Image:Arc’teryx/AFE

最後にフルマラソンを走ったのは7、8年前…。ランニングイベントにエントリーしてもハーフマラソンがいいところで、昨今ではランナーが増加中の「トレラン(トレイルランニング)」なんてもってのほか、と敬遠していたのですが、三十代半ばを過ぎ一念発起してトレランに初挑戦。

すると意外や意外。ロードを走るよりエンタメ性に長けているし、これまでどんなスポーツでも経験したことのない“脳汁ドバドバっ!”はトレランならでは。ハマっているトレイルランナーの気持ちがわかりました。

アークテリクスがトレランに本格参戦!?

今回参加したイベントは「ARC'TERYX /AFE『RUN&(ランアンド)』Trail at Mt.Takao with Helinox」。

Image:Arc’teryx/AFE

高尾山をぐるっと回る初心者向けのトレランイベントで、主宰するのは、カナダ・バンクーバー発アウトドアブランド「ARC'TERYX(アークテリクス)」と東京を拠点に活動するランニングコミュニティ「AFE(Athletics Far East)」。

そして、トレラン中のリラックスタイムをアウトドアチェアで人気のヘリノックスが協賛するというもの。

Image:Arc’teryx/AFE

「アークテリクスがトレラン?」という声も聞こえてきそうですが、それもそのはず、これまでトレランザックやウェアはリリースしていたものの、完全自社デザインのフットウェアコレクションは、2024年春夏シーズンがブランド史上初めてなんです。

アークテリクスでは、 2021年6月に米・ポートランドにフットウエアデザインセンターを設け 、オリジナルフットウェアの開発をスタート。それから約3年の歳月をかけて、今季の春夏シーズンが待望のお披露目となりました。

Image:Arc’teryx/AFE

そんなおめでたいイベントに白羽の矢が立ったのが、これまでさまざまなランニングスタイルを提唱し、東京をはじめ、国内のランニングシーンを牽引してきた「AFE」というわけ。

脳汁ドバドバ! トレランで妄想した人類誕生の記憶

Image:Arc’teryx/AFE

ふだんから多少なりロードを走りつつ、登山もそこそこに日帰りのトレッキングやテント泊など、雪山以外はたしなむ 身としては、トレランなんて目と鼻の先のように思えるが、ところがドッコイ。その一歩が非常に重いんです。

ロードも登山も楽しいことばかりではなく、殺風景のロードを走るのは苦痛だし、登山にしても重い装備を背負って険しい道を登っていくのに「なんでこんなことやってるんだろう…」と思わないこともない(もちろん、完走・完登したときの達成感は何事にも代えがたい)。

そんなロードと登山のツラさを知る身としても、トレランをチャレンジするまでの道のりは険しいのです。登山で怖い目にもあったことがあるし、走ってケガでもしたら…と不安が脳裏をよぎります。

とはいえ、こうしたイベントに参加する機会を得て、尻込みするわけにもいきません。

Image:Arc’teryx/AFE

コースは、スタート地点となる「Mt.TAKAO BASE CAMP」を出発し、高尾山山頂まで行って、スタート地点に降りてくるというもの。

「Mt.TAKAO BASE CAMP」を出発するや否や、やはり大人数で走るのは楽しい。ペースは初心者なので軽めのジョグ。そして、登山客を抜かすときは「歩く」という高尾山のトレランルールもあって、おしゃべりしながら楽しい道のりです。

ロードとは違って、岩肌や木の根っこ、落ち葉を踏み鳴らすと何よりも山道を走る気持ち良さを感じられました。さらに登山よりも荷物を背負わない分、身のこなしも軽やか。

Image:Arc’teryx/AFE

じんわりと汗をかいて山頂に到着。状況が変わったのはここから。

山頂から「Mt.TAKAO BASE CAMP」までの道のりは一切が下りの山道に。当然、登ってきた分だけ下るわけですが、ここまで“初心者ジョグペース”で流していた同行メンバーの目の色が変わって、下りを一気に走り出しました。

Image:Arc’teryx/AFE

「みんな経験者か!」と思いながら必死にしがみついていくと、これがおもしろい。必要最低限のギアのみを身につけ、さながら忍者のように。いや、大自然のなかのパルクールか。一歩一歩踏み足を気にしながらも勢いに任せて下り道を駆け抜けます。

それでも、転倒・滑落は一大事につながる。細心の注意を払いながら、目視で一歩一歩足の踏み場を確認する必要がありますが、スピードに乗っているので判断は一瞬。登山でもロードでも感じられないリスクを負ったスリル感にアドレナリンが放出され、脳汁がドバドバ出てきます。

Image:Arc’teryx/AFE

かつて、まだ人類が未開のころ、ヒトはこうして着のみ着のままで森のなかを駆け抜けていたのかも。

そんな想像をしていると、あっという間に30分以上山道を駆け下りていました。登山よりもロードを走るよりも足腰はもちろん、とにかく脳みそに疲れが…。

トレラン以外では感じたことのない、この疲れと達成感はクセになるに違いない……。こうして痛快で愉快なトレランデビューとあいなったのでした。

完全自社製のフットウェアのスペックは?

この日、集まったメンバーの足元には、今シーズンリリースされたばかりの「SYLAN(シラン)」(ウィメンズはこちら)と「NORVAN(ノーバン) SL 3」(ウィメンズはこちら)を着用。

Image:Arc’teryx/AFE
「SYLAN」34,100円(税込)

「SYLAN(シラン)」(写真上)は、トレランにおける下りでのスピードを重視した設計で、軽量で反発力が特徴のミッドソールが目を引く一足です。

アッパーは通気性と耐久性を兼ね備えた素材を採用したモデルのほか、防水のGORE-TEXモデルもラインナップ。ソールには、トレランには心強い味方となるグリップ力が抜群のアウトソールを採用しています。

Photo: 山田卓立
「NORVAN SL3」27,500円(税込)

一方、「NORVAN(ノーバン)」は、アークテリクス本社のある「North Vancouver(ノースバンクーバー)」を縮めた “ノーバン” の愛称がつけられたマウンテンランニングコレクションです。

このシリーズでは、「ノーバン」の名を冠したシャツやフーディなど、バラエティあふれるラインナップを展開しています。

Image:Arc’teryx/AFE

アークテリクス自身が「史上最強のトレイルランニングシューズ」を謳う一足は、超軽量を実現したモデル。アッパーに採用された素材は、メッシュ状にデザインされ、重量を最小限に抑えながら高い通気性を発揮します。もちろん、ソールには、「SYLAN(シラン)」同様、Vibramメガグリップ アウトソールを採用し、グリップ力を発揮。

カラーとタンは、ニット素材に包まれて靴下のような一体感の履き心地で、足元の不安定なトレイルをサポートしてくれます。

実際に山道を駆け降りているとき、まるで裸足で走っているような一体感とグリップ力を感じました。昨今、特にロードのランニングシューズはクッション性や推進力を念頭においた厚底ランニングシューズが主流ですが、個人的にはトレイルでは安定感を担保したい。何よりも山道をしっかりと掴むような素足に似た感覚は「走っていること」を再認識させてくれます。

「史上最強のトレイルランニングシューズ」を謳うことにもうなずける一足でした。