アップルが新しいM4搭載iPad Proを発売します。筆者は、先行して13インチのiPad Proを試して、やはり本機の魅力がホンモノであることを確信しました。結果、自分の期待に懐事情にマッチしそうな11インチのiPad Proを買うことを決めた理由を解説します。

大きなサイズの13インチ M4搭載iPad Proを借りて実力をチェックしました

魅惑の有機EL高画質! SF映画にのめり込んだ

筆者は、アップルが5月7日にロンドンで開催した発表会でiPad Proに触れ、ひと目ぼれしてしまいました。どこから見ても良質な製品なのですが、11インチが168,800円から、13インチは218,800円からという価格が「さすがに高いなぁ」と感じてしまい、購入を即決できずにいました。

実機を借りて試してみても、iPad Proが「やっぱりいい!」という結論が変わることはありませんでした。筆者が新しいiPad Proに強く興味を感じたポイントが2つあります。

ひとつは、iPadシリーズで初めて採用した、有機ELのUltra Retina XDRディスプレイの画質がとても良かったことです。

iPad Proには、同一の有機ELパネルを2層重ねて、パネルが持つ性能を最大限まで引き出す「タンデムOLEDテクノロジー」が採用されています

有機ELパネルの映像表示は自発光方式というもので、電圧をかけると発光する有機物の明るさを制御しながら映像の明暗を再現します。有機ELはキラッと明るい映像の再現力に富む一方で、有機物を発光させないと映像の暗部を「完全な黒色」に引き締めることができる特徴もあります。

前世代のiPad Proが搭載する液晶パネルは、背面に配置したバックライトを明滅させて映像の明るさをコントロールします。そのため“光漏れ”を回避することがとても難しく、黒色の再現性では有機ELの方が有利であるとも言われます。

Apple TV+で配信されているドラマ『インベージョン』は、iPad ProのUltra Retina XDRディスプレイの実力を測るために最高のリファレンス。繊細な映像の明暗の移り変わりによって描かれる人物の感情表現も見どころ

新しいiPad Proで、Apple TV+が配信するSFドラマ『インベージョン』を視聴しました。物語の舞台として宇宙空間が頻繁に登場する作品です。

Ultra Retina XDRディスプレイには、底なしに暗い宇宙の「闇」が描かれます。明滅の制御をとても高精度にできるパネルなので、暗闇の中で薄明かりに照らされる人物の肌にとてもきめ細やかな色、質感のグラデーションが描かれます。映像の質感がとても生々しく、空気感が澄んでいます。筆者は、宇宙が舞台のSF作品には目がありません。映画『インターステラー』や『ゼロ・グラビティ』、『オデッセイ』も視聴してみましたが、どの作品でもUltra Retina XDRディスプレイでしか描けないリアリティを満喫しました。

舞台の大半が宇宙空間。映画『ゼロ・グラビティ』もおすすめしたいコンテンツです

Apple Pencil Proでシゴトがはかどる

ふたつめに、Apple Pencil Proによる体験向上に確かな実感が得られたことです。

筆者は、ふだんから製品レビューやインタビューの原稿を執筆する際、Macでタイピングを始める前にiPadで草稿を手書きしています。Apple Pencilを握った手を動かしていると、頭の中が整理整頓される感覚があるからです。

GoodNotesアプリに書きなぐったレポートの草稿。取材の内容を整理する際にはiPadとApple Pencilの組み合わせが欠かせません

Apple Pencil Proは内蔵するセンサーを増やして、新しい操作方法と触覚フィードバックを追加しています。

ペン本体の平坦な面を指でぐっと押し込む「スクイーズ」という操作方法が加わりました。フリーボードやメモなど、アップルのiPadOSアプリでペンシルをスクイーズすると、画面にパレットツールのプレビューが表示されます。Apple Pencilの設定から、スクイーズと従来のダブルタップに任意の操作を割り当てることもできます。今後は、アップルの開発者向けプラットフォームであるPencil Kitを活用して、サードパーティのアプリもApple Pencil Proのスクイーズ操作に対応してくるはずです。

多彩なセンサーを追加。新機能を充実させた「Apple Pencil Pro」

筆者は、触感フィードバックの機能に実用性を感じました。従来のApple Pencilはダブルタップによる操作の結果を、画面表示が切り替わる様子を見て確かめる必要がありました。

Apple Pencil Proの場合、ペンと消しゴムのツールが正しく切り替わったことなどを触感フィードバックで伝えてくれるので、より直感的です。手書き入力の作業にいっそう集中できる満足感が得られます。

Apple Pencilは「イラストや図版を描くためのツール」と思われがちですが、デジタルペンで文字を書く行為から、新たな発見が得られることもあると思います。ぜひ多くの方々に試してほしいです。

11インチのiPad Proなら16万円台から買える

筆者は、M4搭載iPad Proの購入を心に決めたので、あとは自分が必要とするスペックを入念に吟味しました。

M2搭載iPad Proは、大きな12.9インチのモデルだけがミニLEDバックライトを搭載していました。M4搭載iPad Proは11インチのモデルもUltra Retina XDRディスプレイを搭載しているので、画質の差はありません。

11インチのiPad Pro。本機も13インチと同じUltra Retina XDRディスプレイを搭載しています

13インチの大画面には後ろ髪を引かれる思いもありますが、実際にiPad Proで動画を見る場面は電車や飛行機による移動中になることが想定されるので、だったらコンパクト&高画質な11インチのモデルを選ぶべきと考えました。

筆者が2018年から長く使っている12.9インチのiPad Proは、まだまだ現役として働いてもらうつもりです。セルラー機能も使えるので、常時インターネットにつながるモバイルワークステーションとしては、キーボードも大きめな12.9インチを活用する作戦が得策。ならば、手書きのデジタルノートとして使っている8.3インチのiPad miniをアップグレードする感覚で11インチのiPad Proを買う方が、仕事環境が充実しそうです。

11インチのiPad Proにはセルラー機能は不要。たまに空の旅に動画を持ち出せるだけのストレージがあれば十分なので、最小サイズの256GBを選ぶと、購入費用はボトムラインの168,800円にとどめられそうです。

アクセサリーは必要なものだけ揃えればいい

あとはアクセサリーを買い足すべきかどうかです。Apple Pencil Proは欠かせないアイテムですが、ついにApple Pencilも2万円超え…。だからといって、スクイーズや触覚フィードバックが使えないUSB-CのApple Pencilを選ぶ道はナシです。iPad miniを下取りに出すことも一瞬考えましたが、家族が「iPad miniを譲ってほしい」というので、ここは家電量販店など貯めたポイントでApple Pencil Proを買うことにしました。

キーボードはM4搭載iPad Pro専用のアクセサリーになったので、従来品が使えません。筆者は、11インチのiPad Proを手書きのデジタルノートとして使うことをメインにするので、キーボード付きケースは後回しにします。

13インチのiPad Proに新しいMagic Keyboardを装着すると、本体の厚さサイズと全体の質量がほぼM3搭載MacBook Airと同じになるそうです

新しいiPad ProのためのMagic Keyboardは、デザインやキータイピングの操作感は文句なしに高品位です。ただ、Apple Pencil Proで文字やイラストを手書きする際は、都度キーボードをiPad Proから外して使う必要があります。アップル純正のSmart Keyboard Folioには、キーボード部分を360度回転させて平置きにすれば、キータイピングからペンによる手書き作業へスムーズに移行ができる特徴があります。M4搭載iPad ProのためのSmart Keyboard Folioが、もし今後発表されることがあれば、筆者はその時にキーボードの買い足しを検討しようと思います。

または、ロジクールの着脱式キーボードケース「Combo Touch for iPad Pro」が、比較的Smart Keyboard Folioに近い使い方ができそうです。いずれ機会を作って試してみようと思います。

「いざ、購入!」と奮い立って、5月13日にオンラインのApple Storeに突入したところ、すでに筆者宅の最寄りのApple Storeでは発売日の受け取りが不可になっていました。配送対応も6月上旬以降になってしまうので、ならば発売日にAppleストアまで足を運んで店頭在庫を狙ってみようと思います。

著者 : 山本敦 やまもとあつし ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。 この著者の記事一覧はこちら