が取れていないことに変わりないため、中途覚醒が気になる場合は、専門機関に相談されるのをお勧めします」