日本通運の応援の様子(『第94回都市対抗野球大会』から)

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7月19日(金)に開幕した『第95回都市対抗野球大会』。アマチュア球界の最高峰とも呼ばれるこの大会は、各地の予選を勝ち抜いた社会人野球の代表32チームが出場。東京ドームを舞台に、その頂点を目指して熱戦を繰り広げている。

グラウンドでの戦いだけなく、『都市対抗野球』では毎回、もう1つの熱い戦いが注目を集めている。それは、スタンドで行われる両チームの“応援合戦”。『都市対抗野球』の名物の1つとなっており、実際、1回戦16試合を対象に『応援団コンクール』を開催。これは各チームの観客席でパフォーマンスを行う応援団を審査する企画で、応援でも真剣勝負が展開されている。

そんな『都市対抗野球』の応援とはいかなるものなのか? そして出場チームはどのような意気込みで臨んでいるのか? 今回は出場チームを代表して東京ガス(東京都)と日本通運(さいたま市)に、応援に込めた思いを聞いた。

企業色と地元色にあふれた華やかな応援

自軍の攻撃時に、選手たちを鼓舞するため、ブラスバンドが演奏する応援歌に合わせて歌い、チアリーダーや応援団がパフォーマンスを披露する……野球の応援と言えば、このようなものを想像する方が多いだろう。『都市対抗野球』の応援ももちろんそうなのだが、その企業の個性を生かした応援は迫力と華やかさに満ちており、他とは一線を画しているものといえるだろう。

日本通運では“応援のプロフェッショナル”として明治大学応援団吹奏楽部を招聘。彼らを中心に約30名の吹奏楽団を結成して応援歌の演奏を行っているという。取り上げる楽曲は人気曲が中心のようだ。「野球応援でお馴染みの『サウスポー』、『宙船』、『狙い撃ち』など有名な曲や、都市対抗野球でお馴染みの『さいたまコール』をやる予定です。どれも盛り上がりやすい曲ですので、お客さまも一緒に応援してもらえるのではないかと」(日本通運)

さらに日本通運では、「攻撃以外でも応援を楽しんでほしい」という思いから攻守交代の時間に応援部によるダンスパフォーマンスを実施。こちらも『Bling‐Bang-Bang-Born』、『ジャンボリミッキー!』、『POKEDANCE』といった人気曲を用意しているそうだ。

一方、東京ガスでも『ジャンボリミッキー!』は人気曲。野球部から応援でやってほしいというリクエストがあったそうだ。他にもここ一番の得点チャンス時の『アタックコール』、代々使用している『つなぎ』がオリジナル曲が定番の応援歌として人気を集めている。中でも『つなぎ」はSNSでバスりを生んだそうだ。「エレキベースの演奏がSNSで話題になりました。この曲ももちろんやりますので、こちらも楽しんでもらえたら嬉しいです。また、『アタックコール』では、お客さまにも団扇を振って“ゴーゴー”の掛け声でご協力いただきたいですね」。

応援も真剣勝負!『SHOW TIME』は最大の見せ場

『都市対抗野球』の応援は試合中だけにはとどまらない。5回裏終了後には『SHOW TIME』と題して、それぞれ2分間の応援パフォーマンスを披露。応援そのものにスポットが当たる場面が存在するのだ。東京ガスでは、同社の人気キャラクター、パッチョ、電パッチョ、水パッチョが登場し、『SHOW TIME』を盛り上げる予定のようだ。「3人(?)揃って登場します! 男女リーダーとともに当社オリジナルアレンジの『東京音頭』を元気いっぱい踊ります」。

日本通運は、具体的なパフォーマンス内容は明かしてもらえなかったが、「当社の応援理念である“応援される人より頑張る”を全員が体現する」とのこと。どんなパフォーマンスが見られるかは、当日のお楽しみといったところだろう。

さらに、試合前の「エール交換」も恒例。こちらもそれぞれ工夫を凝らしたパフォーマンスで会場を沸かせている。

「歴史のある『日本通運応援歌』をスタンド全員で歌い、大応援団の歌声で選手たちにパワーを与えます。この間お客さまにはタオルを振っていただきますので、スタンドをNXカラーに染めあげていきましょう!」(日本通運)

「相手応援席を向いてエールを振るのが一般的だと思いますが、我がチームは、相手チームに礼をした後向き直り、自チームの応援席を向いてエールを振っています。“応援リーダーは客席のお客さまをリードする役目”という考え方のもと、創部当時から同じように行っています」(東京ガス)

スタンドで行われるこれらの応援パフォーマンスを審査するのが、先にも述べた『応援団コンクール』。これには1つの注目すべきポイントがある。審査基準として、「チームを盛り上げる応援、郷土色」が挙げられているため、各チームとも地元の特色を盛り込んだ個性豊かな応援を繰り広げられるのだ。中でもさいたま市代表の日本通運は、積極的に郷土色を盛り込んでいる。「さいたま市には盆栽、鰻、太鼓、人形と昔から受け継がれている伝統産業があるので、この要素を取り入れて、地元をPRしていきたいと思っています」。

一方、東京ガスは、多くの文化が混ざり合う東京の代表ということで、郷土色を出しにくいという背景があるそうだ。そんな中でオリジナルアレンジの『東京音頭』は、東京をイメージさせるものの1つになっている。「オリジナルアレンジ『東京音頭』を継続使用することで、東京ガスが東京の代表であるというイメージを持っていただけるのではと期待しています」と語ってくれた。

すべての社員と地元の人々の思いを応援に乗せて

さて、そんな応援パフォーマンスを牽引する応援団は、当然その企業に勤める人々が参加している。日本通運は、毎年メンバーを入れ替えて編成した応援団を一新。今年から応援部を設立したそうだ。リーダー2名、チア12名で構成で今年の応援を牽引する。

東京ガスは長年の伝統を持つ応援団が自慢。その分、「主将はじめスタッフの平均年齢が若干高め」だと語るが、「長年培った経験と技術で、選手の後押しをしていきたい」と意気込む。また野球部のOBも顔を揃えているようで、「誘導チームの1人は、当社が優勝した第92回大会の胴上げ投手」なのだそうだ。かつてはグウランドを駆けまわり、熱い応援を一身に受けた選手が、今度はスタンドから後輩たちに熱いエールをおくる。そんな感動的なエピソードも『都市対抗野球』ならではだろう。

野球の試合同様に、企業と地元の誇りをかけた戦いが繰り広げられる“応援”だが、それにかけるチームの思いも熱い。日本通運の応援団は、6月から週2回の練習を続け、そのパフォーマンスを高めてきたという。「演技は上達したと思います。何より、全員が楽しく練習に取り組んできました。この笑顔を球場でお届けできるようにしたいですね」と手応えを語ってくれた。

東京ガスは「応援も戦力の1つと確信しています」とさらに熱が入る。「スタンドのみなさんにも私たちと一緒に選手に手拍子、声援を送っていただきたいと思います」と、会場中を巻き込んだ応援でチームを盛り上げていくようだ。

さて、ファンとしては試合はもちろん応援合戦も存分に楽しみたいところ。では、どんなところに留意して、応援を楽しめば良いのだろうか。最後に両チームに応援の見どころを教えてもらった。

「舞台上で演技するパフォーマーとは別に観客のみなさまにも応援を楽しんでもらうべく、観客席の方へ応援団が盛り上げに向かいますので、ご一緒に応援していただけますと嬉しいです」(日本通運)

「弊社では、先輩方から定番の応援曲を受け継いできました。その伝統をベースに、流行などを考慮して選曲したアトラクションを攻守によって使い分けメリハリのある応援を展開しています。スタンドのお客さまとの一体感醸成を目指して、ステージ上の部員のみならず、通路を駆け回りお客さまにお声がけする部員も全力で応援します。夏の1日をみなさんで楽しんでいただけると嬉しいです」(東京ガス)

なお、『応援団コンクール』ではファン投票も実施している。投票期間は7月27日(土)まで。ぜひ実際に球場に足を運び、熱気あふれるプレーとともに応援パフォーマンスを体感してほしい。必ず心に響く応援があるはずなので、その応援団には1票投じてみてはいかがだろうか。