「協会は訴訟で負けると判断して“辞退”にさせたのでは」 宮田笙子の不祥事について弁護士が解説
体操日本代表女子のキャプテン、宮田笙子(しょうこ・19)が飲酒と喫煙の発覚によりパリ五輪出場を辞退した。テレビをつければ、彼女の非を指摘する意見ばかりが目立つが、かような“正論”は当を得ているといえるのか。法律家や五輪出場経験者に聞くと……。
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日本体操協会が都内で記者会見を開き、宮田の五輪辞退を発表したのは、開幕を1週間後に控えた7月19日のことだった。
「15日に内部から協会へ情報提供があり、18日に宮田選手本人を合宿地のモナコから緊急帰国させ、飲酒と喫煙の事実確認を行い、19日の発表に至ったようです」(JOC関係者)
素行の悪さが問題視されてきた
1964年の東京五輪以来、団体総合で60年ぶりのメダル獲得が期待されていた体操女子。そのエースが起こした不祥事は世間に大きな衝撃を与えた。
「やんちゃで勝気な性格の宮田選手は、私生活上のうわさも含めて、かねて素行の悪さが問題視されてきました。今回、本人は飲酒と喫煙について“一度だけ”と説明していますが、常習性を疑う声もある。また、飲酒は都内の『味の素ナショナルトレーニングセンター』内の一室という、日の丸を背負うアスリートが強化のために使用する公共の場で行われていたそうで、たちが悪いと非難する向きもあります」(同)
「釣り合わない」
記者会見に前後して連日、テレビは宮田の問題を報じた。大勢のコメンテーターが“真面目にやっている人に失礼”“自覚が足りない”などと彼女の非を相次いで指摘し、出場辞退は致し方ないと述べた。
だが、宮田の辞退は適切な処置だったのか。元テレビ朝日法務部長で弁護士の西脇亨輔氏に聞くと、
「今回、協会は正式な“処分”を下していません。宮田選手と話し合い、本人が納得して“辞退”した形を取らせています。おそらくこれは、協会が“処分”として五輪への出場権を剥奪してしまうと、後から訴訟や仲裁を起こされた場合、負ける可能性があると判断した結果だと思います」
なぜ、負けるというのか。
「20歳未満の飲酒喫煙は違法ですが、行った当人への罰則はなく、直接的な被害者も存在しません。法律的な視点に立てば、そのような罪に対して、五輪の出場権を剥奪する罰はあまりに重く、釣り合わないと考えられるのです」(同)
「代表権を失うほどではない」
五輪出場経験がある元陸上選手の為末大氏も、
「ピークが短い体操選手は、4年に1度しかない五輪に競技人生の全てを捧げていると言ってもいい。宮田選手の飲酒喫煙が問題なのはもちろんですが、きちんと謝罪を行えば、代表権を失うほどではないと思います。今からでも協会は彼女の辞退を撤回し、出場を認めてあげてほしいと切に願っています」
テレビが垂れ流す“正論”などに振り回されることなく、冷静な判断がなされてもよかったのではあるまいか。
「週刊新潮」2024年8月1日号 掲載