「不調なWi-Fiが雨の降っている時だけなぜかつながる」謎をエンジニアが解明

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久しぶりに実家に帰ったら「雨が降っている時しかWi-Fiが使えない」という現象が発生していることを知ったエンジニアのプレドラッグ・グルエフスキー氏が、原因の調査から解決するまでの経緯をブログに投稿しています。

The Wi-Fi only works when it's raining

https://predr.ag/blog/wifi-only-works-when-its-raining/



グルエフスキー氏の父親もエンジニアで、自身で設立した会社を通じてオフィスビルのギガビットイーサネットから見通し内マイクロ波リンクを介した都市間接続に至るまであらゆる種類の複雑なネットワークシステムを設計・導入していました。そのため、父親から「雨が降るとWi-Fiがつながる」という呪術的思考な発言を聞いてグルエフスキー氏は驚いたとのこと。

雨はむしろ通信の品質を悪化させる原因であるため、グルエフスキー氏は別の原因があるに違いないと考え、ネットワークを調べることにしました。Wi-Fiのインターネット接続は稼働していたものの、どのサイトを開こうとしてもパケット損失率が98%になり、何も読み込めなかったとのこと。

しかし雨が降り始めると状況が一変。降雨開始から5分程度でパケット損失率は0%になり、快適にインターネットが使用できるようになりました。グルエフスキー氏は自分の目が信じられなかったと述べています。

その後雨が上がって15分ほど経過するとパケット損失率が90%以上に上昇。インターネット接続が再び使用できなくなってしまいました。グルエフスキー氏が実家に帰って数日の間、ずっと空は曇ったままで雨が降ったりやんだりしており、雨が降るたびにインターネット接続が回復し、上がるたびに使用できなくなるというパターンが常に再現されました。



グルエフスキー氏は「Wi-Fiが雨天時のみ使用可能」という呪術的な現象を認めたくなかったものの、証拠があまりにもはっきりしており認めざるを得ませんでした。「天気予報を見てインターネットの使用計画を立てる」という選択肢もあったものの、グルエフスキー氏は「呪術的思考なんてクソだ!俺はエンジニアだぞ!」とさらに原因調査を続けることにしました。

グルエフスキー氏の実家のWi-Fiは特殊な構成をしており、数ブロック離れた父親の会社との間に見通し内Wi-Fiブリッジ(長距離Wi-Fi)を設置し、会社の超高速回線を使用できるようにしていました。グルエフスキー氏がシステムのどの部分に問題があるのかを順番に調べてみると、家庭内の通信は問題なかったものの、会社と実家間の長距離Wi-Fiの接続に問題があることが判明。

この長距離Wi-Fiは10年前に設置して以来触れられていませんでした。グルエフスキー氏は家と父親の会社を何往復もして長距離Wi-Fiを構成するパーツやケーブルを確認していきましたが、どのパーツを確認しても問題は見つかりませんでした。

グルエフスキー氏がイライラしながら家と会社の間を歩いている時、ふと周りを見ると実家を離れている間に近所の様子が変わっている事に気付きました。近所の小さな店の多くは新しくなり、多くの家のペンキが塗り直されています。苗木だった木々も、大きく大きく成長していました。

グルエフスキー氏は衝撃を受け、実家に走って帰ってWi-Fiのアンテナから会社側のWi-Fiアンテナを見てみました。すると隣の庭の木がWi-Fiアンテナの間で揺れていたとのこと。

10年前にWi-Fiアンテナを設置して以来、長距離Wi-Fiは長年に渡って正常に動作していましたが、年月の経過にあわせて隣の家の木も成長していました。ちょうどグルエフスキー氏が実家に帰る少し前に木の最上部がWi-Fiアンテナの通信を妨害する位置まで成長し、Wi-Fiのパケット損失率を98%まで押し上げていました。



木はぎりぎりWi-Fiアンテナを妨害できるだけの高さしかなかったため、雨が降ると水の重みで木がたわみ、通信が復活していたというわけです。また、雨が上がってしばらくすると木から雨水が落ちて再び通信を妨害していました。

グルエフスキー氏は古い802.11gデバイスを新しい802.11nデバイスに交換しました。呪術ではなく数学と物理学を使用して信号の干渉耐性を高めたことで見事晴れた日でも実家でWi-Fiを使用できるようになったと述べられています。