融合と共存がテーマ、水樹奈々が3時間半の大スペクタルなステージで観衆の視線を釘付けに
『NANA MIZUKI LIVE JUNGLE 2024』2024.07.07(sun)Kアリーナ横浜
6月15日・三重県営サンアリーナ公演を皮切りに全国4都市で8公演が開催された『NANA MIZUKI LIVE JUNGLE 2024』。7月6日、7日に行われた神奈川・Kアリーナ横浜2DAYS公演には35,000人の観客を動員。歌声と歓声が幸福な空間を作り上げた。ツアーファイナルを飾った7月7日の公演の模様をレポートする。
オープニングムービーが流れた後、ステージ中央の高台に現れて歌い始めた水樹奈々。被っていたフードを外した姿がライトを浴びると、開演を待ちわびていた人々の歓声が一際高まった。1曲目に届けられた「Turn the World」の時点で、歌声の熱量は既に最高潮。生い茂る草木花と近未来的な要素が融合したステージはもちろん、広大なKアリーナ横浜の隅々までが、生命を宿しているかのように振動していた。
水樹奈々
「囚われのBabel」と「禁断のレジスタンス」も届けられた後に迎えた最初の小休止。「今回は、初のアリーナオンリーのツアーです。とんでもないセットリストというか、情報量過多というか(笑)。とびきり熱い時間になっていますので、全力で集中してください。Kアリーナは5月の『KING SUPER LIVE』でお邪魔したんですけど、初めてソロライブで思う存分歌わせていただきます!」――気合たっぷりの挨拶の直後、驚愕させられる演出が飛び出した。「ETERNAL BLAZE」がスタートするとステージ上では火柱が激しく立ち上り、突如現れたウォータースクリーンに様々なグラフィックが映し出されたのだ。約13.2トンの水を使用していたそうだが超常現象のような水と火の饗宴には、息を呑む他なかった。続いて「沈黙の果実」と「Link or Chains」も披露されたが、バンド“Cherry Boys”の演奏と歌声のコンビネーションが絶妙極まりない。各曲を豊かに表現する歌声をバンドサウンドがさらに輝かせているのを感じた。
新たな衣装に着替えてから歌い始めた「sympathy」。鮮やかなネオンカラーが目を引く全身のデザインは、“愛を届けるBig bird=水樹奈々”をイメージしているのだという。ダンサーチーム“Team YO-DA”を率いながら歌い踊る姿を眺めながら愛を受け止めた観客は、「Hungry Hungry」や「ドラマティックラブ」でも大盛り上がり。「Level Hi!」では、観客が一斉に掲げたタオルが回転し、爽やかな風を巻き起こしていた。
水樹奈々
中盤で和やかなひと時となっていたのが、今回のツアーの全公演で恒例となっていた“チェリボのNo.1ナナソン”。Cherry Boysのメンバーが選んだ“一番○○な曲”を演奏するこのコーナーを最終日に担当したのは、設楽博臣(Guitar)だった。「一番最初に触れたナナソン」として彼が選んだのは、「New Sensation」。水樹の曲だと知らないまま“気になる曲”としてずっと心に留めていたらしい。Cherry Boysでギターを弾くことになった後、ラジオで流れたのを聴いてナナソンだと知り、縁を感じたのだという。思い入れの強い曲でギターを華麗に奏でた彼を、観客の歓声が讃えていた。そして「熱い曲が続いておりますので、ちょっとクールダウンしていただけたらなと。ジャングルと言えば自然。星空が綺麗に見えるんじゃないかなと思います。今日は7月7日ですし、星を感じられる曲をお届けします」と語ってから穏やかな歌声を響かせた「Polaris」。続いて届けられた「優しい記憶」は、ウォータースクリーンに投影されるグラフィックを眺めながら耳を傾けるのが、とても心地好かった。
ジャングルの奥地にある施設で研究員として働く水樹の奮闘を描いたブリッジムービー。 “古のアドバイザー・ヒロシ”として神谷浩史が登場したり、女性声優界の一大勢力となっている“17歳教”の挨拶をやらされたり……観客を沸かせるネタが満載の映像が流れた直後、会場を一気にドラマチックな世界と化したのが「ADRENALIZED」だった。三原色を基調としつつ、野性的なヒョウ柄も盛り込んだ衣装に着替えた水樹が花道に登場。すると花道全体に密かに仕込まれていた巨大クレーンが起動して仰天! 先端部分に乗った彼女は歌いながら笑顔を浮かべて手を振り、クレーンは台座を支点としながらゆっくりと回転。大がかりな装置を駆使した空中浮揚が、観客を激しく興奮させていた。続いて「UNBREAKABLE」に突入してからも高まり続けていた熱気。「革命デュアリズム」では、T.M.Revolutionが音源で担当していたパートを観客が全力で大合唱。ステージの隅々まで駆け巡りながら歌う彼女の姿が、民衆を率いる女神のようだった。
水樹奈々
観客のリクエストに応えて“17歳教”の挨拶を2回もステージ上で披露。念願のウォータースクリーンが実現した喜びについても語ったMCタイムを経て、ライブは後半へと突入した。ダンサーチームやバンドメンバーと共に花道をパレードした「POWER GATE」。歌う彼女を人々の大合唱が包んだ「Love Brick」。観客が掲げた青いペンライトが神秘的な空間を作り上げていた「時空サファイア」……強力な3連発の後、再び迎えた小休止。「マスクの着用が任意になって、みなさんのお顔を見ることができて、マスク越しじゃない声を聴けるこのボリューム感! みんなの愛をものすごく感じています」と語った彼女は、ツアーのテーマについて説明した。「テーマは【融合と共存】。私のルーツは演歌、歌謡曲。そこにいろいろな音楽を取り入れて水樹らしい音楽を作ってきました。そして “融合”にはもう1つ意味があって……みんなの声でようやく曲が完成すると思っています。これからもたくさんの曲たちをみんなと一緒に“融合”“共存”させて、輝かせていきたいです」――このMCの後に届けられた「suddenly~巡り合えて~」は、観客の歌声が穏やかに合流。まさしくライブだからこそ実現できる【融合と共存】だった。
水樹奈々
オリジナルグッズのTシャツを着た水樹がステージに再登場したアンコール。「chronicle of the sky」と「Phase 21」が披露された後、「このライブの模様が10月にANIMAXで放送されることが決定」「15枚目のアルバムの制作が進行中」という旨が発表されて観客は大喜び。歌手デビュー25周年を迎える来年は、様々な展開が目白押しであることも告げられ、期待を大いに高めてくれた。そして「7月7日」と「TRANSMIGRATION」も届けられてからなだれ込んだ「Synchrogazer-Aufwachen Form-」は、本当に圧巻だった。クレーンに乗って宙を舞いながら歌う彼女の姿は、まるで全身を燃え上がらせるかのよう。ウォータースクリーンには多彩なグラフィックが次々と浮かび上がり、聴覚はもちろん、視覚も最大限に刺激してくれた。
嵐が過ぎ去ったかのような余韻を残して彼女はステージを一旦後にしたが、鳴りやまない拍手と歓声に応えて行われたダブルアンコール。「ツアーファイナルなので、もう1曲だけ歌ってもいい?みんなに育ててもらった大切な曲です。コロナ禍を経て、大変なことはあるけれど、自分を信じてあげて、自分を認めて、自分らしく道を突き進んでほしいなと。私自身もそうありたいという想いを込めて」という言葉が添えられた「SUPER GENERATION」が、ラストを飾った。観客から届けられる想いを強く感じたのだろう。感極まって瞳を潤ませながら歌っていた姿が思い出される。ファンに深く愛されている歌姫が幸福を噛み締めている様は、客席にいた我々の心も温めてくれた。
約3時間半に及ぶステージは、文字通り片時も目を離せない瞬間の連続だった。あらゆる曲を最高のコンディションを保ちながら歌い上げていたが、常日頃から凄まじい鍛錬と努力を積み重ねているのだと思う。響かせる歌声はもちろん、ステージ上で輝く姿も観客をときめかせる水樹奈々のすごさを改めて実感したライブだった。
取材・文=田中大 撮影=上飯坂一、さいちょー
水樹奈々