●オリンピック日本代表が番組で優勝

テレビ画面を注視していたかどうかがわかる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、パリオリンピックでの「ブレイキン」競技採用に伴い、日本でさらに高まるダンス人気の傾向を、日本テレビ『THE DANCE DAY』(5月27日)、TBS『音楽の日』(7月13日)、フジテレビ『FNS27時間テレビ』(7月21日)の視聴データを基に分析した。

『音楽の日』(上段)と『FNS27時間テレビ』


○『THE DANCE DAY』3年連続で個人全体注目度上昇

『THE DANCE DAY』はプロアマ不問で「どれだけ観客を楽しませられるか、会場を沸かすことができるか」を重点に審査するダンスNo.1決定戦。3回目の開催となる今年は年齢制限が撤廃され、より幅広い層のダンサーが参加可能になった。

日本テレビでは、大会決勝の模様を毎年5月に放送しているが、注目度は年々上昇しており、視聴者のダンス熱の高まりがうかがえる。2022年の放送では個人全体注目度が62.2%だったのに対し、2024年には63.7%まで上昇。コア視聴層(13〜49歳)の注目度も60%を超える高水準を維持している。

さらに、2024年の放送では男性の注目度が62.6%、女性が64.6%と、性別を問わず高い支持を得た。この番組で優勝したブレイキンチーム「JINJO CREW」のメンバー・Hiro10は、当時パリ五輪の日本代表候補でもあり(その後日本代表へ選出)、視聴者はオリンピックへの期待感をさらに高めたことだろう。



○『音楽の日』総勢125人の豪華ダンスバトルで魅了

TBSで2011年から毎年放送されている夏の大型音楽特番『音楽の日』でも、ここ数年はダンス企画に力を入れている。今年は「垣根は越えた! 今度はバトルだ!」と題して、世界的ダンスパフォーマンスグループ・s**t kingzが企画をプロデュース。グループ対抗バトルや、各グループから選抜されたダンサー8人による1on1ダンスバトルなど、プライム帯の20時台を丸1時間使って企画を放送した。



REVISIOでは、独自の毎分波形データを使って、このダンス企画の中で最も視聴者をくぎづけにしたのはどのシーンだったのか分析。緑色の波形は、『音楽の日』19時からの個人全体注目度の推移を表している。ダンス企画が放送された20時台は、前後の時間帯より波形が上昇していることが分かる。

最も注視されたのは、グループ対抗バトルでSnow Manの岩本照・宮舘涼太・佐久間大介がパフォーマンスしたシーンで、注目度は73.9%。プライム帯の平均を15ポイントも上回る高い注目度を獲得した。最近はドラマやバラエティでの活躍が目立つSnow Manだが、対戦相手のBE:FIRSTに引けを取らない、エンタテイメント性あふれる演技を披露したことで視聴者をくぎづけに。SNSでも称賛の声が相次いだ。

企画はその後、総勢125人のパフォーマーが一堂に会して踊る圧巻のクライマックスを迎える。1時間にわたるダンス企画全体の注目度は62.5%で、全体を通してもプライム帯の平均を超える結果となった。



大型歌番組の中で、ダンスだけで構成された企画が成立する時代が来ることは、数年前までは考えられなかったことだろう。ダンス人気は若年層や一部の人たちのものだけではなく、文化として日本に浸透していることが注目度の高さに表れていると言えそうだ。

●『FNS27時間テレビ』芸人と高校生たちが見事なコラボ

「日本一たのしい学園祭!」をテーマに放送された今年の『FNS27時間テレビ』は、同局の人気バラエティ『新しいカギ』出演メンバーの霜降り明星、チョコレートプラネット、ハナコが総合司会を務めた。「学校かくれんぼ」『逃走中』『ハモネプ』などフジテレビの人気コンテンツ特別版が放送される中、トリを飾った企画は「カギダンススタジアム」。全国各地の高校生ダンサーが、『27時間テレビ』の出演タレント一人ずつとコラボして、この日のために作ったオリジナルダンスを披露した。

芸人が忙しい合間を縫って本気でダンスに取り組む姿、高校生との強い絆を感じさせるパフォーマンスに多くの人が魅了されたこの企画を、毎分波形で振り返る。



18時50分頃から始まった同企画の中で、最も視聴者がくぎづけになったのは20時1分。霜降り明星・せいやがKADOKAWA DREAMS YOUTHとのコラボダンスを披露したシーンだった。個人全体注目度は70.7%で、こちらも『音楽の日』同様プライム帯の平均を大きく超える注目度をたたき出した。

KADOKAWA DREAMS YOUTHは「D.LEAGUE」の強豪・KADOKAWA DREAMSの次世代を担うユースチーム。高校生とはいえ「プロダンサー」であるユースメンバーと「笑いのプロ」であるせいやは、互いにリスペクトし合いながら今回の企画コンセプト“日本一たのしいダンス”を徹底的に追求したダンスを作り上げた。

せいや×KADOKAWAチームのパフォーマンスは、全7組中の4組目、企画開始から約1時間が経過したタイミング。1組目〜3組目までのパフォーマンスが想像をはるかに超える高いクオリティだったことで、視聴者は画面にくぎづけになったのではないか。波形からは注目度がぐんぐん上昇していく様子が読み取れる。

ちなみに、「カギダンススタジアム」の優勝は、5組目に登場したチョコレートプラネット・松尾駿×埼玉県・武南高等学校だった。同チームのパフォーマンスが放送された20時30分〜21時頃の個人全体注目度は64.4%。こちらも引き続き高い注目度を維持していた。

ダンス企画全体を通した個人全体注目度は62.0%。ダンスをテーマにしたコンテンツが、プライム帯で約3時間もの間多くの視聴者をくぎづけにしていたことは、まさにダンス人気の高まりを象徴している結果と言えるだろう。



○若い世代から幅広い層に支持が浸透

このように、多くの人々を惹きつけ高い注目度を記録しているダンスコンテンツ。この人気ぶりは、「ブレイキン」というオリンピック新種目への注目度にも直結するだろう。若い世代を中心として広がった支持が幅広い層に浸透し始めた今、パリ五輪でのブレイキン競技が日本においても盛り上がることは間違いない。

オリンピックで初めて正式種目として採用される「ブレイキン」は、ストリートカルチャーから生まれた新競技。DJの即興の音楽に合わせて1対1で対戦。選手たちは事前に音楽を知らされないため、即興性と個性の表現力が問われる。主な要素は「トップロック」「フットワーク」「パワームーブ」「フリーズ」の4つで、これらを組み合わせたパフォーマンスで競い合う。

日本からの出場選手は、男子では旗手を務める「Shigekix」こと半井重幸選手(22)が注目株。スピーディーな動きと音楽との調和が持ち味で、世界選手権でのメダル獲得歴もある。もう1人は「Hiro10」こと大能寛飛選手(19)で、今年に入ってから急成長を遂げているブレイキン日本代表最年少選手だ。

女子では、世界選手権優勝経験を持つ2選手が出場。「AYUMI」福島あゆみ選手(41)は独自の技と巧みな足さばきが特徴。一方「AMI」湯浅亜実選(25)は、流れるような動きと高い技術を持つオールラウンダーとして知られている。

ブレイキン競技は、女子が8月9日、男子が同10日に行われる。

REVISIO 独自開発した人体認識センサー搭載の調査機器を一般家庭のテレビに設置し、「テレビの前にいる人は誰で、その人が画面をきちんと見ているか」がわかる視聴データを取得。広告主・広告会社・放送局など国内累計200社以上のクライアントに視聴分析サービスを提供している。本記事で使用した指標「注目度」は、テレビの前にいる人のうち、画面に視線を向けていた人の割合を表したもので、シーンにくぎづけになっている度合いを示す。 この著者の記事一覧はこちら