ホンダ新型「すごいヴェゼル」登場! “3年ぶり刷新”の「内容」が多すぎ? 超静音モデル化&走破性強化も実施! 見かけだけじゃない“クーペSUV”の進化とは
ホンダ新型「ヴェゼル」の改良がスゴイ
「えええっ、そんなところまで手を入れているの?」それがマイナーチェンジしたホンダ「ヴェゼル」の改良メニューを見た、筆者(自動車ライター工藤貴宏)の率直な印象です。
現行型ヴェゼルの登場は2021年4月。そこから約3年が経過してのマイナーチェンジとなったわけですが、変更メニューは予想以上に多岐にわたるものでした。
まずスタイリングはフロントがバンパー(グリルを含む)、リアはコンビネーションランプを変更。テールランプはフルLED化され水平基調を強調しています。
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しかし、ここまでは「外装を変える」というマイナーチェンジの定番であり想定内。いっぽうで、まず予想を超えてきたのがインテリアです。
なんと、センターコンソール前半部の形状を変更してきました。スマホを置きやすいトレー(運転席用と助手席用の2つが置ける大型サイズ)を追加したのです。「市場からのニーズにこたえる変更」とのことで、確かに実用性は大きく高まりました。
デビューからわずか3年目のマイナーチェンジでセンターコンソールの形状を変更するのは異例と言っていいでしょう。
しかし、変更点は見える部分だけにとどまりません。静粛性、乗り心地、操縦安定性、ハイブリッドシステムの制御、4WDの制御、そして安全性(先進安全機能の機能向上&機能追加)と広範囲に手を入れてブラッシュアップが図られているのです。
筆者がまず驚いたのは静粛性。ホンダがe:HEV(イー・エイチ・イーブイ)と呼ぶハイブリッド車の従来モデルに対するインシュレーター(防振・防音材)のボリュームは、ボンネットフードが28%増、エンジンルームと室内の隔壁の外側で40%増、インパネ部分の厚み15%アップ、ルーフ部の厚さ約2倍とかなり念入りに増やされているのです。
加えて前席部分のフロアカーペットにもフィルム層が追加。エンジン音や車内に伝わるロードノイズを減らし、静粛性を高めているのです。
マイナーチェンジでここまで遮音性能を高めるなんて、異例中の異例。とことん静かにしようという開発チームの執念を感じるのは筆者だけでしょうか。
また、e:HEVのFFモデルはサスペンションをよりしなやかな方向へと再セッティングして乗り心地を改善とともに、電動パワーステアリングの制御も最適化。
今回は滑りやすい路面というシチュエーションがなかったので試せませんでしたが、4WDは制御プログラムの見直しでスタック脱出性能を高めているといいます。これは降雪地域のユーザーには大きな進化といえるでしょう。
スポーツカーのような軽快さ
新型ヴェゼルに乗って改めて感じたのは、走る楽しさ。ハイブリッドのFFモデルで峠道を走ってみれば、まるでスポーツカーのように軽快に向きを変え、深く曲がりこんだコーナーでもしっかりと曲がっていくハンドリングが楽しいじゃないですか。
続いてハイブリッドの4WDに乗り換えて同じコースを回ってみたら、こちらもハンドリングは楽しさ全開。今回走った場所では、舗装路における駆動方式違いによるハンドリングの差は感じられませんでした。どちらも楽しく運転できます。
そのうえで、今回のマイナーチェンジでの変更による走りの進化として筆者がもっとも感じたのがハイブリッドシステム。ハイブリッドシステムに関してバッテリーやモーターなど機械的には従来と変わりませんが、制御が変更されているのです。
ホンダのハイブリッドシステムe:HEVは、日常領域ではエンジンを発電機として使い、そこで起した電気を使ってモーターをまわして駆動力とします(EVモード)。いっぽう強い加速などではエンジンの駆動力とモーターの駆動力を組み合わせるハイブリッドモードになるほか、モーターの効率が悪くなる高速領域ではエンジンの動力を直接の駆動力として活用。日常領域ではEVに近いハイブリッドと言えるでしょう。
最大のポイントは、EV走行領域が増えたこと。まず、日常領域でエンジンがなかなかかからないこと(エンジンがかかりにくくなったこと)に進化を感じます。気のせいかと思ったら、ここも新型の進化ポイントでした。
バッテリー使用容量上限の拡大(バッテリー容量自体は変わっていないが実際のユーザーの使い方を踏まえてマージンを削ることで使用領域を増やした)もあって、エンジンオン/オフの切り替えはなんと従来比30%も減ったというのです。
そして、エンジンの音が気になりにくくなったのも大きな改善。エンジンのオン/オフ時は特に音が目立つので、その頻度が減ったのは効果が大きいのです。
そのうえ上り坂で発電量を増やすためにエンジン回転を高める制御をやめ、エンジン音の変化がなくなったこともエンジン音が耳障りにならなくなった理由。くわえて静粛性自体の向上もあって、新型はエンジンの存在感の主張がかなり控えめになりました。つまり静かになり、快適性が高まっているのです。
従来モデルのオーナーは、ディーラーへ行った際に新型に試乗できるチャンスがあったとしても、買い替える予定がないのであれば試乗はしないほうがいいかも。なぜなら、新型の進化の大きさに買い替えたくなってしまう可能性が高いからです。
ところでヴェゼルにはハイブリッドのほか、純粋なガソリンエンジンも用意されています。果たして、どちらが魅力的でしょうか。
結論から言えば、ハイブリッドが魅力的。ハイブリッドの魅力は燃費の良さだけと思われがちですが、モーターはトルクがあるから加速にゆとりが増すし、フィーリングも滑らか。そして音も静かで快適性だって高い。価格が高くなることを除けば、いいことずくめなのです。
一方のガソリン車は価格設定が安い(ヴェゼルはガソリン車だけをベーシックグレードに設置しているので特にそう感じる)のが最大の魅力ですが、それだけでなく車体の軽さによって身のこなしが軽やかなのも魅力。それは運転好きにとっては好感を得られる部分でしょう。
ちなみに新型ヴェゼルはガソリンのFFモデルが廃止され、駆動方式は4WDだけの設定です。
というわけでもし新型ヴェゼルを検討してハイブリッドとガソリン車で迷ったら、「最小限の出費で買いたい人」と「軽快な身のこなしを求める運転マニア」にはガソリン車がオススメ。そうではない人は、動力性能にも静粛性にもメリットがあってトータルバランスに優れるハイブリッド車がいいでしょう。トータルの満足感はハイブリッドのほうが高いと筆者は思います。