「MEZZO PIANO」20周年Tシャツ

写真拡大

 1999年からテレビアニメ第1期が放送を開始した東映アニメーション制作の「おジャ魔女どれみ」、子ども服ブランド「ナルミヤ・インターナショナル」の「エンジェルブルー」、同時期には、スマートフォンの“前身”となるガラケー…近年、2000年代初頭にはやったキャラクターやアニメが復刻しており、アラサー世代を中心に話題となっています。

 BANDAIは「おジャ魔女どれみ」のカプセルトイをリリース、ナルミヤ・インターナショナルはエンジェルブルーをはじめとする平成ガールズから絶大な人気を集めていたキャラクターの商品をしまむらやドン・キホーテ、SPINNSなどとコラボ。多くの企業が、ガラケーをモチーフにしたアイテムを発売するなどしています。また、KDDIのガラケー「INFOBAR」がフリマサイトなどで、今なお、売買されたりもしています。

 同時期を小学校時代に過ごしたアラサーの筆者も、「おジャ魔女どれみ」や「ナルミヤ・インターナショナル」のファッションに心を躍らせた一人です。

ナルミヤのショッパー、プロフ帳 夏休みは「大好き!五つ子」「キッズ・ウォー」

 アラサー世代の中には、夏休みというと、TBS系の昼帯ドラマ「大好き!五つ子」や「キッズ・ウォー」を見たり、ナルミヤブランドのショッピングバッグに水着やゴーグル、タオルを入れてプールに通っていたという人は多いのではないでしょうか。

 また、連続ドラマ「ごくせん」や「野ブタ。をプロデュース」(ともに日本テレビ系)にハマり、「歌姫」と称される歌手の浜崎あゆみさんや倖田來未さんの曲を口ずさんだりした人も多いと思います。

 私たちの世代が社会人になったころから、職場の人間関係を“仕事”として割り切る人や、飲み会を好まない人がメディアで取り上げられるようになったほか、“おひとりさま”という生き方を、結婚適齢期に気兼ねなく選択できるようになってきました。

 しかし、小学生の頃を振り返ると、人とのつながりや絆を大切にしていた世代のように感じます。例えば、「一期一会」という言葉がはやり、学生生活の1コマを切り取ったイラストやポエムに共感していた人も多いのではないでしょうか。あるいは、友人と「プロフ帳(プロフィール帳)」のやり取りをしていた人も多くいると思います。プロフ帳には名前や誕生日、血液型、星座、好きな食べもの、好きなアーティスト、好きな色、好きな人の有無など数多くの記入項目があります。あの頃の私たちは、自分のことを他者に話したくてたまらず、他者のことを知りたくてたまらなかった世代なのです。

ナルミヤブランドはいち早く「多様性」キャッチ

 当時、小学生の間で一世を風靡(ふうび)していたナルミヤ・インターナショナルのエンジェルブルーをはじめ「メゾピアノ」「デイジーラヴァーズ」「ポンポネット」「ブルークロスガールズ」。それぞれのブランドによって、パワフル、ポップ、ラブリー、フレンチスタイル、スポーティーなどと異なるテイストを持っていました。「多様性」や「ジェンダーレス」といった言葉は耳慣れなかったものの、ガールズたちの好みや個性が尊重されていました。

 エンジェルブルーとデイジーラヴァーズはポップなデザインが特徴で、子どもならではのかわいらしさを引き立てるデザインの洋服を多く扱っていました。プリンセスのようにかわいらしくなりたいガールズの思いをメゾピアノが応え、女の子らしさという枠組みにとらわれたくないガールズの存在はブルークロスガールズが肯定していました。ポンポネットは自己主張が激しい洋服が苦手な子でも着やすいデザインのファッションアイテムを展開していました。

 さらに、ファッション誌「ピチレモン」(学研)の人気モデル4人とエンジェルブルーがコラボしたアイドルグループ「ピポ☆エンジェルズ」が人気を博しました。ピポ☆エンジェルズと同世代のガールズたちも彼女たちのようにボトムスにチェーンベルトをつけるなど、細部にまでこだわったポップなファッションを楽しんでいました。

なぜ、“平成コンテンツ”復刻アイテムがアラサー世代に刺さるのか

 私たちが小学生のときに好きだったアイテムを自分で稼いだお金で再び手に取るのは青春の甘酸っぱさを思い出したいだけではなく、昨今のアパレルのトレンドや国内における活気のなさ、将来への不安なども関係していると思います。

 子どもの頃はキュートで、ポップな洋服に憧れていたアラサー世代ですが、現在はこの世代を中心にくすみカラーやジェンダーレスなデザインの洋服が人気です。そもそも、近年においては昔のようにファッションジャンルは細分化されていないように思います。また、将来を見据えて、ファッションにお金をあまりかけない人も多いといわれています。
 当時のガールズたちの間で人気を集めていたブランドが手掛ける洋服や雑貨はポップで、細部にまでこだわりつくしたデザインのものが多く、現代よりも活気があった時代を反映しています。また、バブルははじけていたものの「コスパ」という言葉はあまり使われておらず、多くのガールズたちが1万円前後のティーシャツを着ていたわけではないものの、高価な子ども用の洋服や雑貨が肯定的に受け入れられるだけのゆとりが国内にあったように思います。

 2000年代初頭は大人たちもファッションを自由に謳歌しており、当時のアラサー世代には、女性ファッション誌「CanCam」(小学館)で人気となった蛯原友里さんの“めちゃモテファッション”に憧れて、装いをまねたり、俳優の深田恭子さんが主演した映画「下妻物語」の主人公・竜ヶ崎桃子のようにロリータファッションを楽しむ人、カジュアルな洋服を好む人などさまざまで、それらを受け入れる温厚さも経済的ゆとりもありました。

“平成ガールズ”が大人になって社会の厳しさを知った今、あの頃を思い出せる懐かしアイテムを手にとることで、夢や希望を抱き、純粋だった当時の自分の姿を無意識のうちに思い出している人もいるのではないでしょうか。