胸元や壁にピン留めし、音声を入力してAIアシスタントやリアルタイム翻訳を利用することができるウェアラブルAI端末「AI Pin」が返品の憂き目に遭っていることがわかりました。2024年5月から8月までは、返品数が販売台数を上回ったそうです。

Humane’s daily returns are outpacing sales - The Verge

https://www.theverge.com/2024/8/7/24211339/humane-ai-pin-more-daily-returns-than-sales

AI Pinは、Appleの元従業員らが設立したスタートアップ「Humane」が手がけた端末です。音声入力やタッチ入力で映像撮影やメール送信、音楽再生などが可能で、手のひらに映像を映し出すなどのシステムも搭載していました。

AI搭載で手のひらに画面投影可能なクリップ型ウェアラブルデバイス「Ai Pin」をHumaneが正式発表 - GIGAZINE



AI Pinは2024年4月から出荷されましたが、その後に社内データがリークされ、5月から8月の間は販売された数より返品された数の方が多かったことが明らかになりました。通信用に提携したT-Mobileの制限から、AI Pinは一度返品されると他人へ再出荷することができなくなり、そのまま廃棄物となってしまうそうです。

発売当初から、AI Pinは利用者から圧倒的に否定的な評価を受けていました。AI Pinは本体価格が最低699ドル(約10万2000円)で、さらにネットワークやクラウドストレージへのアクセスのために月額24ドル(約3500円)のサブスクリプション料金がかかるというお財布に優しくない料金体系であり、おまけに肝心のAIアシスタントも「機能しない」というありさま。テクノロジー系メディアのThe Vergeは「アイデアは興味深いが、未完成で、受け入れがたい点が非常に多く、この料金を費やしてなお買うべきと考えられる人はいない」と評価しています。

社内データによると、AI Pinの全売上高は900万ドル(約13億1500万円)強で、少なくとも100万ドル(約1億4600万円)相当の製品が返品されているとのこと。The Vergeは「この数字は、Humaneが選択肢の限られた困難な立場に置かれていることを際立たせています」と指摘しました。

なお、Humaneは事業の売却を検討していることが報じられています。

ウェアラブルAIデバイス「Ai Pin」不振でHumaneが身売り先を探しているとの報道 - GIGAZINE



ここ数カ月の間にHumaneでは幹部の離脱が目立っていて、カスタマーエクスペリエンス担当ディレクターであるトリ・ガイケン氏が社内のSlackから姿を消したと情報筋が語っているほか、Humaneの初期メンバーだったエンジニアリング担当副社長のジェレミー・ワーナー氏、前最高技術責任者のパトリック・ゲイツ氏、プロダクト・エンジニアリング担当のケン・コシエンダ氏が、既にHumaneを去っているとのことです。