ソフトバンク戦の指揮を執った巨人・阿部慎之助監督【写真:矢口亨】

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吉川尚輝の適時二塁打で21イニングぶりの得点

■巨人 1ー0 ソフトバンク(29日・東京ドーム

“投高打低”の戦いは続く――。巨人は29日、本拠地・東京ドームで行われたソフトバンク戦で、延長12回に吉川尚輝内野手が右翼フェンス直撃の適時二塁打を放ち、1-0でサヨナラ勝ちを収めた。チームは前日(28日)の同カードで零封負けを喫しており、21イニングぶりの得点だった。就任1年目の阿部慎之助監督は「本当に遠い1点だった」と苦しい胸の内をのぞかせた。

 勝利を引き寄せたのは、やはりバントだった。両チーム無得点で迎えた延長12回。先頭の丸佳浩外野手がソフトバンクの守護神ロベルト・オスナ投手から左前打を放ち、無死一塁。ここで、阿部監督が平内龍太投手の代打に指名したのは、小林誠司捕手だった。事実上の“ピンチ・バンター”である。

 オスナの剛速球が高めに来たところをバントするのは、プロであっても難易度が高い。「どんな形でも決めるんだという気持ちで、必死にいきました」という小林は、1球目をファウルにしたものの、2球目を見事に一塁前へ転がし、走者を二塁に進めた。これには、通算533犠打のNPB歴代最多記録を保持している川相昌弘内野守備コーチも「小林はああいう状況でバントを命じられることが多いのを想定して、いつも練習をしている。その成果が出たんじゃないの?」と称えた。直後、続く吉川が初球をサヨナラ打にしたのだった。

 勝ったとはいえ、巨人は最近7試合連続で2得点以下。今季1試合平均得点が12球団ワーストの「2.28」(29日現在、以下同)の打線を、リーグトップのチーム防御率2.24を誇る投手陣がカバーしているのが実情だ。

 阿部監督は「だからノーアウト一、三塁でセーフティスクイズもやるんだよ。その気持ちはわかって」と吐露した。というのは、前日の同カードではバント策が物議を醸した。1点ビハインドの6回無死一、三塁で、オコエ瑠偉外野手がセーフティスクイズを敢行。しかし捕手前への高いバウンドとなり、一塁走者は二塁に進んだが、三塁走者はスタートを切れなかった。結果的に1死二、三塁とするも、後続が倒れ得点につながらなかった。

「放っておけばいいのか、昭和風に気合を入れた方がいいのか…」

 阿部監督が「1死二、三塁の一打逆転の形はつくれた。そこで打てなかったというだけ」と説明したように、オコエのバントで三塁走者が生還できればよし、送りバントの形になってもよいという二段構えの作戦だったが、ネット上などでは賛否両論。消極的な采配と批判する向きもあった。自身は現役時代に“強打の捕手”として打棒を振るっただけに、なおさらもどかしい思いもあるだろう。

「ピッチャーの頑張りがあってこそ、今の位置(首位に2.5ゲーム差の3位)にいると思っています」とした上で、「1点をもぎ取る野球は、僕が就任した時に言ったことだし、ぶれずにやっていきたいと思います」と改めて強調した阿部監督。「野手にどう奮起を促せばいいのか、教えていただきたいなと思います。放っておいたらいいのか、昭和風に気合を入れた方がいいのか…」と迷いつつも、最後には「打てない人は、練習するしかないです。それのみだと思います」と言い切った。

「なかなか野球って難しいなと思いながら、サインを出したりしています。爆発するかどうかわからないけれど、なんとか“野手で勝った”という試合を1試合でも多くつくってほしいと思います」と本音を明かした。ナイン同様、新人監督もベンチで必死に奮闘している。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)