トヨタの老舗ブランド「カローラ」なぜ複数モデルを展開する? セダン・ワゴン・SUVにかつてはミニバンも存在!? “シリーズ化”のメリットとは?
セダンやワゴンだけじゃない!? 多彩な「カローラシリーズ」
トヨタは、ひとつの名前でいくつもの車型を用意する、いわゆるシリーズ化されたモデルを複数揃えています。
たとえば「クラウン」であれば、「クラウン(クロスオーバー)」を筆頭に「クラウン(セダン)」、「クラウン(スポーツ)」、「クラウン(エステート)」と言った具合です。
また、「ランドクルーザー」も「ランドクルーザー250」や「ランドクルーザー70」があり、「ヤリス」には「ヤリスクロス」といったモデルがあってシリーズ化されています。
そんなトヨタのシリーズ化の原点となるのが「カローラ」でしょう。現在のカローラは、セダンのカローラを基本に、ステーションワゴンの「カローラツーリング」、ハッチバックの「カローラスポーツ/GRカローラ」、SUVの「カローラクロス」を販売。
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加えて、先代の5ナンバーモデル「カローラアクシオ」(セダン)と「カローラフィールダー」(ステーションワゴン)も併売している状況です。
そして、カローラの歴史を振り返ると、驚くほどバリエーション豊かなシリーズモデルが存在していることに気づきます。
そもそもカローラは1966年にセダンでスタートしたのですが、翌1967年には早速、ステーションワゴンの「カローラバン」というシリーズモデルを追加しました。このカローラバンの系譜となるのが、今のカローラツーリング/カローラフィールダーです。
そしてシリーズ誕生の4年後となる1970年には2ドアの「カローラクーペ」が登場します。このクーペの流れの中で、カローラにリフトバック、ハードトップの派生が生まれ、そして「レビン/トレノ」(AE86)が誕生しました。
言ってみれば、今の「GR86」も、カローラの派生の末に生まれたモデルとなるのです。
そして、カローラの最初のハッチバックは1984年の「カローラFX」でした。その後、カローラのハッチバックは「ランクス」などと名乗りながら、2006年に「オーリス」となってフェードアウト。2018年に現在のカローラスポーツでハッチバックが復活しています。
そして1997年にカローラは、3列シートを持つミニバンの「カローラスパシオ」を世に送り出します。そのミニバンの流れは2007年のハイトワゴン「カローラルミオン」に継承されることになりました。
ちなみにカローラは、かつての4チャンネル(トヨタ/トヨペット/カローラ/ネッツ)販売戦略の元、「カローラスプリンター」と名乗る兄弟車も存在。
その流れの中には、4ドアクーペの「スプリンターマリノ」や、ステーションワゴンの「スプリンターカリブ」や、実質的にその後継車となった「ヴォルツ」などの個性派もラインナップしていたのです。
つまり、昭和のころのカローラは、セダン、ワゴン、クーペ、ハッチバックを揃えており、平成になるとミニバンまでも揃えるほど多彩なシリーズ化されたモデルとなりました。
シリーズ化すると何がいい?
多彩なモデルを揃え、シリーズ化されたカローラが得たものは何だったのでしょうか。それは「ベストセラー」という勲章です。
なんと、カローラは、デビューの3年後となる1969年から、延々と33年連続で、国内の車名別販売台数(軽自動車を除く)で、ナンバー1を獲得しています。
ちなみに2002年のナンバー1はホンダの「フィット」でした。そして、カローラは、2002年こそ2位となりましたが、翌2003年から2007年の5年間も1位の座を取り戻しています。
カローラが、稀代のベストセラーカーであったことは間違いないのですが、ただし、この偉業にもひとつのからくりがあります。
それはシリーズ化された全モデルが、ひとつのカローラとして集計されていること。セダンもワゴンも、すべてカローラとしてカウントされるので、シリーズのモデルが多いほど、順位は有利になるというルールがあるのです。
また、シリーズ化されたことで、流行への対応も簡単です。クーペが人気になればクーペを、ミニバンがトレンドならミニバン、SUVが売れるならSUVというように、時代時代のニーズやトレンドを外すことなく対応することができます。
クルマという商品は面白いもので、ヒットするほどにより数が売れます。「人と同じのは嫌」ではなく、「人が買っているのだから、良い商品だろう」と、よく売れる格好です。
また、新しい名称をアピールするのは大変なことですが、そんななかカローラは、すでにある、カローラという知名度抜群の商品名を使うことで売るのは楽になるというわけです。
そして、カローラは、「人の期待を超える」「すべての面で高得点(80点主義)」というのが伝統ですから、そのコンセプトを守れば、どんな格好をしていてもユーザーはカローラだと受け入れやすいはずでしょう。
だからこそ、2021年にSUVの「カローラクロス」が登場しても、それほどの驚きはありませんでした。
過去に、ミニバンの「カローラスパシオ」があったくらいですから、SUVも今更です。
そもそも前年の2020年にコンパクトハッチバックからの派生「ヤリスクロス」があるのですから、カローラが同じ手法をとっても不思議ではありません。
そうしたシリーズ化の努力もあり、カローラの売り上げは、今もトップレベル。2023年の車名別販売台数(軽自動車を除く)では2位を確保。2024年1月から6月では首位となっています。
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シリーズ化という手法を用いて、33年連続の年間販売台数ナンバー1を獲得し、昭和から平成初期にかけてのトヨタの基盤を作り上げたのがカローラです。
そして、今もまた、シリーズ化により首位をうかがう存在となっています。
トヨタの主力カローラにとって、シリーズ化は切っても切れない関係と言えるでしょう。