まるでスマホな「XREAL Beam Pro」レビュー ARグラスでアプリを自在に利用可能、空間撮影もできる
SIMカード非搭載のスマホ型デバイス
XREALのAndroidデバイス「XREAL Beam Pro」が日本で発売された。6.5型 2400 x 1080ピクセルのディスプレーを搭載するスマートフォン型のデバイスだ。
スマートフォン「型」と呼ぶのは、SIMカードスロットを搭載せず、データ通信はWi-Fiのみに対応しているからである。
とはいえ、その外観はスマートフォンそのものであり、通信設定画面にSIMカードの項目がない以外、全体的な操作性はスマートフォンと変わらない。
価格は3万2980円(6GB/128GBモデル)からと比較的安価だ。なお今回試用した製品は販売前の開発中のモデルをXREALからお借りした。
シンプルなデザイン、背面にカメラ
6.5型ディスプレーを搭載。外観はスマートフォンそのものだ
本体のデザインはシンプルで、背面にはカメラを2つを搭載、XREALのオレンジのロゴが描かれているだけである。ホワイトのボディーは上品だが傷や汚れの心配もあるのでケースが欲しいところだ。なおバッテリー容量は4300mAh、最大充電速度は27Wとなる。
離れたカメラ配置が特徴的な背面
本体右側面の一番上にある赤いボタンはモード切替ボタンで、接続するXREALのARグラスの表示モードを切り替えられる。その下にはボリュームボタンと電源ボタンが並ぶ。なおディスプレイや電源ボタンに指紋認証センサーは搭載されていない。
赤いボタンで画面モードを変更できる
本体下部には2つのUSB Type-C端子を搭載する。片側が電源・パソコン接続用で、もう片方はXREALのARグラス接続用だ。なお写真ではやや見にくいが本体左側面にはmicroSDカードスロットを搭載している。
本体下部にはUSB Type-C端子を2つ搭載
重さは実測で206g。背面側の側面にカーブをつけた断面構造のため握りやすいと感じる。右手で持った時は親指で、左手で持った時は人差し指でモード切替ボタンを押せるので、ARグラスを装着して手元があまり見えない状態でも表示切替が容易にできる。
重量も適度で扱いやすい
OSはAndroid 14ベースの「NebulaOS」を採用。プロセッサーはクアルコムの空間コンパニオンオクタコアCPU「Snapdragon Spatial Companion Processor」を搭載する。ベンチマークはAnTuTuが543292、Geekbench 6のシングルコア935が、マルチコアが2714だった。イメージとしてはSnapdragon 7系あたりの性能だろう。
スマホで言えばミドルハイレンジクラスの性能
ARグラスを接続して使ってみる
「XREAL Beam Pro」はXREALのARグラス「XREAL Air」シリーズを接続して使うことを前提とした製品だ。今回はARグラスとして「XREAL Air 2 Ultra」を接続して試用した。
今回は「XREAL Air 2 Ultra」を接続
「XREAL Beam Pro」にはARグラスの接続をコントロールするアプリ「マイグラス」がプリインストールされている。「マイグラス」はARグラス接続時の出力(表示)を切り替えるもので、「デフォルトAir Casting」をOFFの状態にすると専用のUI(ユーザーインターフェイス)が立ち上がり、最大2つの画面を表示できる。
また、「XREAL Beam Pro」を手にもって空間で動かすポインターとしても使える。
一方、ONにした場合は「XREAL Beam Pro」の画面をそのままミラーリングするだけの表示となる。今回はもちろんOFFにして使ってみた。
マイグラスアプリではARグラスの出力を切り替えることができる。
「XREAL Beam Pro」へのARグラスの接続は、本体下部の右側、メガネのアイコンのある端子側にARグラスのUSB Type-C端子を接続する。
「XREAL Beam Pro」の右側端子に「XREAL Air 2 Ultra」のUSBケーブルを接続
「XREAL Beam Pro」の画面に「XREAL Air 2 Ultraに接続中」と表示され、しばらくすると画面がタッチパッドに切り替わる。
この状態でARグラスを掛けたまま、指先で表示画面をスクロールしたり、タップで操作したりできるわけだ。
タッチパッド上部には「誤タッチ防止」「スキャン」「画面録画」「写真を撮る」のアイコンが並び、下部にはホームボタンが配置される。画面録画と写真を撮るはARグラスに表示されている内容をキャプチャできる。
ARグラス接続中の画面。接続後はタッチパッドとなる
ARグラス内にはホーム画面が表示される。スマートフォンの一般的な画面とは異なり、一画面にアプリアイコンが12個並ぶ、専用のUIとなる。「XREAL Beam Pro」にインストールされたアプリすべてが利用できるのは便利だ。
ARグラスの表示部分をカメラで撮影した
「XREAL Beam Pro」のタッチパッドから「写真を撮る」でキャプチャした画面
この状態で「XREAL Beam Pro」本体右上の赤いボタンを押すと、ARグラス内の表示モードを切り替えられる。モードは画面表示位置が固定されるBody Anchor/画面固定(3DoF)と、顔の動きに画面表示が追従するSmooth Follow/視線追従(0DoF)の2タイプ。ワンタッチで切り替えできるのは操作しやすい。
視線追従モードでは顔をどの向きに向けても表示は固定のままだ
画面固定モードは顔を向けた向きに画面が固定される。顔を動かすと表示はずれる
ARグラスを装着してからの操作は、「XREAL Beam Pro」本体を手に持って空間で動かして行う。
本体を上下左右に動かすとポインターの点が動くので、それを起動したいアプリアイコンに合わせ、タッチパッドでタップする。なお、アプリが12個以上ある場合は「XREAL Beam Pro」の画面のタッチパッドを指先で左右にスワイプして画面を切り替える。
本体を動かしポインターを操作する。画面をタップしてアプリやメニューを選択する
アプリを起動すると、ウィンドウの右上に4つのアイコンが並ぶ。それぞれ左から「画面サイズ(L/M)変更」「広範囲表示ベータ」「戻る」「アプリを閉じる」だ。操作はアプリ起動時同様に「XREAL Beam Pro」を手にもって動かしてポインターを合わせ、画面をタップする。
YouTubeアプリの起動画面、Lサイズ表示
一回り小さいMサイズ表示もできる
アプリ起動中にホームボタンを押すと、ホーム画面(アプリアイコン画面)が表示される。この状態で起動中とは別のアプリを選択すると、2つのアプリを空間上に2つ表示できるのだ。
ホーム画面や一部のアプリ起動中は、「XREAL Beam Pro」のタッチパッドを上から下にスワイプするとバッテリー残量や無線状態などのステータス表示もできる。
アプリ起動中にホームボタンを押すと、ホーム画面が表示される
タッチパッドを上から下にスワイプするとステータス表示となる
「XREAL Beam Pro」と「XREAL Air 2 Ultra」を使ったARグラス体験は、目の前に広がる大画面が快適だ。スマートフォンの小さい画面はもちろん、タブレットやパソコンを使うときは画面を見るため首をやや下に向ける必要があるが、ARグラスならば顔の向きは自由な位置に動かせる。
実際にカフェなどで使ってみたが、外観がサングラスとほぼ同じなため違和感もない。VRヘッドセットのような「いかにも」な仰々しさもないため、周りを気にすることなく使えると感じられた。
顔の向きを気にせず動画視聴も可能
2つのアプリを起動、仕事に使ってみた
「XREAL Beam Pro」とXREALのARグラスの組み合わせでは、2つのアプリの起動も可能だ。マルチ画面が使えるならと、仕事にも使えるか試してみた。
まず、アプリの文字入力は、文字入力エリアにポインターを置くと「XREAL Beam Pro」本体のタッチパネル上にソフトキーボードが表示されるので、そこから入力できる。ARグラスを装着していても目の下側は開いているので「XREAL Beam Pro」の画面を見ることは可能だ。
YouTubeで動画を視聴
文字入力エリアにポインターを置くと、Xreal Beam Proのキーボードで文字入力できる
アプリ起動中にホームボタンを押すと、アプリアイコン画面がオーバーレイで表示される。使いたいアプリのアイコンにポインターを合わせてタップし、もう1つのアプリを起動する。
すると、既存の画面が右側にずれ、もう1つのアプリが起動して並ぶ。この時、2つのアプリを同時に全画面で表示することはできない。
アプリ使用中に「XREAL Beam Pro」のタッチパッドのホームボタンを押す
Googleドキュメントを起動した。YouTubeの画面は右にずれる
アプリの切り替えは、画面と画面の間にポインターを持っていきタップすると、左右が入れ替わる。これなら動画とGoogleドキュメントを切り替えながら原稿を書く、なんてこともできそうだ。一般的な使い方ならブラウザとSNSを切り替えるなど、使い方は多々あるだろう。
アプリとアプリの間にポインターを置く
左右の画面が入れ替わる
画面固定モードにすれば、首を右側に動かすことで、右側の画面を見られる。
とはいえ、顔を元の位置に戻すと再び左側の画面が正面に来るため、画面固定モードは2つの画面を「切り替える」というより「右の画面をチラ見する」といった使い方がしっくりくる。
画面固定モードなら、右を向くと右側のアプリを見ることができる
2つのアプリが表示できることから、またも仕事ができるか試してみた。
「XREAL Beam Pro」に、まずはBluetoothキーボードを接続。Googleドキュメントを起動して原稿を入力しつつ、参考情報としてYouTubeを見ながら2つのアプリを切り替えてみた。
文字入力に若干の癖はあるが、普通にタイピングでき、「入力が遅い」といったことや「文字の打ちこぼし」はなかった。
2つのアプリの切り替えは、画面固定モードならば、正面にGoogleドキュメント、右にYouTubeを見ながら首を左右に振りつつテキストを打ち込んでいくこともできないことはない。とはいえ2画面が同時に表示できた方が使いやすいだろう。このあたりは今後のバージョンアップに期待したい。
2つのアプリを表示しながら仕事してみた
空間写真、ビデオの撮影も可能な超広角カメラ
「XREAL Beam Pro」のカメラを見てみよう。
カメラの間は5cm離れているが、これは人間の目と目の平均的な間隔だ。そして2つのカメラはどちらも同じ5000万画素の超広角(14mm)である。人間の2つの眼が自然に外を見るように、2つのカメラを使い、同時に撮影することで「空間写真」「空間ビデオ」を撮ることができる。
2つのカメラは人間の目の間隔と同じ5cm
カメラのUIはシンプルで、倍率は0.5倍と1倍、最大2倍まで対応。動画は4K 30fpsに対応する。
モードは「ビデオ」「写真」に加え、3D撮影ができる「空間ビデオ」「空間写真」の4つのみ。空間ビデオは1080p 60fpsまでの対応だ。
設定画面も項目は少なく、カメラは作品を撮るというよりも、ARグラスで楽しめる空間コンテンツを作成するためのもの、という感じだ。
カメラUIはシンプル。空間ビデオと空間写真は横向きで撮影する
写真モードで撮影すると、普通に1枚の画像を記録できる。カメラは5000万画素ながら、1200万画素(4080 x 3072ピクセル)での撮影となる。
一方、空間写真を撮影すると2枚の写真が並んだ状態で保存される。画像サイズは7688×2880ピクセルだ。この画像をARグラスで見ると3D表示される。
0.5倍で撮影した写真
空間写真を撮影すると2枚の画像が並ぶ
空間撮影した写真や動画は、アプリ「写真」から見れば3D表示される。
サムネイルに「3D」とあるのが空間写真、空間ビデオで、ARグラス経由で見るとしっかりと3D表示される。
グラス経由で見るためか、ピントがぼけることもあまりなく、簡易的な立体写真、立体ビデオを十分楽しめると感じられた。
唯一の欠点は、家族や友人で集まったときでも、空間コンテンツはARグラスを装着している本人しか見ることができないことだ。
写真アプリを起動、サムネに「3D」のあるアイコンが空間写真、空間ビデオだ
この写真ではわからないが、前後の樹木が背景からしっかり浮かび上がって表示される
ARグラスを活用できるデバイス
XREALのARグラスそのものは、すでに複数の製品が販売されている。パソコンやスマートフォンに接続して使うことができ、また、ARグラスにBOX型のデバイス「XREAL Beam」を接続すればiPhoneのワイヤレス接続やゲーム機などの接続も可能だ。
一方、「XREAL Beam Pro」にARグラスを接続すれば、AndroidアプリをそのままARグラス内に表示できる。
「視線追従モード」と「画面固定モード」の切り替えも可能で、画面のキャストもできる。
そして、ARグラスを使用しながら本体の充電もできるので、長時間の継続利用も実現している。サイズが小さいためグラスのペアとして持ち運びも楽だ。
最大の特徴が、カメラを使った空間ビデオ、空間写真を手軽に撮れること。3Dコンテンツの普及はなかなか進んでいないが、街中で手軽に3Dスナップ撮影が可能であり、さらにARグラスを使うことで高い没入感に浸ることができる。3Dコンテンツをより身近な存在にしてくれると感じた。
なお、今回はARグラスの「XREAL Air 2 Ultra」そのものについてのレビューは行っていない。「XREAL Air 2 Ultra」はカメラを搭載しており、パソコンに接続すればハンドトラッキングも可能だ。
今回試用した「XREAL Beam Pro」には、ベータ版として「ジェスチャーインタラクション」機能が搭載されており、ハンドトラッキング操作や6DoFにも対応するようだが、そちらのテストはまたの機会に行いたい。
XREAL Air 2 Ultraのフル機能を使えばより高度な操作が可能になる
欲を言えば5G通信に対応し、単体でスマートフォンとしても使えるとさらに便利だと感じた。ちなみに中国では日本と同じWi-Fi版に加え、5G版も販売されている。
本体価格が比較的安価なことから、5G版をリリースしても価格はそれほど高くならないだろう。ぜひ5G搭載モデルも投入してほしいものだ。