低温流通の日本酒 大手卸が注力、縮小市場に新たな可能性
大手食品卸が低温で流通する日本酒に力を入れている。冷凍機能を生かした希少性や小容量の利便性を訴求しながら新たな需要を掘り起こし、低迷する市場の活性化を図る。さらに、独自の商材で競合との差別化につなげる狙いもある。
伊藤忠食品は液体凍結による、「凍眠凍結酒」の販売を本格化。同社は5年前から「凍眠市場」ブランドで生鮮食材を使ったギフトを中心に冷凍品を展開しており、初年度の1千セットから今年度は1万5千セットの販売を目標にする。
この「凍眠」の冷凍技術を生かし、「酒蔵でしか飲めなかったお酒に焦点を当てて商品化」(リテール本部・星利夫本部長)したのが「凍眠凍結酒」だ。「今までになかった価値を加えて販売し、日本酒全体の流通量を上げる」(同)と意気込む。
量販店では冷食コーナーにも広がり、誌面で商品特徴を伝えられる生協の共同購入などでも評価を得ている。さらに、百貨店の催事やECサイト、外食へと販路を拡大し、将来的には輸出も視野に入れる。
大阪市の大正センターに凍結設備を導入し兵庫、京都、奈良にある6つの酒蔵の日本酒を急速冷凍する。生原酒や純米吟醸など、300㎖で参考価格は1千100〜1千600円(税抜)。3本ずつが入った飲み比べセットも揃える。今年度は1万本の販売を計画しており、「早期に億単位の売上に持っていきたい」(星本部長)考えだ。
日本アクセスは強みである低温流通機能を活用した“チル酒”に、初の自社開発商品を投入する。清酒業界では初めてとなる要冷蔵の缶入り酒で、180㎖の飲み切りサイズ。日本酒を飲み慣れていない若い世代を意識し、低アルコールの微発泡、純米吟醸生原酒など3種類を発売する。参考売価は450〜500円(税抜)。
業界では大手瓶メーカーの撤退や、輸出品の拡大に伴う回収不可分の増加などにより瓶が不足し、その状態は今後も続くとみられる。
同社では軽くて割れない扱いやすさ、リサイクル率の高さといった缶そのものの特徴に加え、小容量にすることで高価格品でも手に取りやすくなるなどのメリットを訴える。酒類MD部は「中身も最近のトレンドを意識した。店にもお客様にも扱いやすい。昔ながらの日本酒のイメージが強いワンカップの瓶から脱し、缶の可能性を広げたい」としている。
国分グループ本社は菊水酒造(高知県安芸市)と開発した、冷凍保存の「煌(きらら)菊水 ねむり姫」を販売している。純米吟醸の生酒とレモンなどの生リキュールを家庭用と業務用で展開。パウチ入りで150㎖(市販用のリキュールは130㎖)の飲み切りサイズ。市販用の希望小売価格は500円(税抜)。
国分西日本の中四国エリアでは料飲店など業務用を中心に導入が進み、売上高は前年比3倍と大きく伸びている。今後、秋冬に向けては「こたつでアイスを食べるような切り口で、鍋企画などにも提案したい」(マーケティング部)考えだ。