中国の鉄鋼メーカーは、供給過剰による過当競争で軒並み赤字に陥っている。写真は最大手の宝武鋼鉄集団の転炉設備(同社ウェブサイトより)

中国の鉄鋼業界が需給バランスの悪化による苦境に直面している。業界紙の中国冶金報が4月1日に掲載した記事によれば、中国の2024年1月から2月までの粗鋼生産量は1億6800万トンと前年同期比1.6%増加した。それに対し、粗鋼ベースに換算した鉄鋼製品の消費量は1億5300万トンと前年同期比1.3%減少し、明らかに供給過剰になっている。

また、国家統計局のデータによれば、鉄鋼業界の経営状況の指標となる「黒色金属(訳注:鉄および鉄が主成分の合金)の製錬・圧延加工企業の利益総額」は、1〜2月は146億1000万元(約3062億円)のマイナスだった。これは同期間の赤字額としては過去最大規模であり、すべての工業セクターのなかで最低の業績に沈んだ。

在庫膨張で鋼材価格が急落

中国では2024年の春節(中国の旧正月、元日は2月10日)が明けても鋼材の需要が期待したほど回復せず、鉄鋼メーカーや商社の在庫が膨張。在庫減らしのための見切り売りが広がり、価格の急落を招いた。

建材の代表品目である(主に鉄筋などに使われる)異形棒鋼の先物価格は、1〜3月期の最後の営業日だった3月29日に1トン当たり3412元(約7万1507円)となり、春節明けからの6週間で11.5%下落、過去1年半の最低記録を更新した。また、同日の熱間圧延鋼板コイルの先物価格は1トン当たり3625元(約7万5971円)と、同じ期間に9%下落した。

中国政府は(国の基幹産業である)鉄鋼業界の需給バランスを適切に保つため、対策を立て続けに打ち出している。その柱は、鉄鋼メーカーの粗鋼生産量を全体的に抑制することだ。


中国政府は鉄鋼メーカーに生産抑制を指導する方針だが、実効性は不透明だ(写真は国家発展改革委員会のウェブサイトより)

国家発展改革委員会は4月3日、工業情報化省や生態環境省などの関係省庁と共同で、全国的な粗鋼生産量の抑制キャンペーンを展開すると発表。省エネルギーと二酸化炭素(CO2)の排出削減に重点を置いた鉄鋼業界の構造調整を進め、業界の「質を伴った発展」を促すとした。

生産抑制政策の実効性に疑問

その前日には、工業情報化省が宝武鋼鉄集団、鞍鋼集団など10数社の鉄鋼大手および商社の代表者を集めた会議を召集。鉄鋼業界が直面している苦況について、原因分析や政策提言などの聞き取りを行った。


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とはいえ現時点では、国家発展改革委員会は粗鋼生産抑制の具体策をまだ示していない。同委員会は2023年にも生産抑制を指示したが、政策の執行面で厳格さを欠いたため、実際の生産量は逆に増えてしまった。

「不動産市況が悪化する中、鋼材の需要がさらに落ち込むのは必定だ。需給バランスの調整のカギは供給側にある。しかし(中央政府が)毅然とした対応を取らなければ、生産抑制策の執行は(地方政府などの抵抗により)非常に困難だろう」。ある鉄鋼業界のベテラン関係者は、そう予想する。

(財新記者:羅国平)
※原文の配信は4月3日

(財新 Biz&Tech)