7月10日は「納豆の日」 “糸引き”と“ひき割り”で栄養が違う? 賞味期限切れでも食べられる? 管理栄養士に聞いた
7月10日は、全国納豆工業協同組合連合会が制定した「納豆の日」です。納豆というと、タンパク質や食物繊維、鉄分、カルシウムといった栄養素を含んでいたり、納豆の酵素「ナットウキナーゼ」が血液をサラサラにしてくれるなど、“健康によさそう”というイメージを持っている人が多いのでは、ないでしょうか。そこで、管理栄養士の岸百合恵さんに納豆の魅力について、解説してもらいました。
“糸引き”と“ひき割り”… そもそも製造方法が異なる
Q.改めて、「納豆」にはどんな栄養が含まれているのでしょうか?
岸さん「大豆を発酵させて作る納豆には、主に良質なタンパク質と鉄分、ビタミンK、食物繊維、大豆イソフラボンが豊富に含まれています。また、発酵の作用によって、大豆よりもタンパク質などの消化吸収がされやすい状態になっているため、納豆は大豆に比べて効率よく栄養素を体内に吸収することができます。
さらに、納豆菌の作用により、大豆には含まれていない、納豆独自のネバネバの元となっている『ナットウキナーゼ』が含まれ、腸内の悪玉菌を減らして腸内環境を整える、免疫力アップ、血栓の予防などの効果が期待できます」
Q. 糸引き納豆とひき割り納豆で栄養が変わったりするのでしょうか?
岸さん「糸引き納豆とひき割り納豆の違いは、粒の大きさだけでなく製造方法にあります。
一般的によく見かける糸引き納豆は、皮付きの大豆を蒸してから、納豆菌をかけて発酵させます。一方、ひき割り納豆は蒸す前に大豆を砕いて細かくし皮を取り除いてから、ゆでて発酵させます。
ひき割り納豆は大豆を砕くことで納豆菌の付着する面積が糸引き納豆よりも広くなるため、発酵過程で生まれるビタミンKが、糸引き納豆の約1.5倍になっています。粒が小さく皮も取り除かれているので消化が早く、年配の方や乳幼児でも食べやすいと思います。
糸ひき納豆は、粒がしっかりしているので食感や歯ごたえなどを味わうことができ、ひきわり納豆よりもカルシウムが1.5倍、食物繊維が1.6倍、鉄が1.3倍多く含まれています。
エネルギー量やタンパク質量に関しては、それほど変わりません」
Q.冷蔵庫に入れておくと、うっかり賞味期限が過ぎていることがあります。発酵食品とはいえ、賞味期限が過ぎたら捨てた方がよいのでしょうか?
岸さん「納豆は発酵食品でもともと腐っていると思っている人もいらっしゃるかもしれません。しかし“発酵”と“腐敗”は別で、納豆は腐敗している食品ではなく、発酵している食品です。
どちらも微生物の働きによって、物質を変化させる点は同じですが、人間にとって有用な場合を発酵、食べられなくなるような有害な場合を腐敗と呼んでいます。
消費期限とは異なり、賞味期限は『おいしく食べられる期限』で、ほかの食品と同様に、納豆も賞味期限を過ぎたからといってすぐに食べられなくなるわけではなく、腐敗していなければ1、2週間くらい期限切れした納豆を食べてもほとんどの場合は健康への害は発生しないようです。しかし、状態やものによっては体調に影響が出る可能性も否定はできませんし、何より口当たり、風味、おいしさなどすべてが大きく低下します。
具体的に腐敗し食べられない状態としては、カビが生えないはずの納豆に普段見かけないカビが生えている場合、糸を引かない納豆、水っぽくなった納豆も危険です。納豆は納豆菌によりネバネバと糸を引きますが、糸を引かないということは本来生きている納豆菌が働いていない証拠です。
発酵食品といえども腐ることがあり、これらのような場合は腐敗している可能性があるため、食べないようにしましょう。
また、ひき割り納豆は粒納豆と比べて菌が付着する表面積が大きい為、納豆菌の働きも活発で、発酵が早く進むためひき割り納豆の賞味期限は粒納豆より短いことが多くなっています。
腐っているかいないか判断できない場合は、体調を崩さないためにも、廃棄するようにしましょう」