「社会貢献活動の支出額が多い」100社ランキング

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1位となったトヨタ自動車の本社(写真:時事)

企業は本業の事業活動だけでなく、世の中に多く存在する社会課題を社会貢献活動で解決しようとしている。では、社会貢献に積極的な企業はどこなのか。『CSR企業総覧(ESG編)』2024年版に掲載している社会貢献活動支出額のランキングでご紹介していく。

2位以下を大きく突き放すトヨタ自動車

2022年度の社会貢献支出額トップは199.0億円でトヨタ自動車だ。同社は2011年、2013年とCSR企業ランキングトップの日本を代表する企業。2022年調査から東洋経済CSR調査への回答はないが、公開情報からデータを集め、『CSR企業総覧』に掲載している(直近の2024年CSR企業ランキングは情報開示の少なさなどから173位)。


『CSR企業総覧』(東洋経済新報社)。書影をクリックすると東洋経済STOREのサイトにジャンプします

金額は2020年度187億円、2021年度167億円と2位以下を大きく突き放す。なお数字は同社単体と主要子会社をあわせた連結ベースとなっている。

自然災害にモビリティで貢献する「トヨタ災害復旧支援(TDRS)」で車両無償貸与、平時の体験会を含む車中泊を実施。「科学のびっくり箱!なぜなにレクチャー」では自社社員がプログラム開発・講師を務める小学生対象の科学工作教室を1996年から継続している。

トヨタ自動車東日本(コンパクトカー製造)での雇用創出、トヨタ東日本学園での人材育成、スマートグリッド技術を活用した農商工連携事業のほか、災害に強いまちづくりへ向けた地域との連携も進めている。

2000年に創設した公募制の「トヨタ環境活動助成プログラム」では、NGO・NPOの生物多様性などのプロジェクトを支援。2015年に立ち上げた「オールトヨタ自然共生ワーキンググループ」による地域・関係会社との連携活動や、「自然と共生する工場」をコンセプトに生態系保全活動を展開する。

「トヨタ白川郷自然學校」や「トヨタの森」の運営、プロジェクト等を通じ、人材育成や希少種保護、環境保全を含む多彩な活動を実施している。

2位以下のランキングの顔ぶれは?

2位は日本電信電話の85.2億円。国内グループの連結ベースで社会貢献活動に参加した社員の活動費も含んでいる。

総務省主催のインターネットの安心・安全な利用に向けた啓発活動「e-ネットキャラバン」に全国の自社グループ各社より社員の登録を行い、講師を派遣するなど本業に関する取り組みは幅広い。

それ以外も自社グループ各社で、全国各地の事業所等近隣地域の環境美化・環境保護を目的に地域清掃活動を実施する環境クリーン作戦を展開。野球、サッカー、ラグビーなどのスポーツイベントへの寄付・協賛や社員ボランティア派遣なども行っている。

3位は三菱UFJフィナンシャル・グループの83億円。本業を生かして学生向けに「金融経済教育」として、「金融」や「経済」の仕組みを学ぶ機会を提供。日本ユネスコ協会連盟と共同で「MUFG・ユネスコ協会東日本大震災復興育英基金」を創設し中長期的な復興支援に取り組んでいる。ほかに教育格差問題に取り組む認定NPO法人への寄付など幅広く活動している。

以下、4位KDDI69.2億円、5位NTTドコモ68.2億円、6位JT67.6億円、7位サントリーホールディングス66.3億円、8位ソフトバンク65.0億円と続く。

支出が10億円以上なのは74位のアース製薬(10.1億円)まで。上位100社の合計は2216億円で社会貢献活動に多くの金額が使われている。

さらに、2020年度から2022年度までの3年間の数字が取れる817社の各年度の合計金額を集計すると、2739億円(2020年度)、2572億円(2021年度)、2738億円(2022年度)だった。

東日本大震災復興支援の実施は減少傾向

最後に毎年ご紹介している「(企業の)東日本大震災復興支援の取り組み」を見ていこう。2023年6月末時点で復興支援を「行っている」は32.1%(404社)、「行っていない」が65.5%(825社)だった。

2021年6月末時点(2021年調査)は38.4%(453社)、2022年6月時点(2022年調査)は35.3%(433社)が行っていると回答。何らかの支援活動を行っている企業は年々減少傾向にあるが、復興支援の継続は震災を風化させない役割も担う。今後も可能な範囲で継続してもらいたい。


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さて、社会課題解決を行う際に、実施によるインパクト(変化)を数値などで見る「インパクト評価」という考え方が広がり始めている。まだ道半ばだが、将来的には活動の成果をインパクトで評価していくようになるのが理想だろう。

今回ご紹介した例は『CSR企業総覧(ESG編)』に掲載しているごく一部だ。CSRデータとして、社会貢献活動を行っている多くの企業の豊富なデータも提供している。

1〜50位


51〜100位


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(岸本 吉浩 : 東洋経済 記者)