【西田宗千佳連載】生成AIを「誰もが使う」にはツールの進化が必要
Vol.137-4
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは開発が進む「画像生成AI」。ビジネスにおいて、個人レベルで生成AIを活用するための課題を探る。
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生成AIがどんなものか、そろそろ説明する必要はなくなってきただろう。だが「報道などで話は聞いている」人は多く、無料のサービスでちょっと使ってみたという人は多くても、「実際にビジネスなどでガンガン使っている」という人は意外と少ないものだ。
転職サイトを運営するエン・ジャパンが35歳以上の人々を対象として実施し、2024年1月に公開した調査によると、生成AIを業務に使っている人の割合は全体で18%。28%が使用を検討中で、なかなか高くなってきたように見える。
だが実際には、使用の予定がない人は54%もいる。業種別に見ると、マーケティングやコンサルタント業務では47%が使っているものの、より一般的な業種になると10%に近づいていき、「使う人々と使っていない人々」の差が大きくなっている……というのが実情ではあるようだ。
すなわち“生成AIがどんなものか可能性を探ることが仕事につながっている人”か、“文章や画像を大量に作る必要がある人”が生成AIを使っており、それ以外はまだなかなか厳しいのだろう。このあたりは、生成AIの便利な使い方が浸透しておらず、明確な利用拡大には結びついていない、と判断できる。アドビの例にしろ、デジタルマーケティングやコンテンツ制作に特化した部分があり、現状の分析とも合致する。
ただ、読まなければいけない文章を要約して確認したいとか、必要な文書を簡単に作りたいといったニーズは、ビジネスの中ではかなり普遍的なものかと思う。それがきちんと定着していないのは、生成AIの使い方がまだ誤解されている、ということかもしれない。要は、検索エンジンに似たものとして使われたり、ゼロから画像生成をするために使われたりするもの、と思われているのではないだろうか。
そうした誤解が解けるには、ツールの一般化が重要だ。アドビが手がけているのも、結局のところそういう流れなのだ。
Photoshopは4月にアップデートが行なわれ、背景を簡単に入れ替えたり、画像を生成する際に「モチーフとなる画像」を読み込んでテイストを合わせたりする、といった機能が搭載された。
ほかのツールもそうだが、最初は「白紙の上にプロンプトから何かを作る」ような実装がなされる。しかし人間、白紙からいきなりなにかを作れる人の方が少ない。日常的な作業のほとんどは「ベースとなる何かがあって、それを修正して別のものにする」ことだったりする。
生成AIを道具にするには、結局のところ、そういう“ちょっと変える”“前例を踏まえて新しいものを作る”といった作業に使えることが重要で、そのためにはツールが進化しないといけない。
生成AIが広まり始めて2年が経過しようとしているが、これからはそういう進化がまず目立つようになっていくだろう。
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