この記事をまとめると

■世界最強の装輪装甲車「マローダー」がマーク2に進化

■ハマー2が木っ端微塵になった8kgのTNT爆弾の衝撃でもマローダーは走り続けることが可能

■値段は公表されていないが4000万円から架装や装備によっては6000万円ほど

世界最強の装輪装甲車「マローダー」がマーク2に進化

「世界でもっとも止められないクルマ」と聞いてワクワクしない方はいないでしょう。南アフリカの工業メーカーが作り出した世界最強の装輪装甲車「マローダー」が、発表から14年を経てついにマーク2へと進化! 地雷だろうとコンクリの壁だろうとものともせずに突き進み、プラスチック爆弾がさく裂したってなんのその。しかもマーク2は乗員の快適性を大幅にアップしたといいますから、世界中のどんな物騒なエリアだって鼻歌混じりのドライブが楽しめちゃうのではないでしょうか。

 南アフリカに本拠を置くパラマウントグループが世界最強の装輪装甲車、マローダーを発表したのは2007年の国際軍事見本市(IDEX:中東最大の軍事見本市)でのこと。これはパラマウントとヨルダン(アブドゥラ2世国王設計開発局)によるジョイントベンチャーで、なんと同国は50台ものマローダーを購入したとのこと。中東の平和維持はやっぱりスケールが違う!

 また、ヨルダンに次いでアルジェリアやアゼルバイジャンといった国々もこぞって購入したほか、カザフスタンに至ってはパラマウントとの合弁会社を立ち上げ、国内生産に踏み切るなど超気に入った様子。なるほど、マローダーの性能はガチでしかないようです。

 さて、2022年にプロジェクトが発表されたマーク2ですが、ボディサイズは全長6440×全幅2660×全高2745mmと大型トラック並み。運転席と助手席のほか、後部に8席を備えた10人乗りというのは初代から変更なし。最高出力285.5馬力、最大トルク98.9kg-mを発揮するターボディーゼルエンジンを搭載し、駆動方式は当然4×4または6×6のいずれかを選択可能。巡航速度は約100〜120km/h、最大航続距離は700kmと、運用性は市街地だけにとどまらない優秀なものでしょう。

 ちなみに、ペイロードは4tとのことですから、ちょっとした移動式ミサイルランチャーを牽引していくなんて使い道もありそうです。

ハマーを子ども扱いにする耐爆弾性

 また、公式サイトで大きくフィーチャーされている「売り」が耐爆弾性能(笑)。つまり、車体下面では8kgのTNT爆弾に耐え、ホイール部分では同じく14kgの爆発に耐えられることを担保しているのです。実際に初代を紹介する動画では3.2kgのプラスチック爆弾で検証(笑)。ハマー2は木っ端みじんに吹き飛んだものの、マローダーはタイヤがパンクしてバンパーが壊れたのみ! むろん、そんな状態でもマローダーはグイグイと走り続け、コメンテーターに「世界でもっとも止められないクルマ」といわしめたのでした。

 この堅牢性の秘密はどうやら「ダブルスキン」二重構造の耐衝撃素材にあるようです。また、居住空間についてはモノコック構造を採用するなど、乗員保護についても徹底している様子。ちなみに、乗員スペースの快適性は初代に比べて飛躍的に向上したとのことで、外気温がマイナス20°から50°を越える環境でも「乗員が規定通り働ける」のだそうです。

 マローダーのすごいところは頑丈なだけではなく、60%の登坂能力や砂地や悪路といった路面状況に合わせた走行モードが選べ、車内からタイヤ空気圧の調整ができるなど、一般的な装甲車よりも高い走行性能を持たされているところ。パラマウントは架装バリエーションを豊富にラインアップしており、装甲救急車や指揮車両、あるいは歩兵火力支援といった仕様も選べます。

 となると、マローダーはやっぱり軍事車両のセグメントを逃れないわけで、一部の報道で「一般人も購入可能」となっているものの、パラマウントは政府機関にしか販売しない旨を明確にしています。値段は公表されていないものの、購入した各国の報告によれば、4000万円から架装や装備によっては6000万円ほどだそう。お値段もさることながら、丈夫だからって武器扱いのクルマに乗るっていうのは気が引けますよね。

 よくよく調べてみると、パラマウント社はマローダーのほかにもより大型化した装甲車「マタドール」や、南アフリカではお馴染みの海賊対策用装甲ボートなども生産しており、工業メーカーというより兵器産業の色合いが濃い感じ。まったく、マローダーみたいなワクワクマシンがガチで平和利用される日が待ち遠しくてなりません。