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電子マネーやネット銀行、各種サブスクリプションなど、Webサービスの利用者は年々増加しています。これにより、Webサービスの利用者本人が亡くなってしまったあと、遺された家族がそれらを解約できず、トラブルに発展するケースが増えているそうです。そこで、遺される家族に迷惑をかけないための生前対策について、詳しくみていきましょう。行政書士/相続・終活コンサルタントの明石久美氏が解説します。

家族の混乱を防ぐ…スマホ・パソコンで利用中のサービスは「一覧」に

スマホやパソコンで利用しているサービスの整理も必要です。使っていないサービスやアプリなどは解約しておき、利用している先を一覧にしておくことも大切です。

特に家族が把握しにくい情報は積極的に残しておきたいもの。取引先、URL、ID、パスワードのヒント、行ってほしいことを一覧表にし、その保存場所を家族に伝えておきましょう。

例えば、Aショップで2カ月ごとに定期購入・Xカード決済・要解約、B電気はB携帯会社と一緒に決済・Xカード決済、Cブログは放置でOKなど、どことどのような取引をしていて、それをどうしてもらいたいのかがわかれば行うことが一目瞭然です。

また、あなたの死後に発生した費用であっても返還請求ができるとは限らないため、早く対処できれば不要な支払いもせずに済みます。

●不要な写真、動画、メールは削除しておく

●使っていないサービスやアプリは解約・削除しておく

●見られたくない履歴は随時削除しておく

●使っているもので支払いや退会・解約が必要なサービス、家族に伝えておかなければならない情報はわかるようにしておく

スマホ・パソコンの「機器情報」もリストにまとめる

パソコンを持っている場合、大抵インターネットに接続されていることでしょう。その場合、インターネット回線をどこかの会社と契約をしています。

また、同時に、回線を使えるようにするインターネットプロバイダーと契約していると思われます。場合によっては、インターネット回線につなぐために必要なルーターという機械をレンタルしています。

もし、パソコンでインターネットを使用しているのなら、これらの情報と、どこと取引しているのか、どのようにしてほしいのかをわかるようにしておく必要があります。

そして、家族に伝わるよう、パソコンのデスクトップなどにファイルを置いてあることを伝えたり、エンディングノートに残したりしておきましょう。

<残しておきたい情報リスト>

●機器情報

・パソコンやスマホのロック解除方法(家族の誰かに伝えておく)
・インターネット回線とプロバイダーの契約先
・メールアドレス・返却が必要な機器と返却先

●取引先情報(解約・退会などが必要なものを中心に)

・取引先(利用先)、URL
・アカウントやID、パスワード(パスワードは保管場所のみ残し、別の場所に控えたパスワードを確認できるようにしておくとよい)
・行ってほしいこと、決済先

家族が困らないように、スマホやインターネット回線の解約は慌てずに、必要事項を確認してから行うように書き残すことも大切です。

“謎の引き落とし”で遺産が減ることに

あなたのデジタル取引がわからない場合、また、スマホなどのロックが解除できない場合、どのようなことが起こるのか考えてみましょう。

家族は、サブスク※、定期購入、WEB明細、クレジットカード決済、キャリア決済、電子マネー決済などの把握ができません。
※ サブスク……月や年など一定期間ごとに自動で課金されるサービスのこと。解約をしないと請求されてしまう。サブスクリプションの略。
 

そうなると、必要な書類を見つけるために部屋中を探したり、送付されてくる書類から把握しなければなりません。引き落とし情報が電子メールで届いていても家族が気づくとは限りません。

解約はメールやアプリから行う設定になっていて電話番号がわからないものもあります。解約ができなければ請求がなされてしまい、引き落としができなければ数カ月後に郵送されてきた請求書で対応しなければならないということもありえます。

ネット銀行※は、キャッシュカードや取引明細書などがあれば取引していることがわかるため手続きできます。
※ インターネット銀行……インターネット上にある銀行のこと。窓口やATMへ行かなくてもネット上でお金のやりとりができる。

しかし、キャッシュカードもなく明細の郵送もない通帳レス口座※の場合、その存在に気づかないかもしれません。ネット証券も同様です。金融機関名や支店名をわかるようにしておかないと、遺産が家族に引き継がれません。
※ 通帳レス……口座通帳やキャッシュカードがない代わりに銀行の提供するアプリやサイトにログインし、インターネット上でお金の取引を可能にする口座のこと。

なお、金融機関は一般的に、家族から口座名義人が亡くなったという連絡をうけて、口座を凍結します。役所に死亡届が提出されたからといって口座が凍結するわけではありません。

いざというときのために、ネット銀行を含めたデジタル遺産についても情報リストの保管場所を共有しておきましょう。

また、電子マネーは、バーコードやQRコードを提示したりかざしたりして決済しますが、ロックを解除しなければチャージされている額はわかりません。

暗号資産は?電子マネーは?…「相続対象」となるデジタル遺産

デジタル遺産には相続の対象になるものもあります。ネット銀行やネット証券はもちろんですが、その他にも次のようなものがあります。

<相続対象となるデジタル遺産>

暗号資産※(仮想通貨)

パソコンやスマホ、預貯金口座の入出金履歴、郵便物などから利用していた取引先を特定し手続きする必要がある。暗号資産があることを知らずに相続手続きをした場合、後日この暗号資産が判明したら、追加で遺産分割などの手続きを行わなければならない。

※ 暗号資産……インターネット上に記録され、現実でも換金価値のある情報のこと。お金の代わりに支払いができたり、投資の対象にもなったりする。代表的な暗号資産に、ビットコインやイーサリアムなど。

●電子マネー(○○ペイ、モバイル〇〇など)

個別相談がほとんど。残金の返金に応じてくれるケースが多いが、長期間利用がない場合は失効する場合もある。

●航空会社などのマイレージ

手続きの期限が死亡後6カ月以内などと設けられている会社もあるが、そもそもマイレージの有効期限内に行う必要がある。

●各種ポイント

クレジットカード、量販店、通販サイトなどでたまるポイントは原則相続できない。中には、家族間カードなら移行できるものやポイントの利用が可能な会社もある。解約・放置したらポイントはなくなるため、ためるよりもこまめに使ってしまうほうがよい。

なお、電子マネーやポイントの規約は改訂されることがあります。最新情報を確認のうえ手続きをしてください。

明石 久美
相続・終活コンサルタント/行政書士